疑問を解消!印紙税よくある質問Q&A

第2回 印紙税よくある質問Q&A(その2)

更新日 2019.12.16

  • X
  • Facebook

続編のご案内

 TKC税務研究所に寄せられた質問から12種類を厳選/関連情報として根拠条文等を記載しています。

TKC税務研究所

印紙税は、「印紙税額一覧表」に掲げられている20種類の文書が課税の対象となりますが、その文書等の内容や金額によって税額が異なり、正しく税額を判断するのが難しい場合もあります。
そこで、当コラムでは、全3回で、TKCグループに寄せられた400件の印紙税に関する問合せの中から、問合せの多い11の質問・回答をご紹介します。

TKC税務研究所

【Q5】業務協定書に係る印紙税

  1. 今般、取引先との間で業務を提携することとし、基本的に双方が協力して仕事を行って行くことを同意した文書を残すため業務協定書(本件協定書)を作成しました。
  2. 本件協定書には、目的物の種類、取引数量、単価、対価の支払方法、債務不履行の場合の損害賠償の方法又は再販売価格のいずれもが記載されておらず、具体的な契約の内容については、別途個別に定めることとしています。
  3. 本件協定書の有効期間が3か月を超えているため、継続的取引の基本となる契約書(7号文書)に該当するのか、お尋ねします。

【A5】

  1. 本件の協定書は、甲会社と乙会社との間で、包括的な協力関係を結び、相互に業務を委託する際に必要な基本事項の設定を目的としており、具体的な業務の委託については、別途、「個別業務委託契約」を個々に締結して、業務内容、期間、報酬等を定めるものとしており、本件協定書では、秘密保持の義務、有効期間、解除の方法を定めるにとどまっています。
  2. このように、本件協定書には、目的物の種類、取引数量、単価、対価の支払方法、債務不履行の場合の損害賠償の方法又は再販売価格のいずれも記載されていないため、有効期間が3ヶ月を超えても、本件協定書は、第7号文書《継続的取引の基本契約書》に該当しないと考えられます。

関連情報

《法令等》
印紙税法別表1の2号
印紙税法別表1の7号
印紙税法施行令26条1号

【Q6】印紙税の課税文書該当の有無

自社開発ソフトウエアの使用契約書(ソフトの販売に関するA契約書とレンタルに関するB契約書の2種類)について印紙税の課税文書に該当するかどうか教えてください。
両契約書とも第7条でメインテナンスとして保守契約がなされており、7号文書に該当し、印紙貼付漏れとの指摘を受けました。
この保守条項は、賃貸人の修理義務と免責事由を定めたものであって、請負に当たらないと解することはできませんか。

【A6】

 一般に、保守条項を含む契約書は請負契約書(二号文書)に該当すると解されております。
 A契約書では、使用権許諾料を500万円と定め、消費税40万円と合わせて支払うことを合意されており、その支払方法についてのみ別途定めることとされています。「支払方法について別途定める」という条項があることをもってコンピュータ・ソフトウエアの使用契約及び保守に関する請負契約の成立を妨げるものではなく、この書面は、同契約の成立を証するものであって、課税文書に当たります。
 次に、B契約書については、「使用期間中メインテナンス作業を提供するものとします。なお、メインテナンス料は、レンタル使用料に含まれています。」と記載され、さらに、「メインテナンス作業」の意味について、「使用説明書の記述どおりに正しく稼働するための補修作業」という通常の意味にとどまらず、「ソフトウエアの機能や使用の容易性向上などのための改善作業」、「新バージョンの提供」、「ソフトウエアの使用に関する指導とコンサルティング」を含む旨が記載されています。
 以上のように、「メインテナンス作業」は、民法606条1項に定める賃貸人の修繕義務の範囲を超える機能向上、バージョン・アップの提供、人的役務の提供を含んでおり、むしろそれが本来有償のサービスであることを示す内容となっています。
 したがって、A契約書及びB契約書は、いずれも、請負契約書の内容を持ち、課税文書(二号文書)に該当すると考えます。
 そして、A契約書及びB契約書は、いずれも、3月を超える期間の保守を約定しており、しかも、債務不履行の場合の損害賠償の方法、限度を定めている点で、印紙税法施行令26条1号に該当し、7号文書(継続的取引の基本契約書)にも該当します。
 このように、二つの号に該当する文書の帰属の決定については、印紙税法別表第一の「課税物件表の適用に関する通則」3項のイにより判定することとなり、2号文書と7号文書に該当する場合は、原則的には2号文書となりますが、「2号文書で契約金額の記載のないもの」と7号文書に該当する場合は、7号文書となります。
 A契約書又はB契約書においては、ソフトの売却代金(使用権許諾料)又はレンタル使用料に含まれることになっていて、請負に関する部分について、契約金額の記載がないため、いずれも7号文書に該当すると考えられます。

