更新日 2015.02.09

平成26年度(平成27年3月期)税務申告の直前対策

第2回(最終回) 法人税申告の直前対策②、消費税申告の直前対策

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TKC全国会 中堅・大企業支援研究会会員 税理士・公認会計士 鯨岡健太郎

TKC全国会 中堅・大企業支援研究会会員
税理士・公認会計士 鯨岡 健太郎

平成26年度では、投資減税措置等や所得拡大促進税制の拡充に加え、民間投資と消費の拡大のための措置が講じられています。当コラムでは、平成27年3月期決算法人のための直前対策として、法人税・消費税の決算・申告に関する留意点を解説します。

3.法人税申告の直前対策

(6) 所得拡大促進税制の拡充

 平成26年度税制改正において、所得拡大促進税制の適用要件が緩和されるとともに、適用期限が2年延長されました(措法42の12の4①)。
 改正後の適用要件は以下の通りです。

(要件1)雇用者給与等支給増加額 ≧ 基準雇用者給与等支給額 × 2% (*1)
(要件2)雇用者給与等支給額 ≧ 比較雇用者給与等支給額
(要件3)平均給与等支給額 (*2) > 比較平均給与等支給額 (*3)

(*1)

平成27年3月31日までに開始する事業年度2%

平成27年4月1日から平成28年3月31日までの間に開始する事業年度3%

平成28年4月1日から平成30年3月31日までの間に開始する事業年度5%

(*2)
継続雇用者に対する給与等支給額を、対応する給与等支給者数で除して計算した金額
(*3)
当期の継続雇用者に対応する前期の給与等支給額を、対応する給与等支給者数で除して計算した金額

 今回の税制改正で、「継続雇用者」という概念が新たに登場しましたが、税額控除の対象者である「国内雇用者」とは範囲が異なりますので留意が必要です。
 税額控除の対象となる「国内雇用者」は、「法人の使用人(役員等を除く)のうち国内事業所に勤務する雇用者であって、労働基準法第108条に定める賃金台帳に記載された者」をいいます。これに対して、適用要件を判断する局面でのみ登場する「継続雇用者」は、「前事業年度と当事業年度の2期にわたり給与等の支給を受けた国内雇用者」をいいますので、たとえば当期入社社員は「国内雇用者」には該当しますが「継続雇用者」には該当しません。さらに、平均給与等支給額の集計対象とするのは継続雇用者のうち雇用保険一般被保険者に限り、継続雇用制度適用対象者を除くこととなります(措法42の12の4②、措令27の12の4⑪)。給与等支給額の集計を行う際には、このような定義の違いに充分留意しつつ、効率よく集計できるように事前の準備が必要になると考えられます。
 さらに、平成27年3月期固有の取扱いとして、「経過措置」の適用があります。具体的には、平成26年3月31日までに終了する事業年度において、改正前の制度の適用は受けられなかったものの、改正後の適用要件を満たしている場合には、改正後の制度に基づく税額控除額を平成27年3月期において上乗せ控除できる、というものです(改正法附則82②)。
 ここで留意しなければならないのは、平成26年3月期において、改正前の適用要件を既に満たしている場合には、実際に税額控除をとらなくても、経過措置の適用を受けることができないということです。経過措置の適用を受けられるかどうかは、既に検討が可能なはずですので、経過措置の適用を予定している企業は早めの準備が必要になると考えられます。

(7) 交際費課税の緩和

 交際費の損金算入限度額(定額控除額)については、従来、資本金1億円以下の中小法人(資本金5億円超の法人の完全子会社を除く)にのみ認められてきましたが、当期より、企業規模にかかわらず、交際費とされる接待飲食費の50%相当額について損金算入が認められることとなりました(措法61の4①)。
 損金算入の対象となる接待飲食費には、もともと交際費等に含まれない1人当たり5,000円以下の飲食費は除かれるほか、もっぱらその法人の役員・使用人に対する接待飲食費も除かれますので留意が必要です。
 この規定の適用を受ける場合には、法人税法において整理保存が義務づけられている帳簿書類において、次に掲げる事項が記載されている必要があります(措法61の4④、措規21の18の4)。

①飲食等のあった年月日
②飲食等に参加した得意先等の氏名又は名称及びその関係
③飲食費の額並びに飲食店の名称、所在地
④その他飲食費であることを明らかにするために必要な事項

(8) 貸倒引当金の廃止

 平成24年度税制改正によって、特定の法人を除き、貸倒引当金の制度が廃止されました。現在はその経過措置として、繰入限度額が段階的に縮小されています。
 平成27年3月期では、経過措置の3年目(最終年度)として、繰入限度額は改正前の繰入限度額の4分の1(25%)相当額となります(改正法附則13①)。

4.消費税申告の直前対策

(1) 税率の変更

 平成26年4月1日より、消費税の税率が5%から8%に引き上げられました。
 3月決算法人については、期初から新税率の適用を受けているため、税額の集計について繁雑な区分作業を行う必要はないと考えられますが、旧税率による課税売上(又は課税仕入れ)について返品・値引き等が生じた場合には、旧税率による対価返還取引として別途集計する必要がありますので、ご留意下さい。

(2) 特定新規設立法人に対する納税義務の免除の特例

 新規設立法人については、設立後2年間は基準期間がないため、原則として納税義務が免除されていますが、大法人の子会社等、一定の新規設立法人について免税事業者とすることが不公平であるとの考えから、平成26年4月1日以降に設立された法人が「特定新規設立法人」に該当する場合には、基準期間のない課税期間について納税義務が免除されないこととなりました(消法12の3①)。
 特定新規設立法人に該当するのは、以下の2つの要件を満たす場合です。

①事業年度開始の日において、以下のような状況により実質支配されていること(「特定要件」を満たすこと)
1)「他の者」により発行済株式総数の過半数を保有されていること
2)「他の者」により議決権総数の過半数を保有されていること

②特定要件の判定基礎となった「他の者」又はその「特殊関係法人」のいずれかの課税売上高(新規設立法人のその事業年度の基準期間に相当する期間の課税売上高)が5億円を超えていること

 特に、大規模法人の子会社であって、資本金が1,000万円未満の法人がある場合には、「特定新規設立法人」に該当する可能性が高いと考えられますので、事前にご確認下さい。

プロフィール

税理士・公認会計士 鯨岡 健太郎(くじらおか けんたろう)
TKC全国会 中堅・大企業支援研究会会員

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税理士法人ファシオ・コンサルティング

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