更新日 2021.09.06
TKC全国会 中堅・大企業支援研究会会員
電子申告義務化支援プロジェクトリーダー
税理士 長谷川 暢彦
資本金1億円超の大法人における電子申告義務化がスタートしましたが、将来的には中小法人を含む全ての法人に対して同様の措置が講じられると考えられます。
この電子申告の普及とともに、納税者のさらなる利便性を図り、併せて徴税コストの削減を行うために電子納税の環境が整備されました。
このコラムでは、国税及び地方税の電子納税の概要と実務対応について2回にわたり解説します。
電子納税は、国税や地方税の納付手続を自宅やオフィスからインターネットを経由して電子的に行う手続きです。
金融機関等の窓口に出向く必要がなく、e-TaxやeLTAXの利用時間内でかつ金融機関のインターネットバンキング等の利用時間内であればいつでも納付が可能です。
毎月納付が必要な源泉所得税や住民税(特別徴収)などに利用すれば、大きな事務負担の削減が期待できます。また電子証明書の添付も不要ですので、大変便利な仕組みといえます。ただし領収書は発行されませんので、納付後の完了通知を保管する等の措置が必要になります。
1.国税の納付手続
国税の納付手続には様々な方法がありますが、このコラムでは主に法人が利用する電子納税(インターネットバンキング等及びダイレクト納付)について解説します。
(1) インターネットバンキングを利用した電子納税
- ①事前準備
- 金融機関との間で、インターネットバンキングの利用手続きを行う必要があります。ご利用の金融機関にご確認ください。
- ②利用できる金融機関
- 電子納税はマルチペイメントネットワーク(MPN)に対応する金融機関を利用します。MPNに接続する金融機関の決済サービスは「Pay-easy」(ペイジー)と呼ばれ、電子納税が利用できる金融機関は「ペイジー」ホームページから確認できます。
https://www.pay-easy.jp/where/ - ③インターネットバンキングを利用した電子納税の方式
-
インターネットバンキングを利用した電子納税には、登録方式と入力方式の2つの方式があります。
1) 登録方式とは、e-Taxソフト等を使用して電子申告をした後、またはe-Taxソフトを使用して事前に納付情報登録依頼をした後に、「納付情報データ」に対応する「区分番号等」をメッセージボックスから取得して電子納税を行う方法です。
https://www.e-tax.nta.go.jp/tetsuzuki/tetsuzuki4_2.htm2) 入力方式とは、e-Taxに納付情報データの登録は行わず、登録方式の場合の納付区分番号に相当する番号として自身で納付目的コードを作成して電子納税を行う方式です。
https://www.e-tax.nta.go.jp/tetsuzuki/tetsuzuki4_3.htm
(2) ダイレクト納付による納付手続
ダイレクト納付は、事前に税務署へ届出等をしておけば、e-Taxを利用して電子申告または納付情報登録をした後に、届出をした預金口座からの振替により、簡単なクリック操作で即時または期日を指定して納付する方法です。また預金口座ごとに届出をしておくとダイレクト納付で複数の口座を選択して利用ができます。
- ①事前準備
- 所轄税務署へ「国税ダイレクト方式電子納税依頼書兼国税ダイレクト方式電子納税届出書」の提出が必要です。この届出書は国税庁ホームページに掲載されています。
https://www.nta.go.jp/taxes/nozei/nofu/index.htm
ダイレクト納付が利用可能となるまでには、概ね1か月程度かかりますが、利用が可能となった時には、国税のメッセージボックスに「ダイレクト納付登録完了通知」が格納されます。なおダイレクト納付利用届出書を提出した場合でも、従来どおりインターネットバンキング等を利用した電子納税も可能です。 - ②利用できる金融機関
- ダイレクト納付を利用できる金融機関は、国税庁ホームページ「利用可能金融機関一覧」で確認できます。
https://www.nta.go.jp/taxes/nozei/nofu/kinyu.htm - ③対象となる税目
- 電子申告等が可能な税目(源泉所得税、法人税等、消費税等、申告所得税、酒税、印紙税 等)が対象となります。なお、納付情報登録(納付書データの作成と国税受付システムへの送信)を行うことにより全税目(延滞税等を含む)について利用が可能です。
- ④ダイレクト納付による納付の方法
- ダイレクト納付では、即時または期日を指定して納付することができます。
また、複数の口座を登録している場合は引落口座を選択してダイレクト納付できます。
(3) 利用可能時間
国税受付システムの利用可能時間内(電子申告と同様の時間)で、金融機関オンラインサービスが利用できる時間内となります。
(4) 手数料
納付書による窓口での納税と同様、手数料はかかりません。
