セグメント情報作成の留意点

第1回 セグメント情報と関連情報の関係

更新日 2010.10.04

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公認会計士 中田 清穂

TKCシステム・コンサルタント
公認会計士 中田 清穂

四半期ではすでに開示されている新セグメント情報ですが、まだ混乱し誤解している企業もあるようです。また年次決算でのみ開示すべき項目もあります。このコラムでは、間違いやすいポイントについて解説します。

企業会計基準第17号「セグメント情報等の開示に関する会計基準」(以下、本コラムでは「セグメント基準」といいます)の第29項では、以下のように規定されています。

企業は、セグメント情報の中で同様の情報が開示されている場合を除き、次の事項をセグメント情報の関連情報として開示しなければならない。
当該関連情報に開示される金額は、当該企業が財務諸表を作成するために採用した会計処理に基づく数値によるものとする。
(1) 製品及びサービスに関する情報(第30項参照)
(2) 地域に関する情報(第31項参照)
(3) 主要な顧客に関する情報(第32項参照)
なお、報告すべきセグメントが1 つしかなく、セグメント情報を開示しない企業であっても、当該関連情報を開示しなければならない。

この第29項を正しく理解する最初のポイントは、「セグメント情報」と「関連情報」の二つをきちんと区別できるようにすることです。

この区別ができなければ、関連情報の開示を間違えてしまいます。

言うまでもありませんが、開示の間違いが2011年4月以降に発覚すると、修正再表示という遡及処理を行うことになるので、軽く見ていてはいけません。

セグメント基準の目次を見ればすぐにわかることですが、「セグメント情報」と「関連情報」は、章立てが別になっています。

「セグメント情報」については、第6項から第28項までに記載されています。

「関連情報」については、第29項から第32項までに記載されています。

先に示した第29項の「セグメント情報の中で同様の情報が開示されている場合」とは、第29項の(1)から(3)までの情報が、第28項までの「セグメント情報」として開示されている場合のことです。

第28項までの「セグメント情報」とは、
役員会資料などで経営者が管理単位としている「事業セグメント」を基礎として、
役員会資料などで経営者が経営指標としている利益や資産を、
役員会資料などで経営者がウォッチしている金額をベースにしている
「報告セグメント」の情報です。まさに「マネジメント・アプローチ」に基づく情報です。

結局第29項は、製品・サービスに類する単位を「事業セグメント」としていれば、第29項の「(1) 製品及びサービスに関する情報」は開示しなくても良いのです。

また、地域別の情報を「事業セグメント」としていれば、第29項の「(2)地域に関する情報」は開示しなくても良いのです。

次のポイントは、関連情報の金額です。

第29項の二つ目の文章には、「当該関連情報に開示される金額は、当該企業が財務諸表を作成するために採用した会計処理に基づく数値によるものとする。」とあります。

これは、「セグメント情報」の金額が、「役員会資料などで経営者がウォッチしている金額」つまり「管理会計上の金額」であるのに対して、「関連情報」の金額は、「管理会計」の金額ではなく、「制度会計」と整合性のある金額にしなければならないことを意味しているのです。

つまり「関連情報」の開示は、マネジメント・アプローチではないのです。

マネジメント・アプローチは、管理会計の情報で開示するため、企業間比較ができなくなるという短所を持ちますが(第48項)、関連情報の開示は、制度会計ベースの開示をさせて、企業間比較をある程度できるようにすることで、マネジメント・アプローチの短所を補っているのです(第55項)。

筆者紹介

公認会計士 中田清穂 (なかた せいほ)
TKC連結会計システム研究会・専門委員

著書
『内部統制のための連結決算業務プロセスの文書化』(中央経済社)
『連結経営管理の実務』(中央経済社)
『SE・営業担当者のための わかった気になるIFRS』(中央経済社)

ホームページURL
有限会社ナレッジネットワーク http://www.knowledge-nw.co.jp/

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