《法令等》
印紙税法別表一通則
印紙税法別表一第2号
印紙税法別表一第7号

【Q7】請負に関する基本契約の補充合意書と印紙税

  1. A社は、B社との間で、〔1〕A社は、B社に対して、Cの清掃を委託する、〔2〕委託期間は平成28年11月1日から平成29年10月31日までとする、〔3〕委託料は、当月分を翌々月末日までに、B社が指定する預金口座に振り込む方法により支払うことを主たる内容とする契約を締結し、「C清掃委託基本契約書」と題する文書(本件契約書)を取り交わし、本件契約書は「請負に関する継続的取引に関する契約書」(第7号文書)に該当するとして、印紙税を納付しておりました。
  2. 今般、A社とB社は、本件契約書を引用し、定められていなかった委託料を「月額90万円とする。」旨の覚書(本件覚書)を取り交わすこととしました。
    本件覚書が印紙税の課税文書に該当するのか、お尋ねします。

【A7】

  1. 補充契約書と課税対象
     原契約の内容を補充する契約書(補充契約書)については、通常、課税物件表に掲げられている契約の内容となると認められる事項(重要な事項)を変更する契約書のみが課税対象になると解されております。
     そして、「重要な事項」については、印紙税法基本通達「別表第2 重要な事項の一覧表」において、各課税文書の「重要な事項」が例示されており、「請負に関する契約書」(第2号文書)及び「継続的取引の基本となる契約書」(第7号文書)については、「単価」、すなわち、単位数量当たりの価格、単位期間当たりの料金等、「1単位当たりの具体的な数値」が「重要な事項」とされております。
  2. 本件覚書と印紙税
     本件覚書については、「請負に関する契約書」(第2号文書)及び「継続的取引の基本となる契約書」(第7号文書)に該当する本件契約書を引用し、定められていなかった委託料を「月額90万円」と定める(補充する)ものであることから、上記1に照らし、「請負に関する契約書」(第2号文書)及び「継続的取引の基本となる契約書」(第7号文書)に該当すると解されます。
     そして、本件覚書には契約金額の記載がなく、それを計算することもできないため、本件覚書は契約金額の記載のない文書として、第7号文書に該当することになり、印紙税の額は4000円であると考えられます。
《法令等》
印紙税法別表第1「課税物件表の適用に関する通則」3イ
印紙税法基本通達第17条2項、
同「別表第1 課税物件、課税標準及び税率の取扱い」第7号文書10、
同「別表第2 重要な事項の一覧表」4(5)・5(1)

【Q8】業務委託契約書と印紙税

建設業を営む甲は、乙に対してクラウドサービスの開発及び運用のサポート業務を委託するため、以下を記載内容とする業務委託契約書を双方合意の下に作成しました。この業務委託契約書(本件契約書)は印紙税法上どのように取扱うべきかご教示願います。

  1. 委託業務の期間は平成30年7月1日より平成31年6月30日とする。委託期間満了の2ケ月前までに、甲及び乙のいずれからも、相手方に対し本契約を継続しない旨の書面による通知がない場合、当該委託期間の末日の翌日から1年間を新たな業務委託期間として自動的に更新されるものとし、以後もこの例による。
  2. 甲が乙に支払う委託料は2万円(消費税別)とする。その支払いは業務内容を甲に納品された月の月末までに、乙指定の口座に現金振込するものとし、振込料は甲の負担とする。
  3. 業務委託により作成された成果物に関する無体財産権及び有体物に関する一切の権利は、甲に帰属する。

【A8】

  1. 本件契約書と「請負に関する契約書」(第2号文書)該否

    (1) 印紙税法別表第一「課税物件表」第2号文書にいう「請負」の意義については、民法632条にいう「請負」、すなわち、当事者の一方(請負人)がある仕事の完成を約し、相手方(注文者)がその仕事の結果(成果)に対して報酬を支払うことを約することによって成立する契約をいい、これに対して、「委任」(民法643条)とは、民法656条に規定する準委任(会計帳簿の検査等、法律行為でない事務の委託をいいます。)を含み、当事者の一方(委任者)が、相手方(受任者)の有する知識、経験、才能などを利用して、法律行為又は法律行為でない事務を相手方に委託し(前者が「委任」に、後者が「準委任」に当たります。)、相手方がこれを承諾することによって成立する契約をいうと解されております(印紙税法基本通達第2号文書1参照)。

