ベンチャー投資に関連してIPOのポイントを再整理

第3回(最終回) IPOのスケジュールについて

更新日 2014.08.11

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公認会計士 大山陽希

公認会計士 大山 陽希
大手監査法人勤務

最近の市況を反映して、大企業でもベンチャー投資が活発化し、大企業とベンチャー企業の業務提携も増加しています。
このコラムでは、そういったIPOを取り巻く最新の動向をふまえ、改めてIPOのメリットやデメリット、またスケジュールについて解説いたします。

IPOにはどのくらいの期間が必要か

 今回は、ベンチャー企業がどれくらいの期間をかけてIPOの準備をするのか、という点について見ていきたいと思います。ベンチャー投資との関連で言うと、IPOのスケジュールを把握することで、投資回収の期間を適切に設定でき、また、どのステージのベンチャー企業に投資するのかという意思決定を適切に行うことが可能となるでしょう。

具体的なIPOのスケジュールは

 IPOを行おうと考えたときに、まず始めに受けなければいけないものに「ショートレビュー」と言われるものがあります(「IPOのための課題調査」と言ったりもします)。これは企業がIPOを行うために、何を直さなければならないか、それはいつまでにやらなければならないのか、ということについて監査法人に網羅的に調査してもらうことを言います。このショートレビューを受けて、IPO準備のためのスタートを切ります。
 また、IPOのスケジュールにおいては、監査を受ける期間を考慮しなければなりません。IPOのためには監査法人の監査を受けなければならないと取引所の規則で定められています。そして、その期間は2期間です。2期間の監査を受け、監査証明が出て初めてIPOのための申請が取引所にできるルールになっています。
 そして、実は監査はいきなり受けることはできません。ある特定の決算期について監査を受けようとします。すると、その決算期のスタートの数字も正しいかどうかを確かめなければなりません。初めて監査を受けるときにはまずスタートの数字から正しいかどうか監査を受ける必要があります。これを「期首残高監査」と言います。

一般的なIPO実施スケジュール

 このように、一般的なスケジュールにおいては、IPOを達成しようとする2年以上前から準備が必要となります。これはあくまでも理想的なスケジュールであり、内部管理体制の整備が遅れや業績の達成状況等を理由として、IPOの時期が後ろ倒しになってしまうこともよくあります。

最近の動向

 上述のように、一般的なスケジュールではIPOを行う2年以上前(N-3期)から監査を受ける準備をスタートさせなければなりません。しかし、最近のIPOの実務として、「遡及監査」というものがあります。これは、N-2期の期中(場合によってはN-1期に入ってから)に、N-2期の期首残高を遡って監査することを言います。遡及監査をすることによって2年以上かかるIPOのスケジュールを短縮することが可能となります。ここで注意が必要なのは、遡及監査はどのような企業でも受けられるものではないという点です。遡って監査を行うことが可能な企業と、そうでない企業があります。これは、その企業の財務諸表の内容や内部管理体制の整備運用状況に左右されます。また監査を担当する監査法人によって取扱いが異なるので、事前に相談をすることが必要となります。

終わりに

 IPOを目指す企業への対応策が相次いで打ち出される中、今後もベンチャー企業への投資は活発に行われる傾向にあると言えます。日本経済の継続的な発展のためにはIPOは欠かせず、またIPOを目指す企業への投資も活発に行われることが必要でしょう。

プロフィール

公認会計士 大山 陽希(おおやま はるき)
大手監査法人勤務

著書等
  • これですべてがわかるIPOの実務(共著・中央経済社)
  • 株式公開ハンドブック(共著・中央経済社)
  • 新規上場実務ガイド(共著・中央経済社)
  • 会社を成長させる5つのアクション-経営管理体制の整備とIPO-(共著・中央経済社)

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