TKC全国会 中堅・大企業支援研究会(中大研)

掲載日:2010.10.18

セグメント情報作成の留意点

第2回 気づかぬうちに開示させられる「セグメント別キャッシュ・フロー」

公認会計士 中田 清穂 TKCシステム・コンサルタント
公認会計士 中田 清穂
四半期ではすでに開示されている新セグメント情報ですが、まだ混乱し誤解している企業もあるようです。また年次決算でのみ開示すべき項目もあります。このコラムでは、間違いやすいポイントについて解説します。

「セグメント基準」の中で理解が難しい条文の一つに第21項があります。

「セグメント基準」の第21項は、以下の内容の文章から始まります。

報告セグメントの利益(又は損失)及び資産の額の算定に含まれている場合、あるいは事業セグメント別の情報が別の方法で最高経営意思決定機関に定期的に提供され、使用されている場合に開示が求められる項目

まず、文頭の「報告セグメントの利益(又は損失)及び資産の額」の意味です。

これは、第19項にて、各企業で決定した「利益」や「資産」の額のことです。

したがって、第19項の利益として、「営業損益」を報告セグメントの利益として決定した場合には、第21項の「報告セグメントの利益」は営業利益になるのです。つまり、第19項の利益が決まれば、自動的に第21項の利益も決まるのです。

それから、後段の「あるいは」以下にある「別の方法で」というのは、「第19項の利益や資産の報告とは別に」という意味です。

たとえば、役員会資料で役員が注視している管理単位別の利益が、仮に営業利益であっても、その資料の脚注や別のページで、管理単位別に発生した利息費用や特別損益が記載されていれば、その項目ごとに、報告セグメント別の開示が必要になります。

そして、第21項では、開示すべき損益に関する項目として、以下の項目をあげています。

1 外部売上高
2 セグメント間売上高
3 減価償却費
4 のれんの償却費
5 受取利息及び支払利息
6 持分法投資損益
7 特別損益
8 税金費用(法人税等調整額を含む)
9 1から8に含まれていない重要な非資金損益項目

第19項の利益を「営業利益」にした会社は、少なくとも「1」から「4」までは、報告セグメント別に開示することになります。

なぜなら、役員会資料で営業損益を管理数値としているのであれば、「1」から「4」までの項目は、管理単位別の営業損益に含まれているはずだからです。

さらに、管理単位別の営業損益に「3 減価償却費」や、「4 のれんの償却費」以外の非資金損益項目が含まれている場合には、9の「1から8に含まれていない重要な非資金損益項目」に該当しますので、これらも、報告セグメント別に開示することになります。

たとえば、貸倒引当金繰入額などの引当金関連科目や、低価法による製品低価評価損などの資産評価関連科目が、売上原価や販売費および一般管理費に含まれている場合です。

このような項目の開示に何の意味があるのでしょうか。

実は、これこそ「セグメント別キャッシュ・フロー」の開示にほかならないのです。

  1. 第19項で、営業損益をセグメント別に開示して、
  2. 第21項で、その営業損益に含まれる重要な非資金損益項目を開示すれば、

財務報告の利用者は、(1)に(2)することで、セグメント別に「営業活動からのキャッシュ・フロー」を手元で計算できるでしょう。

もし第19項の資産について開示可能で、第21項の「資産に関連する項目」も開示することになれば、「営業活動からのキャッシュ。フロー」にこれを加味して、セグメント別のフリー・キャッシュ・フローまでも計算できてしまうのです。

セグメント別にキャッシュ・フローを開示しろと、はっきりとした表現はどこにもないのですが、結果的に「セグメント別キャッシュ・フロー」を開示させられる条文なのです。

筆者紹介

公認会計士 中田清穂 (なかた せいほ)
TKC連結会計システム研究会・専門委員

著書
『内部統制のための連結決算業務プロセスの文書化』(中央経済社)
『連結経営管理の実務』(中央経済社)
『SE・営業担当者のための わかった気になるIFRS』(中央経済社)

ホームページURL
有限会社ナレッジネットワーク http://www.knowledge-nw.co.jp/

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