TKC全国会 中堅・大企業支援研究会(中大研)

掲載日:2015.04.20

会社法改正の概要とその実務対応

第1回 ガバナンス関係の改正

TKC全国会 中堅・大企業支援研究会会員 税理士 岡野 訓

TKC全国会 中堅・大企業支援研究会会員
税理士 岡野 訓

平成27年5月1日から施行される改正会社法は、ガバナンス関係の改正が中心ですが、企業集団関係の改正もあり、少なからず税務への影響もあります。当コラムでは、改正会社法概要とその実務対応について解説します。

 平成27年5月1日から、改正会社法が施行されます。今回は、ガバナンス関係の改正が中心ではありますが、企業集団関係の改正もあり、少なからず税務への影響もあります。本コラムでは、今回から3回にわたって、改正内容の解説を行っていきます。文字数が限られていますので、できるだけポイントを絞った分かり易い解説を心がけてまいります。どうぞよろしくお願い申し上げます。

1.基本的な考え方

(1) 改正の理由

 現行の会社法は、平成17年に成立し、平成18年から施行されていますが、施行当初から次のような指摘がされていました。

  1. ①コーポレート・ガバナンスについて、取締役に対する監査・監督を強化すべし
  2. ②親子会社に関する規律の整備が不十分
  3. ③会社法の各規定について、制度間の整合性が取れていない

 これらのことが、欧米諸国と比較し、日本企業の収益力が低く、株価も低迷している原因になっているという、内外の投資家の不信感があると考えられます。
 そこで、改正会社法では、コーポレート・ガバナンスの強化及び親子会社に関する規律等の整備が図られます。その結果、日本企業に対する内外の投資家からの信頼が高まり、日本企業に対する投資が促進され、ひいては、日本経済の成長に寄与することが期待されています。

(2) 主な改正点

 今回の改正内容をまとめると、次の3つに大別できます。

【改正会社法による改正事項の3区分】

  1. ①ガバナンス関係の改正
    社外役員の要件や規律、監査等委員会設置会社の創設
  2. ②親子会社関係の改正
    企業集団の業務適正化、特別支配株主の株式等売渡し請求
  3. ③その他のバグ取り改正
    監査役の監査範囲に関する登記等

2.ガバナンス関係の改正

(1) 監査役の監査範囲の限定に関する登記
Point・・・
監査役の監査の範囲を会計に関するものに限定する旨の定款の定めがある株式会社であるときは、その旨が登記事項とされました。

①監査役の職務範囲

 監査役の職務範囲には業務監査と会計監査がありますが、定款に定めることにより、これを会計監査に限定することができます。しかし、従来は、監査役の職務範囲については、登記事項ではありませんでした。改正後は、会計監査限定であることが登記されるようになります。

②なぜ、会計監査限定の登記が必要か?

 会計監査限定の監査役を設けていても法制上は監査役設置会社に該当しません(会法2九)。しかし、登記上は、業務監査を行っていない監査役を設けている会社であっても、監査役設置会社と表示されていました。改正の必要ありとされたのは、監査役設置会社か否かにより会社法上の取扱いが異なるからです。

③経過措置

 経過措置として、監査役に就任や重任等の登記事由が発生するまでは登記の必要はありません。

(2) 社外監査役等に関する変更
Point・・・
社外取締役、社外監査役になれない者の範囲が見直されました。

①社外要件の厳格化と緩和措置

 株式会社の親会社等の関係者、兄弟会社の業務執行者や、株式会社の一定の業務執行者等の近親者は、社外取締役になれないこととしました。
 他方、過去要件の対象となる期間を、原則として10年間に限定し、社外要件が復活することを認めています。

社外取締役になれない者   社外監査役になれない者
親会社等、取締役、執行役、使用人 親会社等 親会社等、取締役執行役、使用人、監査役
業務執行取締役、執行役、使用人 兄弟会社 業務執行取締役、執行役、使用人
業務執行取締役、執行役、使用人
過去10年内に上記の者であった者
株式会社 取締役、使用人
過去10年内に上記の者、会計参与、執行役であった者
株式会社の取締役、執行役、重要な使用人、親会社等 近親者
(配偶者、
2親等の親族)
株式会社の取締役、重要な使用人、親会社等
業務執行取締役、執行役、使用人
過去10年内に上記の者であった者
子会社 取締役、会計参与、使用人、執行役
過去10年内に上記の者であった者
(3) 監査等委員会設置会社の創設
Point・・・
新たに「監査等委員会」制度が導入されました。
また、従前の「委員会設置会社」は、「指名委員会等設置会社」という名称に変更されました。

①従来制度の問題点

 委員会設置会社は、指名・報酬委員会を設置して社外取締役が過半数となることもあり、実務では採用されませんでした。
 日本の監査役会設置会社が、海外で理解されないのは、監査役が取締役会の議決権を有していないのに、取締役の監督が出来るのかとの疑問から生じています。

②監査等委員会設置会社の新設の目的

 そこで、監査役に取締役会での議決権を与えてしまえば、上記の疑義が払拭されるだろうと考えました。つまり、監査等委員会設置会社は、今の監査役に取締役会での議決権を持たせたものと理解出来ます。

③監査等委員会設置会社の特徴

 監査等委員会設置会社では、監査役を置かず、監査役会も設置されません。代わりに過半数の社外取締役で構成される監査等委員会が設置され、指名委員会等設置会社の指名委員会、報酬委員会の権限に準ずる機能を有します。

プロフィール

税理士 岡野 訓(おかの さとる)
TKC全国会 中堅・大企業支援研究会会員

著書等
  • 『新会社法の実務Q&A』(共著・清文社)
  • 『申告書からみた税務調査対策シリーズ』法人税の鉄則50、相続税の鉄則50、組織再編税制の鉄則30(共著・中央経済社)
  • 『会社法の法務・会計・税務』(共著・清文社)
  • 『実務目線からみた事業承継の実務』(共著・大蔵財務協会)

「税務弘報」「 週刊T&Aマスター」などにも執筆。

ホームページURL
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