TKC全国会 中堅・大企業支援研究会(中大研)

掲載日:2010.09.27

グループ法人税制への対応のポイント

第3章 グループ法人税制・連結納税制度適用の着眼点(1/2)グループ法人税制・連結納税制度導入の実務上のポイント

税理士 畑中孝介
税理士 岡田淳

グループの範囲についてのポイント

グループの範囲については、連結納税の際にも大きく問題となる点ではあるが、連結会計におけるグループの範囲とは異なる部分があるので注意が必要である。

税務における完全支配関係としては、発行済み株式の100%を直接・間接合計で保有しているかどうかがポイントになる。連結会計の場合には、重要性の原則等を適用し重要性のない子会社を適用除外とする場合もあるようだが、税務の場合にはそのような除外規定がないので、重要性がない等連結会計グループから除外されているような子法人について税務での連結範囲に含まれているか注意が必要である。特に、連結会計グループから除外されている子法人は、申告書の精度や税務知識が低い場合も多く、事前に存在やレベルを把握し実際の申告時点でグループの足かせとならないように指導・研修等を行う必要がある。

また、税務においては現行では議決権については勘案されていないため、無議決権株式についても除外せずに保有割合を計算する必要がある。また、連結納税・グループ法人税制ともに従業員持株会及びストック・オプション(役員・従業員)によって保有される株式が5%未満である場合、それを除いて100%かどうかで判定することになっている。(法令4②二)

グループ法人税制においては、外国法人・個人(6親等の親族等の範囲)・個人および特殊関係人に支配されている法人も含まれるため、連結納税よりさらに範囲が広範なものとなる。

決算期の統一化

グループ法人制度においては単体申告をベースにしているため決算期は統一しなくてもよいことになっている。また、連結納税においても決算期については異なる場合にはみなし事業年度を置けばよいことになっており、制度上統一までは要求されていない。ただ、連結納税制度を例にとると、決算期について統一をしない場合には毎年みなし事業年度を置かなくてはならなくなるので、実務的に大きな負担を生むことになる。

そのため、実態面としてはほとんどのグループにおいて連結納税加入前に決算期を統一していたように思う。グループ法人税制においても制度上は統一化までは要求されていないものの、グループ全体の管理等を考慮すると決算期は統一化する方向で検討すべきである。今後においても、IFRSでは決算期統一化に対する要求が厳格であるため、会計面も含め決算期については統一するべきだと思われる。 (図表1参照)

図表1 みなし事業年度を置いた場合の決算集計作業
図表1 みなし事業年度を置いた場合の決算集計作業

譲渡損益調整資産の情報の共有化

グループ法人税制および連結納税制度双方に譲渡損益調整資産の規定が置かれることとなった。グループ内での一定の資産の売買の場合には譲渡法人での資産の譲渡損益が繰り延べられ、譲受法人で再譲渡等があるまでは実現しないこととなる。裏を返せば譲渡実現事由が生じるまでは、譲渡側・譲受側双方での管理が必要になる。

今後においては、譲渡損益調整資産の売買の発生を親法人等にきちんと通知することが必要になる。また、損益実現事由が発生した場合に、譲受法人から譲渡法人への通知も必要になる(この点、法人税法上も通知義務が規定された。法令122の14⑯他)。いわば、グループ内で一定の資産の譲渡があった場合にはグループ相互に譲渡等の情報を共有化する仕組みづくりが必要となる。特に子法人同士で資産譲渡がある場合などにおいては、親法人が気づかないケースもありえるので、対象資産や取引の可能性の有無の洗出しは事前にしておく必要がある。

特に土地については、棚卸資産であっても適用除外されないため、譲渡損益調整が必要となる。グループ内に不動産会社や不動産開発会社等を抱えている場合には注意が必要となる。

また、連結納税制度の場合にも非常に勘違いしているケースが多いのだが、棚卸資産(土地を除く)は対象にならないため、大手企業でも適用資産数は10~20程度にとどまるケースが多く、適用対象はかなり限定的になるものと思われる。一方、調整金額は多額になるため十分な注意が必要となる。

