TKC全国会 中堅・大企業支援研究会(中大研)

掲載日:2010.12.06

連結納税制度への対応のポイント

第3回 連結納税制度導入までのスケジュール

税理士・公認会計士 中野伸也 TKC全国会中堅・大企業支援研究会 副代表幹事
税理士・公認会計士 中野伸也
連結納税制度適用の有利・不利判定や、連結納税の承認の申請書の書き方から、連結納税制度適用後の組織再編、子法人のフォローアップ、また、電子申告の実践、タックスプランニングの実行にいたるまで、連結納税制度への対応ポイントを解説します。

前回の連結納税の有利・不利判定に続き、連結納税採用の意思決定から、実際に連結納税事業年度開始までのスケジュールについて説明します。

連結納税採用決定後の連結納税事業年度開始までのイベントとしては次のようなことが挙げられます。

  1. 連結納税の承認の申請書の作成、提出
  2. 単体最終事業年度の決算業務の構築(監査法人との事前協議を含む)
  3. 税効果会計システムトライアルと検証実施
  4. グループ各子会社への連結納税制度の説明、決算業務、申告業務への影響等の説明

以下、順次説明していきます。

1.連結納税の承認の申請書の作成、提出

連結納税の適用を受けようとする親法人とその100%子法人は、連結納税を始めようとする事業年度開始の日の3か月前の日までに、連結納税の承認の申請書を連結納税グループに加わる全法人の連名で、親法人の納税地を所轄する税務署長を経由して国税庁長官に提出し、承認を受けなければなりません。連結納税の承認の申請書作成時の注意点として、以下のような事項があります。

  1. 連結納税グループに入るべき法人が漏れていたり、逆に連結予定法人以外の法人が含まれていた場合には、申請却下事由になります。連結会計の対象外となっているが、連結納税グループに含まれる小規模な子会社、孫会社に注意が必要です。
  2. 申請書には連結納税グループ内の全法人の代表者の記名捺印が必要です。充分な余裕ときちんとした管理がないと間に合わなくなる恐れがあります。
  3. 申請書には、出資関係図とグループ一覧表の添付が必要です。

連結子法人は、連結納税の承認の申請書提出後遅滞なく、連結納税の承認の申請書を提出した旨の届出書を各所轄税務署長あてに提出しなければなりません。この届出書にも、上記(3)の出資関係図とグループ一覧表を添付します。

さらに地方税の手続きとして、連結納税グループの各法人は、各地方公共団体の条例により定められた連結納税制度を開始した旨の届出書を、連結納税開始の日から定められた期間内(例えば東京都では15日以内、大阪府では10日以内)に都道府県、市町村に提出する必要があります。この届出書には、連結親法人であれば「連結納税の承認の申請書(初葉)」の写しを、子法人であれば「連結納税の承認の申請書を提出した旨の届出書」の写しを添付します。

連結納税の承認の申請書の記載例については、下記をご参照ください。

連結納税の承認の申請書の記載例|TKC連結納税システム(eConsoliTax®)

2.単体最終事業年度の決算業務の構築(監査法人との事前協議を含む)

問題は、連結納税開始直前事業年度においては単体申告ではあるが、税効果計算では、連結納税を前提としての計算になるということです。したがって、連結納税開始前に連結納税を前提とした決算体制を構築しなければなりません。

まず、以下の事項について検討し、決算対応方針を策定します。

  1. 決算時点で、連結納税を前提とした税額計算、税効果計算を行う範囲をどこまでにするかを連結納税対象会社と連結決算対象会社とで調整する。
  2. 四半期決算での税金計算を原則法で行うか、簡便法で行うか
  3. 連結納税ベースでの税効果計算における一時差異の確認。特に、連結納税加入時に時価評価法人がある場合の時価評価による一時差異の取扱いをどうするか、繰り延べ税金資産の回収可能性の判断基準にどのような影響があるか。

以上については、監査法人との事前の打ち合わせが必要です。打合せの中で、上記の各点についての認識を監査法人と共有し、どのようなシステムによって計算を行うのかを理解してもらいます。連結納税導入による監査要点の変更や、必要監査資料について認識しておけば、具体的な決算業務体制の中にあらかじめ組み込むことができます。

次に、決算対応方針に基づいた具体的な決算業務体制を構築します。ポイントは次の3点です。

  1. 効率的な決算スケジュールの策定
    決算スケジュールがタイトになるため、詳細なスケジュール(データ入力締め日時、 全体計算、個別帰属額フィードバック予定日時等)を作成し、手戻りのない業務構築が 必要です。
  2. 各社のデータ精度向上の仕組み構築
    上記のスケジュール厳守のため、処理方法を標準化し、業務マニュアルやチェックリ ストを策定・活用することが必要です。各社でチェックリスト等により自社データを検 証する仕組みを作り上げれば、親法人のチェック業務の負担が軽減されます。
  3. 子法人のサポート体制、進捗状況管理体制の構築
    入力について疑問が生じた場合などに質疑応答ができる体制を作ること、親法人が各 子会社の進捗状況を常にウオッチできるシステムになっていること、各社の連絡窓口が 明確になっていて、グループ全体の進捗が管理できるようになっていることが重要です。

3.税効果会計のシステムトライアルと検証実施

システムを利用して連結納税開始直前事業年度の税額決算・税効果計算を行う場合は、親会社と主たる子会社数社について、本番前に過去のデータを利用して、システムに入力し、計算結果が想定通りになるかを検証しておきます。

これによりシステム入力のための必要データや誤りやすい点、グループ全体でのマスター項目として必要な内容、入力のための必要工数など、本番に向けた課題点の抽出と対応策を検討する基礎データとします。これを、上記2のマニュアルやチェックリスト策定、子会社説明会での説明ポイントに生かしていきます。

4.グループ各子会社への連結納税制度の説明、決算業務、申告業務への影響等の説明

新規に連結納税を採用した場合、子会社説明会は最低2度開催することが必要です。

1度目は、連結納税採用についての説明です。これは、連結納税の承認の申請書作成のための説明会も兼ねますので、決算時期から5~6か月前には行います。ここでは、連結納税採用の理由と連結納税の概要を解説し、各会社の協力なしには税務申告ができないことを説明して業務への協力を依頼するとともに、決算から申告までの大まかなスケジュールを説明します。

また、時価評価法人がある場合、何をどのように時価評価すべきかは本社の税務部門の責任であり、その法人へのサポートは別に考慮する必要があります。したがってこの時までに、時価評価法人と時価評価方法を一応決めておかなければなりません。

2度目の子会社説明会は、決算業務の詳細かつ具体的なスケジュール説明と、税金計算・税効果システムの使用方法の説明会です。一般的には決算の1~2か月前に行います。この時の説明会は、決算業務そのものの制度とスピードを左右する重要なものです。充分な時間と資料をそろえて開催する必要があります。

筆者紹介(中野伸也)

税理士・公認会計士 中野伸也(なかの しんや)

TKC全国会中堅・大企業支援研究会 副代表幹事
TKC連結納税システム推進プロジェクト会員
TKC企業グループ税務システム小委員会委員長

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中野会計事務所

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