更新日 2015.08.31

IFRSの最近の動向

第2回(最終回) IFRS強制適用の可能性を金融庁の動きからさぐる(その2)

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TKCシステム・コンサルタント 公認会計士 中田清穂

TKCシステム・コンサルタント
公認会計士 中田 清穂

2013年以降、金融庁において、IFRSに関する様々な動きが見られます。このコラムでは、「IFRSの適用」についてのこれまでの経緯と金融庁の最近の動きから見えてくる「IFRS強制適用の可能性」について解説します。

 前回、「IFRS強制適用」に関する金融庁のスタンスや優先順位が見えてくる「根拠」を示すというお約束をしました。

 まず、2013年からの動きを見ていきましょう。

2013年6月:
金融庁が企業会計審議会が取りまとめた「当面の方針」を公表しました。
「当面の方針」にある以下の3項目は、その後すべて実現しました。
  1. (1)IFRS任意適用の要件緩和(事実上の撤廃)
    ⇒2013年10月内閣府令改正
  2. (2)単体開示の簡素化
    ⇒2014年3月内閣府令改正(2014年3月期から即適用)
  3. (3)日本版IFRSの開発(現在のJMIS)
    ⇒2015年6月ASBJが最終基準を公表
この「当面の方針」が相当な影響力を持っていたことがおわかりいただけると思います。
2013年8月:
金融庁は次官級ポスト「金融国際審議官」を新設し、初代金融国際審議官として河野正道氏を昇格させました。
金融庁内の次官級ポストを金融庁長官と合わせて2人にするという特別扱いです。
そして、初代金融国際審議官として任官した河野正道氏は、IFRS財団のモニタリングボードの議長を務めている人です。
2014年10月:
金融庁、企業会計審議会で企画調整部会を廃止し、会計部会を新設しました。
会計部会の目的は、「IFRSの任意適用拡大促進」及び「IFRSに関する対外的意見発信の強化」です。
いわば「IFRS対応のための部会」です。
2014年11月:
IFRS財団の評議員会の評議員に、佐藤隆文氏が就任しました。
佐藤隆文氏は、元金融庁長官です。
2007年金融庁長官に就任し、2009年に退官した方です。
2009年といえば、前回のコラムでも触れましたが、強制適用の判断時期を2012年を目途とし、2015年又は2016年に適用を開始することを盛り込んだ「中間報告」が、企業会計審議会から公表された年です。
2015年4月:
金融庁は「IFRS適用レポート」を公表しました。
同日開催された企業会計審議会会計部会の委員が全員絶賛しました。
つまり、「IFRS適用レポート」は「お墨付き」を得たわけです。
金融庁が「IFRS適用レポート」をどのように利用しようとしているのかがポイントです。
2015年6月:
金融庁は、IFRS財団の諮問会議(IFRS Advisory Council)で、日本でのIFRS適用企業が拡大し、日本基準適用企業や米国基準適用企業が減少していることを説明しました。

 さて、ここでもう一度、2013年6月に公表された「当面の方針」に触れましょう。
 実は「当面の方針」には、「大きな収斂の流れ」という表現があります。

 JMIS(日本版IFRS)を開発すると、日本の資本市場では、日本基準、IFRS、米国基準に加えて4つ目の会計基準が利用されることとなり、投資家に混乱を招くという悪影響があるのではないかという懸念に対して用いられた表現です。
 つまり、JMISの開発で4基準が併存することとなるが、「いずれは一つになる」という意味です。

 では、今ある4つの基準のうち、一つになるのはどれでしょうか。

 そしてこの「収斂」に対して、金融庁はどこまで真剣に対応しようとしているのでしょうか。
 対応せざるを得ない根本的な理由はどこにあるのでしょうか。

 今回のコラムでおおよその見当はつくと思いますが、9月に開催されるTKCセミナーで、よりわかりやすく説明したいと思います。

プロフィール

公認会計士 中田 清穂(なかた せいほ)
TKC連結会計システム小委員会委員

著書等
  • 『内部統制のための連結決算業務プロセスの文書化』(中央経済社)
  • 『連結経営管理の実務』(中央経済社)
  • 『SE・営業担当者のための わかった気になるIFRS』(中央経済社)
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