ただし、インターネットバンキングの利用にあたり、金融機関によっては利用のための手数料が必要となる場合があります(ダイレクト納付の利用においては、これらの手数料も必要ありません)。
2.地方税の納付手続
地方税の納付手続には様々な方法がありますが、このコラムでは主に法人が利用するeLTAXを利用した地方税共通システムについて解説します。
(1) 地方税共通納税の概要
納税者は従来、納付書により金融機関の窓口を通じて納付を行っていましたが、①納付書の形式が地方公共団体ごとに異なる②取扱金融機関が地方公共団体ごとに異なり、身近に取扱金融機関がない場合がある③取扱時間に制約があり、窓口が混雑することがある等の理由により納付事務に多くの手間が必要でした。
地方税の電子納税自体は平成20年からスタートしていましたが、各地方公共団体でマルチペイメントネットワーク(MPN)に接続する必要があり、一部の地方公共団体のみしか対応することが出来ず、普及が進みませんでした。さらに地方税が納付書による納付となれば国税も納付書で納付するといったこともあり、国税の電子納税の普及の足かせにもなっていました。こうした中、全国の地方公共団体へ電子的に納税可能とするサービスについての社会的な要請が高まり、令和元年10月から全国の複数の地方公共団体に対して一度の操作で電子納税が可能となる「地方税共通納税システム」が稼働しました。
これにより、数の多い分割法人での法人住民税、事業税等の納付あるいは個人住民税の特別徴収税額の納付等が一括で済むことになり、地方公共団体が指定する金融機関を意識することもなくなったため飛躍的に便利になりました。
(2) 地方税共通納税システムにおける収納方法と事前準備
地方税の電子納税では、電子申告したデータまたは納付金額を直接入力したデータをもとに納付情報を発行して手続きします。 使用可能な収納チャネル(収納手段)は以下の通りです。
①インターネットバンキングやATMによる電子納税
- 1) 電子納税の方式
- インターネットバンキングを利用した電子納税には情報リンク方式とオンライン方式の2つの方法があります。
- 2) 事前準備
- インターネットバンキングを利用する場合は、金融機関との間で、利用手続きを行う必要があります。
ご利用の金融機関にご確認ください。
②ダイレクト納付(ダイレクト方式)による電子納税
- 1) ダイレクト納付の概要
- 国税のダイレクト納付と同様に、届出をした預金口座からの振替により、簡単なクリック操作で即時または期日を指定して 納付する方法です。地方税では、ダイレクト納付で利用する口座は3つまで登録できます。
- 2) 事前準備
-
金融機関に「地方税ダイレクト納付口座振替依頼書」を事前に提出する必要があります。
手順としては以下の通りとなります。- PCdeskで口座情報の仮登録
- 口座振替依頼書及び送付先の宛名ラベルを印刷し、金融機関へ郵送
- PCdeskで審査結果の確認
ダイレクト納付が利用可能となるまでには、口座振替依頼書の提出後、10日~30日程度かかります。
(3) 利用できる金融機関
インターネットバンキングやダイレクト納付による納税手続きを行うために、それぞれ対応する金融機関の口座が必要です。利用可能金融機関については、地方税eLTAXホームページの「共通納税対応金融機関」をご確認ください。
https://www.eltax.lta.go.jp/kyoutsuunouzei/kinyukikan/
(4) 対象となる税目と納税手続き
地方税の電子納税では、税目や税金の種類により納税手続きの方法が異なります。
- ①電子申告したデータをもとに納税を行う税目
-
1) 法人都道府県民税・事業税(特別法人事業税を含む。以下同じ)
2) 法人市町村民税
3) 事業所税
4) 個人住民税(退職所得に係る納入申告)
- ②納付金額を直接入力して納付する税目
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1) 個人住民税(特別徴収)
2) 法人都道府県民税・事業税等の見込納付、みなし納付、更正、決定
3) 法人市町村民税の見込納付、みなし納付、更正、決定
(5) 利用可能時間
地方税ポータルシステムの利用可能時間内(電子申告と同様の時間)で、金融機関オンラインサービスが利用できる時間内となります。
(6) 手数料
納付書による窓口での納税と同様、手数料はかかりません。ただし、インターネットバンキングの利用にあたり、金融機関によっては利用のための手数料が必要となる場合があります。(ダイレクト納付の利用においては、これらの手数料も必要ありません)
これまでみてきたとおり、電子納税にも様々な方法が用意されています。
納付日を指定や取消、複数の銀行口座からの選択ができることを考えると、国税・地方税ともにダイレクト納付が最も利便性が高いと考えられます。次回は電子納税の具体的な実務対応について解説します。
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