更新日 2016.09.26
TKC税務研究所 特別研究員 相澤 友弘
経済活動のグローバル化に伴い、国際取引に係る消費税について判断が困難となるケースが増加しています。また、平成28年度税制改正では、高額資産を取得した場合における仕入税額控除制度の適用関係の見直しがおこなわれ、一定の場合免税点制度及び簡易課税制度が適用できなくなりました。
当コラムでは、「消費税の免税等に関する留意点」として、第1回で高額特定資産を取得した場合の納税義務の免除の特例を解説し、第2回ではTKC税務研究所に寄せられた質問のうち、留意すべき輸出免税の取扱いに関するQ&Aを掲載します。
今回は、TKC税務研究所に寄せられた質問のうち、輸出免税の取扱いに関する留意すべき項目についてQ&A形式で解説します。
【Q1】
消費税が免除される一般的な輸出取引の範囲と輸出免税の適用を受けるための証明書類等について教示してください。
【A1】
(1) 課税事業者が行う次の輸出取引については、消費税が免除されます。
- ①国内からの輸出として行われる資産の譲渡又は貸付け(消費税法第7条第1項第1号、関税法第2条第1項第2号、消費税法基本通達7-2-1(1))
ただし、輸出取引を行う事業者に対して行う国内での資産の譲渡等は輸出取引には該当しません。 - ②国内と国外にわたって行われる旅客若しくは貨物の輸送、通信、郵便又は信書便(消費税法第7条第1項3号,同施行令第17条第2項第5号)
- ③非居住者に対する鉱業権、工業所有権、著作権、営業権等の無体財産権の譲渡又は貸付け(消費税法第7条第1項第5号、同施行令第17条第2項第6号)
- ④非居住者に対する役務の提供
ただし、a.国内に所在する資産に係る運送又は保管、b.国内における飲食又は宿泊、c.その他a又はbに準ずるもので国内において直接便益を享受するもの(例:理容・美容、医療・療養、観劇や語学教育に係る役務の提供)を除く(消費税法第7条第1項第5号、同施行令第17条第2項第7号)。
(2) 輸出免税の適用を受けるための証明
輸出免税の適用を受けるためには、その取引が輸出取引等である証明が必要です(消費税法第7条第2項、同基本通達7-2-23)。
上記(1)の①~④の輸出取引等の区分に応じて輸出許可書、税関長の証明書又は輸出の事実を記載した帳簿及び書類を整理して、納税地に7年間保存する必要があります(消費税法施行規則第5条第1項)。
- ①のうち輸出の許可を受ける貨物の場合→輸出許可書(消費税法施行規則第5条第1項1号)
- ①のうち郵便物として輸出する場合で、当該資産の価額が20万円を超えるもの→税関長が証明した輸出許可書(消費税法施行規則第5条第1項第1号)
- ①のうち郵便物として輸出する場合で、当該資産の価額が20万円以下のもの→帳簿又は書類で法定事項が記載されているもの(消費税法施行規則第5条第1項第2号)
- ②の取引の場合→帳簿又は書類で法定事項が記載されているもの(消費税法施行規則第5条第1項第3号)
- ③及び④の取引の場合→契約書その他の書類で法定事項が記載されているもの(消費税法施行規則第5条第1項第4号)
(注)輸出取引を実際に行った場合であっても、上記の証明ができない取引は「輸出免税」が適用されません。
【Q2】
国内市場で非居住者が発行した社債の利子や国内に支店を有する国外法人(非居住者)が、国内で発行した社債の利子を受け取った場合の消費税の取扱いはどのようになりますか。
【A2】
非課税資産の譲渡等のうち、金銭の貸付けや国債等の取得で債務者が非居住者であるものは、消費税法第31条第1項に規定する課税資産の譲渡等に係る輸出取引等とみなされます(消費税法施行令第17条第3項)。
ご質問の非課税売上げに該当する社債の利子の受け取りは、当該社債の債務者がいずれも非居住者ですから、上記の規定により課税資産の譲渡等に係る輸出取引等に該当するものとみなされます。
したがって、課税売上割合の計算上、受け取る利子の額を分母及び分子に算入しますが、基準期間や特定期間における課税売上高又は基準期間の簡易課税制度の適用上限額には算入されません(消費税法施行令第51条第1~3項)。
この非課税資産の輸出取引等のために要した国内における課税仕入れに係る税額の仕入税額控除の計算を個別対応方式で行う場合の用途区分は、「課税資産の譲渡等にのみ要するもの」に該当します。
なお、事業者が製品等を国外で販売するために行う資産の輸出や国外の支店等が使用するために行う資産の輸出も、課税資産の譲渡等に係る輸出取引とみなされて、非課税資産の輸出取引等と同様の取扱いが適用されます(消費税法第31条第2項、同基本通達11-7-1)。
【Q3】
旅行代理店が行う自社企画海外パック旅行と他社主催の海外パック旅行の販売に係る課否区分等はどのようになりますか。
【A3】
(1) 自社企画主催の海外パック旅行は、旅行業者と旅行者との間の包括的な役務の提供契約に基づくものであり、国内における役務の提供及び国外において行う役務の提供を区分して課否区分を判定することになります。
- ①国内における役務の提供に区分されるものとして、例えばパスポート・ビザ交付申請等の事務代行や国内における輸送、宿泊サービス等は「課税取引」に該当しますが、「輸出免税」の適用対象にはなりません。
- ②国外における役務の提供に区分されるものとしては、例えば国内から国外、国外から国内への輸送や国外における輸送、宿泊、観光案内サービス等は「不課税取引」に該当します(消費税法基本通達7-2-6)。
- ③旅行業者が海外パック旅行に際して、居住者である航空会社等から受ける事務代行手数料については、国債輸送に伴う手数料収入であっても、国内取引として「課税取引」になります。
(2) 旅行代理店が他社主催の海外パック旅行を販売する場合には、旅行業法上「代売契約」として取り扱われますので、旅行者等に販売する売上金額と主催する他社に支払う仕入金額との差額のみが代売手数料として「課税取引」になります。
したがって、会計処理を仕入/売上として計上している場合であっても、その代売手数料のみを課税売上げとして処理して差し支えありません。
ただし、課税資産の譲渡等のみの代売を行っている場合は、売上総額を課税売上げとし、主催する他社への支払金額を課税仕入れとしても差し支えありません(消費税法基本通達10-1-12(2))。
プロフィール
TKC税務研究所 特別研究員 相澤 友弘(あいざわ ともひろ)
昭和62年 東京国税局間税部消費税課総務係長
平成 6年 東京国税局課税第二部消費税課課長補佐
平成12年 東京国税局調査第一部特別国税調査官
平成13年 東京国税局課税第二部統括国税調査官
平成16年 麹町税務署総括特別国税調査官(法人税担当)
平成17年 千葉南税務署長
平成18年 (株)TKC税務研究所特別研究員
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