電子申告の最新事情と実践のためのポイント

第1回 電子申告の最新事情~電子申告はこんなに増えている!~

更新日 2014.12.15

  • X
  • Facebook
税理士 岡田淳

TKC全国会 中堅・大企業支援研究会会員
税理士 岡田 淳

電子申告システムの運用開始から10年が経ち、実践企業も増加してきました。
当コラムでは、これから電子申告に取り組まれる方に向け、全2回のダイジェスト版として最新の利用状況や今後の動向を紹介し、実践のためのポイントを解説します。

 平成16年に「国税電子申告・納税システム(e-Tax)」がスタートし、翌年には「地方税ポータルシステム(eLTAX)」の運用が開始されました。
 このコラムでは、10年の節目を迎えた電子申告システムの最新の利用状況や今後の動向を紹介するとともに、昨年9月から11月にかけて掲載したコラム「これから電子申告に取り組む皆様へ」の内容を要約して電子申告実践のための利用ポイントを解説します。

 第1回は、電子申告の利用件数の推移と電子申告をより利用しやすくするための国税e-Taxや地方税eLTAXの取り組み等をご紹介します。

1.こんなに増えている電子申告

(1)電子申告の利用件数の推移

e-Taxの利用件数 

e-Taxの利用件数の推移グラフ

eLTAXの利用件数 

eLTAXの利用件数の推移グラフ

 地方税eLTAXの利用件数は、毎年各税目とも20パーセント以上伸びています。
 一方、国税e-Taxの伸び率は地方税より低いですが、毎年利用件数は30万件ずつ増加しています。

(2)何故、増えているのか?
 この平成25年度に電子申告の利用件数が増加したのは、以下の要因が挙げられます。
  • 1,000枚以上の法定調書の電子データによる提出の義務化
  • 給与所得(及び公的年金等)の源泉徴収票の電子データによる提出の義務化
  • 全都道府県が電子申告対応済み
  • 市町村もほぼ電子申告対応済み
  • 電子申告の利便性の周知
  • 電子申告に対応した税務申告書作成システムの増加(データの一元管理)

2.今後の動向

(1)企業の電子申告への取り組み

 今年6月に実施したTKC電子申告セミナーのアンケート結果によると、アンケート回答者の半数は既に「消費税」については電子申告を実践済みであり、次に「法人税」、「法人地方税」と続き、最も少ない税目が「固定資産税」でした。
 一方、今後取り組みたい税目としては、法人地方税が45パーセントと最も多く、次いで現在ほとんど電子申告を実践していない「固定資産税」について39パーセント近くが電子申告に取り組みたいと回答しています(アンケート結果(電子申告の実践状況)表参照))。
 また、電子申告を実践する上での課題については、電子申告をまだ実践していない回答者では、「電子証明書の手続きが煩雑」、次いで「コスト負担」が多く、何らかの税目を既に電子申告されている回答者では、「国税では決算書等の別途送付が必要」次いで「電子証明書の手続きが煩雑」が多くあります。

 一方で電子申告実践済みの企業様から、

  • 「コスト負担」はかえって軽くなった
  • 「電子証明書の手続き」は思ったほど困難ではなかった

 との回答もありました(アンケート結果(電子申告の課題)参照)。

 国税電子申告では「別途送付が必要」ということが、法人電子申告の利用件数が大きく伸びない要因と思われます。今後の国税局側の対応を期待しております。

アンケート結果(電子申告の実践状況)

アンケート結果(電子申告の課題)

(2)さらに充実したサービスの提供を

 国税e-Taxや地方税eLTAXは電子申告の利便性向上を図るため、システム対応等を実施しています。
 平成26年9月より、地方税eLTAXでは次のような改善がなされています。

  • 電子申告利用等受付サービスの利用時間拡大
    平日の電子申告等受付サービスの終了時間が24時に拡大されました。
  • 電子申告利用開始の即時化
    利用届出(新規)を提出後、利用者IDと仮暗証番号を用いて直ちに電子申告を利用することができるようになりました。
  • 固定資産税(償却資産)申告データCSV取り込み
    給与支払報告書(及び公的年金等支払報告書)のCSVデータのインポート機能に加えて固定資産税(償却資産)申告データについても、平成27年度分からCSVデータの取り込み及び2,000明細を超えるデータの送信が可能になります。

 これまで、「固定資産税」については、明細数が多く登録作業に時間を要していました。前掲のアンケート結果で、今後取り組みたい税目として「固定資産税」が挙げられていたのは、CSVによるデータ取り込みが可能になることも要因の一つであると考えられます。

 また、国税e-Taxでは、スマートフォンやタブレット端末の急速な普及や利用者からの意見要望を受けて、平成26年6月16日から、e-Taxのサービスのうち、一部の手続等についてスマートフォン等での電子申告ができる「e-Taxソフト(SP版)」のサービスが開始されました。
 さらに、e-Taxソフト(WEB版)でも、CSVファイルの読み込みによる法定調書を提出する際、提出できる法定調書の合計枚数の上限が拡大します。法定調書の合計枚数の上限は、平成27年1月5日以降は、現在の「各調書につき100枚」から「各法定調書の合計枚数5,000枚かつデータサイズ10MB」となります。

 このように、国税e-Taxや地方税eLTAXは改善され、さらに利用しやすくなりました。

 次回は、新たに電子申告を始められる際の利用ポイントについて解説します。

プロフィール

税理士 岡田 淳(おかだ じゅん)

TKC全国会 中堅・大企業支援研究会会員

ホームページURL
赤坂匠税理士法人

免責事項

  1. 当コラムは、コラム執筆時点で公となっている情報に基づいて作成しています。
  2. 当コラムには執筆者の私見も含まれており、完全性・正確性・相当性等について、執筆者、株式会社TKC、TKC全国会は一切の責任を負いません。また、利用者が被ったいかなる損害についても一切の責任を負いません。
  3. 当コラムに掲載されている内容や画像などの無断転載を禁止します。