更新日 2010.09.21
税理士 畑中孝介
税理士 岡田淳
マネジメントにおけるメリット
連結納税におけるメリットで、あまり注目されにくいのがマネジメントにおけるメリットである。
連結納税制度を採用した場合、グループ全体で申告をすることになる。一つのミスが、単体申告の場合にはその法人の修正で済んでいたものが、連結納税の場合にはグループ全体に波及することとなり、結果として申告スケジュールの遅延という形で全体に波及することになる。
われわれが実際に連結納税導入時に申告書をチェックした場合、15-20%程度の法人で何らかのミスが起こっており、これを放置したまま連結納税を導入したとすると、「親法人に負担がのしかかり決算が遅延する。」「現状の人員でこなせないような事態になってしまう。」「修正更正が頻繁に起きる。」のようなことが起こりうる。(図表2参照)
それを回避するために、子法人の研修・トライアルの実施とマニュアル化等検証体制の確立といった取組みをするのであるが、その結果、子法人のミスも減少し、正確性の向上、申告スピードの向上(修正の手間の削減)といった効果が生まれる企業がでてきている。
連結納税制度の戦略的な活用の視点
連結納税を採用し、きちんとした思想でグループ全体での内部統制の強化を図った企業には副次的な効果として、本番でのスピードアップと申告書の精度向上といった一見ると相反するような効果が生まれており、グループ全体で正しい情報を親会社に早期に集約できるというメリットが出つつあり、タックスプランニング、連結納税の採用不採用の判定など活用の幅は格段に増えることとなる。
実効税率の国際比較を行った場合、日本の実効税率は、40.69%とOECD加盟国中7年連続トップとなっている。一方グローバル企業といわれる企業の実効税率を分析するとおおむね30%前後もしくはそれ以下となっている場合が多く、注記事項からその差異原因を分析すると、次の点に大別される。
- 外国税額控除の適用
- 試験研究費特別控除の適用
- 連結納税の採用
これら3つの要因により、10%近い実効税率の引下げを行っているということになる。
実効税率の引下げは、税引後利益の増加を意味しており、実効税率の1%削減というのは数千億の売上を上げたのと同様の経営へのインパクトにもなるため非常に重要だ。
単に親会社だけの最適化ではなくグループ全体での最適化、そして組織再編やグループ法人税制、連結納税制度・税効果会計を複合的に組み合わせて理解しながらタックス・マネジメントとは何かを考えながら、実効税率の引下げを図っていくことが求められる時代になった。その点で今回の税制改正は単なる税制改正にとどまらず、企業グループ税制に大きな意識改革を迫るものといえる。(図表3参照)
本文は『旬刊経理情報(6月1日号No.1249)』に掲載された記事の転載となります。
筆者紹介(畑中孝介)
税理士 畑中孝介(はたなか たかゆき)
TKC連結納税システム推進プロジェクト会員
TKC企業グループ税務システム小委員会委員
著書
『税務に強い会社は成長する!!』(大蔵財務協会)
『平成22年度 すぐわかるよくわかる 税制改正のポイント』(TKC出版)
『企業グループの税務戦略-グループ法人税制・連結納税制度の戦略的活用-』(TKC出版)
システム・コンサルティング事例
株式会社大和証券グループ本社様
ホームページURL
税理士法人 無十(武藤会計事務所)
筆者紹介(岡田淳)
税理士 岡田淳(おかだ じゅん)
TKC連結納税システム推進プロジェクト会員
TKC企業グループ税務システム小委員会委員
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久徳会計事務所
TKC連結納税システム推進プロジェクトとは
TKC全国会は、全国1万名を超える税理士・公認会計士による我が国最大の職業会計人集団です。株式会社TKCでは連結納税制度に対応した連結納税システム(eConsoliTax)を平成15年6月に提供開始し、平成22年6月現在で420グループ4,590社の利用実績があります。
TKC全国会では、平成15年に、システムの円滑な立上げと、その運用を支援する「連結納税システム推進プロジェクト」を発足させ、連結納税制度を適用した企業に対するコンサルティングを全国展開しています。
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