TKC全国会 中堅・大企業支援研究会(中大研)

掲載日:2010.10.25

グループ法人税制への対応のポイント

第5章 改正が与える税効果会計への影響

税理士・公認会計士 中野伸也
税理士・公認会計士 妙中茂樹

はじめに

本章では、先に言及した連結納税採用によるブックメリット(税効果による会計上のメリット)について、具体例をもとに説明する。また、今回の税制改正による税効果会計への影響について考える。

連結納税による税効果への影響

(1) 連結納税のブックメリット

ブックメリットを簡単な例で説明する。

単体納税(グループ法人税制)で決算状況は毎年図表1のようであるとする。

図表1 単体納税での決算状況
図表1 単体納税での決算状況

A社に関しては持株会社で毎年赤字なので、欠損金の回収可能性はなく、繰延税金資産の計上は認められない。これが連結納税になると図表2のようになる。

図表2 連結納税採用後の決算状況
図表2 連結納税採用後の決算状況

A社は繰越欠損金を含めた赤字分の税額をB社から回収することになり、グループ全体での連結納税によるメリットは税額39ということになる

繰越欠損金の残額300について、このままの業績であった場合には毎年100ずつ欠損金の控除が可能で、3年で欠損金に該当する税額が回収できることになり、繰越欠損金300に対する繰延税金資産90を計上することができる。したがってA社グループは、連結納税を採用することによりその初年度において、単体納税に比べて会計上の税金費用を129(=39+90)抑えることができる可能性があることになる。

グループ全体の所得が100の法人が、連結納税採用で129ものメリットを受ける可能性があるということは、非常に大きなインパクトを経営に与えることになる。税額39に相当するタックスメリット、つまりキャッシュ・フローの改善だけでも大きな影響であるが、それ以上の大きな利益インパクトをもたらすということである。

単体申告では回収不能と思われた巨額な繰越欠損金、減損処理による巨額な一時差異なども、グループ全体で黒字であれば連結納税を採用すると回収可能となり、対応する繰延税金資産を計上することが可能になる。(図表3参照)

図表3 変わる回収可能性の判断
図表3 変わる回収可能性の判断
(2) 連結納税での税効果に対する税制改正の影響

今回の税制改正で、子会社の繰越欠損金を一定の限度内でとはいえ持込み可能となった。多額の繰越欠損金があり、欠損金を回収可能なほどに黒字転換した子会社について、従来は連結納税を採用すると欠損金が切り捨てられるので多額の繰延税金資産を取り崩す必用があったが、今回の改正で繰延税金資産を取り崩す必用はなくなったといえる。

持込み可能となった欠損金(特定連結欠損金)の控除額は、その会社の調整前所得金額を限度とするので、法人税に関する繰延税金資産の回収可能性の判断は、グループ全体の利益水準だけでなくその会社の利益水準にも影響されることになる。たとえば、「繰延税金資産の回収可能性の判断に関する監査上の取扱い」(監査委員会報告66号)での例示区分3以下の会社である場合は、5年以内のその会社の所得見積額、あるいは翌年1年間の所得見積額を限度とした繰延税金資産しか計上できない。

しかしながら欠損金の控除は特定連結欠損金から優先して行うのではなく、原則として古い期の連結欠損金から控除することになるので、法人税の回収可能性の判断においては全体の利益水準がまず優先されることになる(図表4参照)。したがって、実際の計算は若干複雑にはなるが、現行の実務対応報告第5号および第7号の記述からはずれるものではないと考える。なお7月上旬には、今回の税制改正に対応した実務対応報告の改訂がASBJから公表される予定になっているので、詳しくはそちらを参照していただきたい。

図表4 連結納税制度ベースの税効果会計の適用
図表4 連結納税制度ベースの税効果会計の適用

グループ税制による税効果会計への影響

今回のグループ法人税制導入、清算所得課税廃止により、従来なかった一時差異が発生することとなった。それらの一時差異と考えられるものを列挙し、税効果会計における取扱いについて考えてみる。

(1) グループ法人間取引の資産譲渡損益の繰延べ

グループ内において一定の資産を移転したことにより生じる譲渡損益が繰り延べられることとなった。この繰延損益は個別財務諸表固有の一時差異に該当する。この差異は連結納税のもとでもあったもので、その取扱いは実務対応報告5号のQ5の記載どおりである。個別財務諸表では繰延税金資産(負債)を認識するが、連結財務諸表では課税されていない未実現損益なので消去され、繰延税金資産(負債)も消去される。

(2) グループ内寄附金

グループ内寄附金は損金の額に算入せず、受けた側も益金の額に算入しない。しかしながら、寄附金を支出した会社、受け取った会社の直接の親会社はそれぞれの会社の税務上の簿価を修正しなければならない。この簿価修正は会計上行われないのでここに一時差異が生じる。この一時差異については連結納税における投資簿価修正に類似したものと考えられるので、実務対応報告7号Q6に準じて処理することとなるだろう。したがって、その子会社株式が「予測可能な将来、譲渡される可能性が高い」と認識されるまでは税効果対象の一時差異とは認識しない。

(3) 子会社の解散

子会社を解散した場合、従来は損金算入が認められていた子会社整理損が資本等取引とされた。会計で計上された子会社整理損は税務上否認され、同額が資本金等の減少額に振り替えられる。このため、従来は子会社解散時点で計上し税務上否認し、残余財産確定時に損金認容していた子会社整理損が一時差異に該当しないこととなる。また第4章での設例でも明らかなように、別表5の利益積立金欄に一時差異に該当しない子会社整理損(資本金等の額振替額)が永久に残ることになる。

しかしながら、青色欠損金は親会社が引き継げることとなったので、親会社の利益水準にもよるがこの欠損金に対する繰延税金資産が計上されることになる。

本文は『旬刊経理情報(6月1日号No.1249)』に掲載された記事の転載となります。

筆者紹介(中野伸也)

税理士・公認会計士 中野伸也(なかの しんや)
TKC連結納税システム推進プロジェクト会員
TKC企業グループ税務システム小委員会委員長

ホームページURL
中野会計事務所

筆者紹介(妙中茂樹)

税理士・公認会計士 妙中茂樹(たえなか しげき)
TKC連結納税システム推進プロジェクト会員
TKC企業グループ税務システム小委員会委員

著書
『会社の税金 実務必携』(共著、清文社)

ホームページURL
妙中公認会計士事務所

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