更新日 2021.05.31
TKC全国会 中堅・大企業支援研究会会員
税理士 宇野 元浩
令和3年度税制改正では、ポストコロナの新しい社会を築き、デフレ脱却と経済再生を確かなものとしていくとの考え方のもと、経済構造の転換・好循環の実現を図るため、企業のデジタルトランスフォーメーション及びカーボンニュートラルに向けた投資促進、繰越欠損金の控除上限の特例等の措置が行われました。また、納税環境整備として、税務関係書類の押印義務や電子帳簿等保存制度の見直しなどが図られています。
当コラムでは、法人課税を中心に、令和3年度税制改正の概要と主な税制改正の内容について解説します。
1.研究開発の維持・拡大のための研究開発税制の見直し
(1) 税額控除割合の見直し
一般試験研究費の額に係る税額控除制度の税額控除割合が見直され、その下限が2%(改正前:6%)に引き下げられ、その上限を14%(原則:10%)とし、特例の適用期限を令和4年度末まで2年間延長されました。
令和3年4月1日から令和5年3月31日までの間に開始する各事業年度の税額控除割合
(2) 税額控除上限額の上乗せ
令和3年4月1日から令和5年3月31日までの間に開始する各事業年度のうち基準年度比売上金額減少割合が2%以上で、かつ、試験研究費の額が基準年度試験研究費の額を超える場合の税額控除上限額は次のとおりとなります。
(3) 特別試験研究費の額範囲の見直し
- ①対象となる特別試験研究費の額に、国公立大学等または国立研究開発法人の外部化法人との共同研究等に要する費用が追加され、その税額控除率が25%とされます。
- ②特別試験研究費の対象となる大学等との共同研究及び大学等への委託研究(中小企業者等が行うものは除く)について、契約上の試験研究費の総見込額が500,000円超のものに限定されます。
- ③特別試験研究費の対象となる中小企業者等への委託研究について、一定の要件をみたすものに限定されました。
(4) その他
制度の対象となる試験研究費の額に一定の見直しが行われています。
2.人材確保等促進税制の見直し
(1) 改正の概要
改正前は継続雇用者を対象とした制度でしたが、改正により新規雇用者に対する給与を一定割合増加させた場合に、新規雇用者給与額の一定割合を税額控除できる制度となりました。
(2) 内容
青色申告書を提出する法人が、各事業年度(設立事業年度、合併以外の解散事業年度、清算中の事業年度を除く)において国内新規雇用者に対して給与等を支給する場合において、下記Aが2%以上のときは、控除対象新規雇用者給与等支給額の15%(下記Bが20%以上のときは、20%)相当額の法人税額の特別控除ができることとされました。ただし、その事業年度の調整前法人税額の20%相当額が税額控除上限額となります。
(3) 適用関係
令和3年4月1日以後に開始する事業年度分から適用されます。
3.株式対価のM&Aを促進するための措置の創設
(1) 制度の概要
法人が、自社株式を対価として、買収の対象会社の株主から株式を取得するM&Aについて、対象会社株主の譲渡損益に対して課税の繰延をする措置が創設されました。
(2) 内容
法人が、株式交付によりその所有株式を譲渡し、その株式交付に係る株式交付親会社の株式の交付を受けた場合には、その譲渡に係る対価の額は、その所有株式のその株式交付の直前の帳簿価額に相当する金額に株式交付割合を乗じて計算した金額とその株式交付により交付を受けた金銭の額及び金銭以外の資産の価額の合計額(その株式交付親会社の株式の価額及び配当見合い金銭等の額を除きます。)とを合計した金額とする。
(3) 対価要件
対価として交付を受けた資産の価額のうち、株式交付親会社の株式の価額が80%以上である場合。
(4) 添付書類要件
株式交付親会社の確定申告書に株式交付計画書及び株式交付に係る主要な事項に関する明細書、その明細書に株式交付により交付した資産の数又は価額の算定の根拠を明らかにする事項を記載した書類の添付が必要です。
(5) 適用関係
令和3年4月1日以後の株式交付について適用されます。
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プロフィール
税理士 宇野 元浩(うの もとひろ)
TKC全国会 中堅・大企業支援研究会会員(地域会リーダー)
TKC中央研修所税制改正プロジェクトメンバー
TKC全国会中央研修所租税法小委員会委員
TKC企業グループ経営支援プロジェクト(Eプロジェクト)リーダー
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