「包括利益」の論点整理

第5回 その他包括利益項目の注記

更新日 2011.05.09

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公認会計士 中田 清穂
TKCシステム・コンサルタント

公認会計士 中田 清穂

2011年3月期から適用になる「包括利益基準」で作成する財務諸表そのものが変わります。このコラムでは、「包括利益」について、形式的な実務対応よりも、本質的に理解し納得できるようになるための解説をします。

 前回(第4回)では、「その他包括利益」項目の包括利益計算書への計上額について解説しました。

 今回は、平成24年3月31日以後終了する連結会計年度の年度末に係る連結財務諸表から適用対象となる、「その他包括利益」項目に関する注記による開示内容について解説します。3月決算の企業では、今年度末からの適用になります。

 包括利益基準の適用初年度である、平成23年3月31日以後終了する連結会計年度の年度末に係る連結財務諸表に、注記事項まで適用させることは、実務上の負担が大きいとの配慮から、注記事項の適用を1年遅らせることになったものです。

 なお、連結財務諸表を作成している企業の個別財務諸表や四半期報告書では、注記の必要はありません。

 年次決算における連結財務諸表で注記する必要があるのは、以下の2つの項目です。

  1. 組替調整額(当期純利益を構成する項目のうち、当期又は過去の期間にその他の包括利益に含まれていた部分) →各内訳項目別に注記(第9項)
  2. その他の包括利益の税効果の金額 →各内訳項目別に注記(第8項)

 以下、今回も前回の第4回と同様に、包括利益基準の「設例2 親会社及び子会社がその他有価証券の一部を売却した場合」の数値と開示例を利用して、「その他有価証券評価差額金」の期中増減額の動きと「その他包括利益」項目に関する注記による開示内容の関係を結びつけて解説します。

 前回の第4回で作成した合算表と同じものを利用します。

合算表

1.組替調整額の注記事項を作成する

 合算表の「評価損益」行の数値で、以下のように注記事項を作成します。

組替調整額の注記事項を作成する

2.その他の包括利益の税効果の注記事項を作成する

 合算表の「純増減」列の数値で、以下のように注記事項を作成します。

その他の包括利益の税効果の注記事項を作成する

 結局、合算表さえ作成できれば、「その他包括利益」項目の注記情報の開示も難しいものではなくなるでしょう。

筆者紹介

公認会計士 中田清穂 (なかた せいほ)
TKC全国会中堅・大企業支援研究会 顧問
TKC連結会計システム研究会・専門委員

著書
『内部統制のための連結決算業務プロセスの文書化』(中央経済社)
『連結経営管理の実務』(中央経済社)
『SE・営業担当者のための わかった気になるIFRS』(中央経済社)

ホームページURL
有限会社ナレッジネットワーク http://www.knowledge-nw.co.jp/

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