更新日 2011.04.01
TKCシステム・コンサルタント
公認会計士 中田 清穂
災害による決算発表や報告書の期限延長に関する解説や、決算短信や有価証券報告書での記載事例を解説します。
今回は、平成16年10月23日に発生した新潟県中越地震の際に、平成16年9月30日に終了する中間決算について、三洋電機(株)が作成した半期報告書から、重要な後発事象の注記について、解説したいと思います。
以下の開示例の内容を整理すると以下のような項目が記載されています。
<第1段落>
- 災害の発生日時:平成16年10月23日
- 災害の名称:新潟県中越地震
- 災害発生事業所名:新潟三洋電子㈱
- ③のグループ内の位置づけ:当社グループの半導体事業の中核をなす連結子会社
- ③の事業内容:BIP-LSI、MOS-LSIの前工程の製造
- 被害の概要と現状:重大な被害を受け操業を停止
<第2段落>
- 具体的な被害状況:地震による製造装置の移動によるユーティリティーの破損やウエハー洗浄工程における塩素ガスの発生に伴う製造装置の汚損等が中心
- 現在までの取り組み:ユーザーへの製品供給を最優先に順次製造設備の復旧作業、及び他の生産拠点での代替生産に全力を挙げて取り組んでいる
- 現時点での被害の見積り:全体の被害総額(復旧費用を含む)を見積ることは未だ困難な状況にある
<第3段落>
- 当面の見通し:同社の操業停止による影響を最小限に留めるべく対処しているが、当下期以降、復旧費用を含む設備関係の被害を中心に影響が顕在化し、当社グループの半導体事業全体における収益の悪化が見込まれる
- 財政状態及び経営成績に与える影響:現時点では、当社グループの財政状態及び当下期以降の経営成績に与える影響を測ることは困難
<参考情報>
主要な被災資産の被災前の簿価と年間生産高
以上が、開示内容の概要になります。
とくに最後に開示されている「参考情報」が重要です。
第2段落で被害総額が見積もれないとし、第3段落で財政状態及び経営成績への影響は測定できないとしながらも、おおよその影響度について財務諸表利用者の判断のための情報の一つとして、被災前の状況を開示しています。
以下が、実際の開示内容になります。
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三洋電機株式会社 中間報告書
第81期(自 平成16年4月1日 至 平成16年9月30日)
第5【経理の状況】
1【中間連結財務諸表等】
(中間連結財務諸表注記)
11.重要な後発事象
平成16年10月23日に発生した新潟県中越地震により、当社グループの半導体事業の中核をなす連結子会社である新潟三洋電子㈱(BIP-LSI、MOS-LSIの前工程の製造)が重大な被害を受け操業を停止している。
具体的な被害状況は、地震による製造装置の移動によるユーティリティーの破損やウエハー洗浄工程における塩素ガスの発生に伴う製造装置の汚損等が中心である。現在、ユーザーへの製品供給を最優先に順次製造設備の復旧作業、及び他の生産拠点での代替生産に全力を挙げて取り組んでいるが、全体の被害総額(復旧費用を含む)を見積ることは未だ困難な状況にある。
同社の操業停止による影響を最小限に留めるべく対処しているが、当下期以降、復旧費用を含む設備関係の被害を中心に影響が顕在化し、当社グループの半導体事業全体における収益の悪化が見込まれるが、現時点では、当社グループの財政状態及び当下期以降の経営成績に与える影響を測ることは困難である。
<参考>
被災した新潟三洋電子㈱が保有する主な資産の平成16年9月30日現在の帳簿価額は次のとおりである。(損害額を示すものではない。)
主要な被災資産 保有資産の帳簿価額
棚卸資産 7,885百万円
建物 31,741百万円
機械及びその他 30,922百万円
また、同社の2003年度の年間生産高は48,092百万円であった。
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以上です。
なお、本コラムの第3回から第8回で取り上げた、三洋電機株式会社の開示資料は、以下のURLで閲覧できます。
http://sanyo.com/ir/jp/library/financialreports.html
本文は有限会社ナレッジネットワーク社ホームページの『カレントトピックス(災害時の開示)』に掲載された記事の転載となります。
筆者紹介
公認会計士 中田清穂 (なかた せいほ)
TKC全国会中堅・大企業支援研究会 顧問
TKC連結会計システム研究会・専門委員
著書
『内部統制のための連結決算業務プロセスの文書化』(中央経済社)
『連結経営管理の実務』(中央経済社)
『SE・営業担当者のための わかった気になるIFRS』(中央経済社)
ホームページURL
有限会社ナレッジネットワーク http://www.knowledge-nw.co.jp/
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