更新日 2023.05.15
TKC全国会 中堅・大企業支援研究会会員
税理士 宇野 元浩
令和5年度税制改正について、改正の概要と法人課税を中心に主な制度改正の内容を解説します。
当コラムのポイント
- 令和5年度税制改正の概要
- オープンイノベーション促進税制の拡充
- 研究開発税制の見直し
- 目次
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1.令和5年度税制改正の概要
(1) 法人税・源泉所得税関連の主な改正内容
- オープンイノベーション促進税制の拡充
- 研究開発税制の見直し
- 中小企業経営強化税制の見直し
- 中小企業投資促進税制の見直し
- パーシャルスピンオフ制度の創設
- DX投資促進税制の見直し
- 暗号資産の期末時価評価方法等の一部見直し
(2) 国際課税の改正
- グローバル・ミニマム課税への対応
- 外国子会社合算税制の見直し
(3) 所得税の改正
- NISA見直し
- エンジェル税制の見直し
- 特定の中小会社が設立の際に発行した株式の取得に要した金額の控除等(スタートアップ支援)の創設
(4) 相続・贈与税
- 相続時精算課税・暦年贈与課税の見直し
(5) その他
- インボイス制度の見直し
- 電子帳簿保存法の見直し
2.オープンイノベーション促進税制の拡充
(1) 制度の概要
法人の特定新事業開拓事業者(スタートアップ企業)に対する出資について、その特定株式の取得価額の25%以下の金額を特別勘定の金額として経理したときは、その事業年度の所得の金額を上限に、その経理した金額の合計額を損金算入することが出来る制度です。
また、特定株式の取得の日から3年以内(令和4年改正:5年から3年以内に改正)に出資したその特定株式の売却等(売却した場合、その会社が解散した場合、経済産業省大臣の証明が取り消された場合、配当を受けた場合等)には、その対応する金額を益金に算入することとなります。
令和4年税制改正により、適用期限は令和6年3月31日まで2年間延長されました。
(2) 改正の概要
(3) 適用関係
令和5年4月1日以後に取得する株式について適用されます。
3.研究開発税制の見直し
研究開発税制について次の見直しが行われました。
(1) 改正の概要
- ①控除上限額の見直し
- ②控除率の見直し
- ③試験研究費の範囲の見直し
(2) 控除限度額の改正
(3) 控除率の見直し
(4) 適用関係
控除上限、控除率の改正は、令和5年4月1日から令和8年3月31日までの間に開始する各事業年度において適用されます。
4.その他の租税特別措置に関する改正
(1) パーシャルスピンオフ制度の創設
適格株式分配制度は、現物分配法人がその有する完全子法人の発行株式の全部を交付することを要件としていましたが、完全子法人の発行株式の一部(20%未満)を現物分配法人に残しても可能とする「パーシャルスピンオフ」についても、一定の要件を満たす場合は、組織再編時の譲渡損益や株主側で生じる配当について課税の対象外とする特例制度が創設されました。
(2) DX投資促進税制の見直し
DX投資促進税制(事業適応設備を取得した場合の特別償却または法人税額の特別控除)について、次のとおり主務大臣の確認要件を見直した上、適用期限を2年延長することとなりました。
- ①生産性の向上又は新需要の開拓に関する要件を、売上高が10%以上増加することが見込まれることとの要件に見直す。
- ②取組類型に関する要件を、対象事業の海外売上高比率が一定割合以上となることが見込まれることとの要件に見直す。
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プロフィール
税理士 宇野 元浩(うの もとひろ)
TKC全国会 中堅・大企業支援研究会会員(地域会リーダー)
TKC中央研修所税制改正プロジェクトメンバー
TKC全国会中央研修所租税法小委員会委員
TKC企業グループ経営支援プロジェクト(Eプロジェクト)リーダー
- ホームページURL
- 税理士法人エフ・エム・エス
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