TKC全国会 中堅・大企業支援研究会(中大研)

掲載日:2011.03.28

連結納税制度への対応のポイント

第10回 最後に-2つの追加的説明(電子申告・自己創設営業権の時価評価)

税理士・公認会計士 中野伸也 TKC全国会中堅・大企業支援研究会 副代表幹事
税理士・公認会計士 中野伸也
連結納税制度適用の有利・不利判定や、連結納税の承認の申請書の書き方から、連結納税制度適用後の組織再編、子法人のフォローアップ、また、電子申告の実践、タックスプランニングの実行にいたるまで、連結納税制度への対応ポイントを解説します。

1.電子申告

まだ電子申告を経験していない方には、その便利さと業務の合理化程度が実感しづらいでしょうが、申告書作成からシームレスにつながる電子申告システムは、申告業務の最終部分を驚くほど簡単にしてしまいます。

申告書の編綴作業(連結納税では全子法人の別表も含めることになるので、大きくないグループでもこれだけで数百枚以上になる)と地方税申告書の自治体ごとの作成と郵送から解放されます。特にTKCの税務システムは、全都道府県、全市町村の税率データベースを持っているので、地方税の申告書については事業税以外ほとんど追加入力なしで作成できます。そのため、大規模な会社ほどTKCシステムと電子申告のメリットを実感することができます。

しかしながらe-Taxには、「連結納税申告書の送信について」としてシステムのパフォーマンス等を考慮し、1送信当たりの受信可能容量に制限値(データサイズが10MB以内、かつ帳票枚数が5,000枚以内)を設けています。連結法人数が多い場合には、この制限値を超える可能性もありますので、連結申告書のe-Tax対応に当たっては、事前にお問い合わせください、と注意書きが記載されています。

当初のシステム開発時には全データの電子申告をということで、連結納税電子申告2年目には子会社の財務諸表のXBRL変換や勘定科目内訳書も電子申告データとして作成するシステムをリリース一歩手前まで作り上げていました。ところが最初の年の連結納税の電子申告が思った以上のボリュームになったせいなのか、送受信に手間取り、上記の制限がついてしまいました。子会社の財務諸表や科目内訳書まで含めると、ちょっと大きな連結グループであればデータ量が上記の制限を簡単に超えてしまいます。ということで、今もって連結納税電子申告システムでは法人税別表と地方税申告書(こちらはPDFファイル等で財務諸表等の必要資料を添付できます)しか伝送できない仕様になっています。

2.自己創設営業権の時価評価-再考

このコラムの第4回で、自己創設営業権は時価評価する必要がないのではないかという私見を書きました。これについては、いろいろとご意見をいただきました。過程を省略した書き方になっていましたので、若干の追加説明をさせていただきます。

連結納税加入時の時価評価が、それまで単体納税を行っていた納税主体の連結納税を行っている他の納税主体への統合に伴うものである以上、その時価評価は基本的には非適格合併等における時価評価と基本的に同性質のものではないかと、私は考えています。 

非適格合併等では、従来は「営業権」と捉えられてきたもののほとんどが「資産調整勘定」(法法62条の8①)となり、税務上「営業権は独立した資産として取引される慣習のあるもの」(法令第123条の10第3項)に限定されています。またこの規定の中では「負ののれん」=負債調整勘定(法法62条の8②③)が計上される場合もあります。

連結納税加入時の営業権の時価評価もこれに準じて買収差額をもって行うとすると、時価評価において資産の評価損は認められますから、この負ののれんも評価計上すべきことになります。しかし、負債についての時価評価の規定はありませんし、税法はマイナス残高の資産も認めていないと思われるので、負債調整勘定に準じて負の営業権を時価評価することはありません。とすると「資産調整勘定」のほうだけ計上するのは、理論的におかしいのではないかということです。

ベンチャー企業を買収して連結納税に加入させたときには、上記の方法でも「資産調整勘定」相当の営業権が計上されるだろうし、想定される将来収益を基とした収益還元価値法により営業権を算定し、計上することも考えられます。しかし、これでは赤字会社について、自己創設営業権を計上し、持ち込めない繰越欠損金を持ち込むことになってしまいます。これは明らかに納税者にとって有利な方法ですので、税務当局がこれをすんなりと認めるとも思えません。また何年か後の税務調査時点で、想定した収益が上がっていなかったならば、当然、その営業権計上を否認するでしょう。

このように、自己創設営業権の時価評価については、納税者は税額が低くなるほうに、税務当局は納税額が大きくなるほうに互いに主張しあうことが可能な状況です。とすると「営業権は独立した資産として取引される慣習のあるもの」に限定したうえで、「資産調整勘定」等に含まれるような営業権は考慮しないとしたほうが、問題が少ないのではないかというのが、現状での私の考えです。どちらにせよ、連結納税加入時に営業権を時価評価すべきか否か、評価するとすればその評価方法などについて何らかの規定が定められない限り決着のつかない問題です。

3.最後に

平成22年改正により始まった本格的なグループ税務の時代に、少しでもお役に立つことができればと、この連載を開始しました。

連結納税が企業グループにとって節税だけではなく、グループ管理としても有効な手段であり、適切なツールを選択し、入念な準備を行えば、結果的にそれほどの負担増加にはならないし、最終的にはメリットのほうがはるかに大きいということを幾分かでも伝えることができたでしょうか。

わずかでも連結納税を採用するときのご参考になれば幸いです。

筆者紹介(中野伸也)

税理士・公認会計士 中野伸也(なかの しんや)

TKC全国会中堅・大企業支援研究会 副代表幹事
TKC連結納税システム推進プロジェクト会員
TKC企業グループ税務システム小委員会委員長

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中野会計事務所

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