    (2) ご照会の本件契約書については、〔1〕甲が、乙に対して、「甲のクラウドサービスの開発及び運用のサポートに関する業務」を委託し、乙が、これを承諾したこと、〔2〕委託料(2万円)の支払いは、乙が開発及び運用のサポートを甲に対して納品する該当月分を、該当月末日迄に乙の指定する銀行口座に現金振込みにて実なお、貸ビル業者等が、借受人等から保証金等として一定の金銭を受領し、ビル等の賃貸借期間に関係なく、一定期間据置後に一括返還又は分割返還することを約する契約書は、「消費貸借に関する契約書」(第1号の3文書)として取り扱うとされております(「印紙税法基本通達」第1号の3文書7参照)。施すること、〔3〕委託業務により作成された成果物に関する無体財産権及び有体物に関する一切の権利は、甲に帰属することが記載されていることから、上記(1)に照らし、「請負に関する契約書」(第2号文書)に該当すると解するのが相当と考えられます。

  2. 本件契約書と「継続的取引の基本となる契約書」(第7号文書)該否

    (1) 印紙税法施行令26条1号は、営業者の間において、請負に関する2以上の取引を継続して行うために作成される契約書で、当該2以上の取引に共通して適用される取引条件のうち目的物の種類、取扱数量、単価、対価の支払方法、債務不履行の場合の損害賠償の方法又は再販売価格を定めるもの(電気又はガスの供給に関するものを除く。)を「継続的取引の基本となる契約書」の一類型として定めております。

    (2) 本件契約書については、〔1〕甲・乙という「営業者」を当事者とする「請負に関する契約書」であること、〔2〕委託する業務は「クラウドサービスの開発及び運用のサポート」とされていること(印紙税法施行令26条1号にいう「目的物の種類」に当たります。)、〔3〕委託料の支払は「乙が開発及び運用のサポートを甲に対して納品する該当月分を該当月末日迄に乙の指定する銀行口座に現金振込みにて実施する」とされていること(印紙税法施行令26条1号にいう「2以上の取引」とは、契約の目的となる取引が2回以上継続して行われることをいい、清掃請負契約書等のように、明確な取引単位を区分できないものについては、料金等の計算の基礎となる期間1単位ごと又は支払の都度ごとに1取引として取り扱うこととされております(「印紙税法基本通達」第7号文書4・6参照))、〔4〕委託料の支払は、「乙の指定する銀行口座に現金振込みにて実施する」とされていること(印紙税法施行令26条1号にいう「対価の支払方法」に当たります。)から、「継続的取引の基本となる契約書」に該当すると考えられます。
     そして、本件契約書においては、契約期間が「平成30年7月1日より平成31年6月30日とする。委託期間満了の2ヶ月前までに、甲及び乙のいずれからも、相手方に対し本契約を継続しない旨の書面による通知がない場合、当該委託期間の末日の翌日から1年間を新たな業務委託期間として自動的に更新されるものとし、以後もこの例による。」とされており、本件契約書には、印紙税法別表第一「課税物件表」第7号「物件名」欄の括弧書き(除外規定)の適用がないことになり、したがって、本件契約書は、「継続的取引の基本となる契約書」(第7号文書)に該当すると解するのが相当と考えられます。

  3. 本件契約書の所属と印紙税の額
     「請負に関する契約書」(第2号文書)と「継続的取引の基本となる契約書」(第7号文書)とに該当する文書の所属については、契約金額の記載のある文書は前者に、記載のない文書は後者に所属するとされており(印紙税法別表第一「課税物件表の適用に関する通則」3イ参照)、本件契約書には契約金額の記載がないものの、委託料2万円は、その支払方法に照らして、月額と推認され、契約金額を計算をすることができる(2万円×12月=24万円)ことから、本件契約書は第2号文書に所属することとなり、印紙税の額は、この契約金額に対応する200円であると考えられます。
《法令等》
民法632条
民法643条
民法656条
印紙税法別表一「課税物件表の適用に関する通則3イ」
印紙税法施行令26条1号
印紙税法基本通達第2号文書1
注1:
当Q&Aの掲載内容は、一般的な質問に対する回答例であり、TKC全国会及び株式会社TKCは、当Q&Aを参考にして発生した不利益や問題について何ら責任を負うものではありません。個別の案件については、最寄りのTKC会員にご相談ください。
注2:
当Q&Aの内容は、作成時の法令等を基に作成しております。このため、当Q&Aの内容が最新の法令等に基づいているかは、利用者ご自身がご確認ください。
注3:
当Q&Aの著作権は株式会社TKCに帰属します。当Q&Aのデータを改編、複製、転載、変更、翻訳、再配布することを禁止します。

この連載の記事一覧へ

免責事項

  1. 当コラムは、コラム執筆時点で公となっている情報に基づいて作成しています。
  2. 当コラムには執筆者の私見も含まれており、完全性・正確性・相当性等について、執筆者、株式会社TKC、TKC全国会は一切の責任を負いません。また、利用者が被ったいかなる損害についても一切の責任を負いません。
  3. 当コラムに掲載されている内容や画像などの無断転載を禁止します。