ベンチャー投資に関連してIPOのポイントを再整理

第2回 IPOのメリットとデメリットについて

更新日 2014.07.28

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公認会計士 大山陽希

公認会計士 大山 陽希
大手監査法人勤務

最近の市況を反映して、大企業でもベンチャー投資が活発化し、大企業とベンチャー企業の業務提携も増加しています。
このコラムでは、そういったIPOを取り巻く最新の動向をふまえ、改めてIPOのメリットやデメリット、またスケジュールについて解説いたします。

IPOというEXITを選択するということ

 前回のコラムではIPOの動向について取り上げました。今回は、そもそも、企業が、「なぜIPOを目指すこと選ぶのか?」について、取り上げたいと思います。IPOを果たした企業(=上場企業)は、株式譲渡・M&A・IPO等の様々なEXITの選択肢から、IPOにより得られるメリット、IPOに伴う追加負担等を勘案して「IPO」というEXITを選択しています。今回はIPOを行うことのメリット、デメリットを整理したいと思います。

IPOのメリットとは?

 それでは、IPOのメリットについてみていきましょう。具体的なIPOのメリットとして次のようなものがあげられます。

①資金調達能力の向上
 先ず、一つ目に挙げられるメリットは資金調達です。上場していない企業の場合、資金調達の方法は銀行借入などに限られるのが通常です。しかし上場すると、株式市場から直接資金を調達することができます。
②社会的信用力と知名度の向上
 次に、信用力の向上というメリットもあります。上場企業となれば、従来、話を聞いてもらえなかった企業とも取引ができる、取引条件が有利になるといったことがあります。また、例え個人向けのサービスを提供している企業であっても、上場しているということは、個人に対して安心感を与えるうえで十分なアピールポイントになるでしょう。
③優秀な人材の確保
 また、人材の採用でプラスに働くことが多くなります。就職・転職に際して企業を選ぶことを想像していただければお分かりになると思いますが、上場企業であるということは、選ぶ際の重要な要素ではないでしょうか。実際に、上場したことで応募人数が急増したということは多々あります。人数だけではなく、能力の面でも「IPO前は優秀な人材は取れなかった」という話はよく聞く話です。
④組織的・計画的経営
 最後に、上場準備の過程では、上場企業にふさわしい経理管理体制の強化が求められます。これらは、企業にとっては、負担になる一方で、その実施を通じて、従来実施していなかった面から、経営基盤の強化が進み、経営体質がより一層強化されることになります。

 このようにIPOには様々なメリットがあります。では逆にIPOすること、つまりパブリックカンパニーになることにより、どのような負担があるのでしょうか。

IPOによるデメリット

 パブリックカンパニーになることのデメリット(=負担)として、一般的に次のようなものがあげられます。

①社会的責任の増大
 IPOを行うことで、一般株主が増加します。一般株主の関心は、株価の動向、配当水準等に向くため、株主をより意識した経営をしなければなりません。また、一般投資家が重要なステーク・ホルダーとなったことに伴い、より広範な責任を負うことになります。その責任を果たすために、コーポレート・ガバナンスを充実させ、タイムリー・ディスクロージャー体制の確立などをしなければなりません。
②上場準備にかかるコスト負担
 上場準備のためのコストは分かりやすい負担の例でしょう。企業の規模等によって異なりますが、概ね5千万円から1億円はコストがかかります。内訳としては、経営基盤の強化のための内部コスト、監査法人、外部コンサルタント、証券企業に支払う外部コスト等です。
③上場維持にかかるコストの負担
 IPOを果たした後にも、今度は上場を維持するためのコストがかかります。上場している企業は有価証券報告書や四半期報告書の作成・開示に加え、決算短信等の適時開示への対応も求められます。また、IPOに伴い株主数が大幅に増えるので、株主総会の規模も非上場企業のときと比べて大きくなる傾向にあります。それらの開示資料や株主総会の招集通知の作成・印刷代等にも多くのコストがかかります。
④コーポレート・ガバナンスの確立
 それ以外に、経営上の制約も多くなります。IPO前は、経営者が行っていた意思決定も所定の手続きに沿って行う必要があります。これは、従来、自由に決めていた経営者からすると、かなりの制約となります。

IPOはメリットと負担のバランス

 IPOにはメリットもありますが、一方で、負担あることがお分かりいただけたと思います。ベンチャー投資と関連したところでいうと、投資を実行する側は投資額とIPOによって得られるキャピタルゲインを比較し意思決定がなされると思います。それに加えて、IPOを行う会社自身のメリットとデメリットも十分に検討されるべきです。

プロフィール

公認会計士 大山 陽希(おおやま はるき)
大手監査法人勤務

著書等
  • これですべてがわかるIPOの実務(共著・中央経済社)
  • 株式公開ハンドブック(共著・中央経済社)
  • 新規上場実務ガイド(共著・中央経済社)
  • 会社を成長させる5つのアクション-経営管理体制の整備とIPO-(共著・中央経済社)

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