寄附金の全額益金不算入制度のポイント

今税制改正によって、グループ内寄附金については、支出側・全額損金不算入、受領側・全額益金不算入となり課税所得を構成しないことになった。このことにより、全面的に自由に資産移転を行うことができると誤解しているケースが非常に多いようだ。別表様式には規定がないが、連結納税制度同様に、一定のグループ法人間の寄附(寄附修正事由)については、利益積立金額と有価証券の帳簿価額を修正する規定が置かれている。(法令9①七、119の3⑥)

帳簿価額修正の概念があるため、寄附金に対する考え方については現制度同様となり、子法人等との取引価額については従来どおり十分な注意が必要になることに留意されたい。(図表2参照)

図表2 寄附金における帳簿価格修正
図表2 寄附金における帳簿価格修正

また、現段階では、いわゆる認定配当(法基通1-5-4)との関係、および子会社の支援等に関する通達(法基通9-4-1、9-4-2)についての影響は不明確であるが、その改正動向にも注意が必要となる。

受取配当等の全額益金不算入制度のポイント

実務上のポイントとしては、株式の区分が今までであれば「関係会社株式等」、「その他の株式等」の2区分であったものが新たに「完全子法人株式等」といった分類が必要になるので、子法人に対しこの点も周知徹底を図る必要がある。

受取配当等の益金不算入制度の改正については、導入目的にグループ内での資金移動を活性化させ、グループ全体最適化の視点によって親法人の株主配当の増加や設備投資原資の増加といった効果が挙げられている。

実際に連結納税制度の場合には、連結納税開始後早い時期にグループ各社から親法人に多額の配当をするケースが多く見受けられた。子法人に使用予定のない多額の資金がある場合には、現行制度ではキャッシュ・マネジメント制度等を使うしかなかったわけだが、今後については受取配当等の全額益金不算入制度を使って、グループ全体での効率的な資金活用を図ることが可能となる。

また、今税制改正においては寄附金の全額益金不算入・全額損金不算入制度も同時に導入され、グループ内の場合には、寄附金・配当金ともに受取側では全額益金不算入となった。一方、寄附金に関してはいわゆる帳簿価額修正の概念が導入されたため、今後については子会社からの資金還流の方法についても有利不利判定が重要となる。

グループ内での現物配当の課税繰延べにより組織再編が促進される

グループ内の現物配当が非課税となったことで、今まで現物配当を行いたくても含み益のある資産を現物配当しようとする場合には課税対象となり、また源泉徴収されていたため、回避をするため適格会社分割等の制度を利用していた場合も多くあった。今後は現物配当も使えるようになるため、時間とコストが大幅に軽減されることが考えられ、改正後は組織再編が一層促進されることになると思われる。今後はどのような制度を使って再編するのか、ますます手法の選択とシミュレーションの重要性が増すこととなる。

中小特例不適用の影響

子会社にとっては確実にデメリットとなる。最大350万円の税負担増となり、子会社によっては経営面や利益面に大きな影響が出る可能性もあるので、早めに子会社に伝えて影響額を試算し、予算等への影響を考慮することが重要である。突然の税負担に驚かすようなことがないような配慮が重要になる。

今ままでは、少なからずタックスメリットの享受のため分社化していたケースもあったかもしれない。今後はそういったタックスメリットが消滅したことから、純粋に経済合理性を中心に、グループのあるべき姿と分社化の方針を見直すきっかけとして積極的に捉えるべきではないかと思われる。

本文は『旬刊経理情報(6月1日号No.1249)』に掲載された記事の転載となります。

筆者紹介(畑中孝介)

税理士 畑中孝介(はたなか たかゆき)
TKC連結納税システム推進プロジェクト会員
TKC企業グループ税務システム小委員会委員

著書
『税務に強い会社は成長する!!』(大蔵財務協会)
『平成22年度 すぐわかるよくわかる 税制改正のポイント』(TKC出版)
『企業グループの税務戦略-グループ法人税制・連結納税制度の戦略的活用-』(TKC出版)

システム・コンサルティング事例
株式会社大和証券グループ本社様

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筆者紹介(岡田淳)

税理士 岡田淳(おかだ じゅん)
TKC連結納税システム推進プロジェクト会員
TKC企業グループ税務システム小委員会委員

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