TKC全国会 中堅・大企業支援研究会(中大研)

掲載日:2014.01.27

ROE向上に向けたグローバル税務管理の奨め

第1回 今、改めて重要性が増しているグローバル税務管理

税理士・中小企業診断士 西村道浩

TKC全国会 中堅・大企業支援研究会会員
税理士・中小企業診断士 西村 道浩

グローバル展開する企業にとって、国際税務の知識は必須です。このコラムでは、海外進出から撤退の段階別に、関連する国際税務の個別論点を取り上げ解説いたします。

 アベノミクス等による最近の環境変化を受け、今、改めてグローバル税務管理の重要性が増しています。
 第1回は、ROE(自己資本利益率)と連結実効税率の関連性から、本社主導のグローバル税務管理が今後益々重要になることを確認しましょう。
 尚、本稿における"グローバル税務管理"とは、会社法や金融商品取引法上のディスクロージャー規制を受けるコーポレート本体に係る国際税務一般を対象とし、従業員の個人所得税や企業オーナーが保有する海外資産に係る国際相続、等の論点については対象外としています。

Ⅰ JPX日経インデックス400の導入によるROEへの注目の高まり

 本年1月6日、大胆な金融政策、機動的な財政出動に続く、アベノミクス成長戦略の第3の矢として、東証新指数『JPX日経インデックス400』(以下、『JPX400』)が資本市場から上場企業に向けて放たれました。
 JPX400は、従来の日本株の代表的指標である東証株価指数(以下、『TOPIX』)、日経平均株価とは大きく異なり、収益性・資本の効率性を重視しており、具体的には、3年平均ROE、3年累積営業利益、選定基準日時点の時価総額等に基づき点数が高い400社が構成銘柄とされています。
 下表の通り、東証1部の全ての銘柄が対象のTOPIXや、東証1部の各業種の代表銘柄から流動性等を考慮して225社が選定される日経平均株価においては、利益水準を選定基準としていないことから、日経平均株価に採用されている225社のうちJPX400に採用されなかった企業は73社もありました。

  JPX400 日経平均株価
(日経225)
東証株価指数
(TOPIX)
構成銘柄 東証1部386社・2部1社
マザース2社
ジャスダック11社
東証1部の225社 東証1部の全銘柄
選定基準 過去3年のROE
過去3年累積営業利益
直近の時価総額、等
東証1部の業種毎の代表
銘柄で流動性を考慮
東証1部に上場

 公的年金約120兆円を運用する巨大ファンドである年金積立金管理運用独立行政法人(以下、『GPIF』)がJPX400をベンチマークに採用すれば、民間の資産運用会社等がこれに追随する可能性も予想されますが、昨年11月に発表された"公的・準公的資金の運用・リスク管理等の高度化等に関する有識者会議"の最終報告書では、パッシブ運用(株価指数と連動した投資収益を目指す運用)のベンチマークについて、『より効率的な運用が可能となる指数を利用したりするなど検討すべき』と明記され、その具体例としてJPX400を挙げています。
 今後、JPX400が機関投資家のパッシブ運用のベンチマーク採用されることになれば、それに連動した金融商品も自ずと増え、新指数に採用された銘柄が買われるが、採用されなかった銘柄の購入が手控えられるなど、企業の株価形成に大きな影響を与える可能性が高いとみられています。

 つまり、JPX400が株式投資の尺度として普及することになれば、経営者に対する市場からの収益性引上げ(=ROE向上)の圧力がこれまで以上に高まることは必至と考えられます。

Ⅱ ROEの向上に不可欠な連結実効税率の低減

 次のグラフは、我が国の代表的産業に分類される東証上場企業の中から11社を選定し、過去3期の単純平均ROEと単純平均連結実効税率の分布を示したものですが、連結実効税率が低い企業はROEが相対的に高いことがわかります。

ROEと連結実効税率の関連性

 ここでデュポン・システムによるROEの分解式を若干修正した分解式をもとに、ROEの向上に向けた方策について検討します。

ROEの分解式

 この分解式によれば、ROEを高めるには、他の条件を一定として、

  1. ①売上高純利益率を高める
  2. ②総資本回転率を高める
  3. ③財務レバレッジを高める

という3つの方法があり、そのためには、不採算事業からの撤退や成長に向けての事業再編成、積極的な海外進出などの抜本的な事業革新が必要となります。
 上述の算式の最右項部分("1 - 連結実効税率")に注目すると、ROEは税引後当期純利益をもとに算定されるため、いかに抜本的な事業革新等で上記①~③を効率的に高めたところで、連結実効税率が高ければその効果が圧縮されてしまい、期待通りのROEの向上は望めないことがわかります。上述の①~③については、経営戦略や事業戦略の策定プロセスにおいて綿密に検討・実行されますが、このプロセスにおいて連結実効税率への影響まで検討されているケースはあまり多いとは言えません。

Ⅲ 本社主導によるグローバル税務管理の重要性

 JPX400の構成銘柄の過去3期の単純平均ROEは約11%で、東証全銘柄の約6%と比較してかなり高くなっています。今後はJPX400を意識した2ケタのROEを目指した経営を期待する声が機関投資家などから起こることが予想されます。他方、JPX400に採用されなかった企業(特に、日経平均株価に採用されながらJPX400に不採用となった73社)は、400社入りを目指し経営改革を進めると見られています。繰り返しになりますが、その際に上述のⅡ①~③に加えてKeyとなるのが、連結実効税率の低減です。
 一方で、近年は事業環境の複雑化に伴って税の問題も複雑化しており、事業をグローバル展開している企業は、日本の税金だけでなく国境を越えた諸外国の税金の問題も絡み、税の問題は益々複雑になっています。本社主導で連結実効税率の低減に向けた日本と海外の税金の一元管理を行わなければ、連結実効税率の低減は困難です。ROEの向上が至上命題となりそうな日本企業にとって、"本社主導による継続的なグローバル税務管理"は今後益々重要になるでしょう。

 次回より、海外進出から撤退までの各段階で、我が国の企業が留意すべき国際税務の個別論点について、具体的な検討や解説を行っていきます。

引用

  • 公的準公的資金の運用・リスク管理等の高度化等に関する有識者会議の平成25年11月報告書
  • 2013年11月6日版JPX日経インデックス400算出要領

プロフィール

税理士・中小企業診断士 西村 道浩(にしむら みちひろ)
TKC全国会 中堅・大企業支援研究会会員

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西村&パートナーズ総合会計事務所

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