更新日 2010.09.06
税理士 畑中孝介
税理士 岡田淳
連結納税制度の見直し等
(1)連結納税制度の見直しの背景
見直しの目的については下記の2点であると思われる。
- グループ法人税制の導入に伴い、原則としてグループ法人税制との制度の統一化を図った。
- 連結納税の導入がなかなか進まないことから阻害要因を取り除いた。
現状では日本の連結納税導入率は課税所得ベースでは7%程度にとどまっており、米国に比べ7分の1程度の導入状況にとどまっている。
そこで、連結納税制度の改正によりデメリットを改善するとともに、利便性の向上を図り、連結納税制度の普及を図る意図があると思われる。
(2)子法人の欠損金の持ち込み制限の緩和
子法人の欠損金を連結加入時に原則持込可能とする。
現状まで連結納税制度の導入の最大阻害要因といわれていた「連結納税加入時の子法人の繰越欠損金の切捨て」について、今回組織再編税制や時価評価対象法人同様に長期保有法人に関しては単体欠損金が持込可能と改正になった。
①改正の目的
次のような事項等が挙げられる。
- 子法人の欠損金の切捨てが、連結納税の導入に対し阻害要因となっている。
- 組織再編等においては5年以上企業グループ内にある法人の欠損金等の利用は原則可能であり密接に絡み合う両制度として一本化を図った。
- 諸外国では一定の条件のもと、欠損金の持ち込みが認められている。
- 組織再編税制・連結納税制度間での、長期子法人の欠損金の持込みの取扱いに齟齬が生じていたため、企業のグループ経営や再編手法に対し、中立性が失われ阻害要因となっていた
②新たに欠損金が持込み可能となる法人
連結納税の開始または加入時の時価評価対象外の法人と同様の範囲となり、次のようになる。
- 親法人に長期(5年超)保有されている100%子法人
- 親法人または100%子法人により設立された100%子法人
- 適格株式交換等による完全子法人
- 適格合併、適格株式交換等による子法人で被合併法人、株式交換完全子法人または株式移転完全子法人が長期保有していた100%子法人
- 法令の規定に基づく株式の買取り等により親法人の100%子法人となったもの
③欠損金の種類
今回の改正により欠損金は次の3種類に分類されることとなる。
- 特定連結欠損金…連結子法人の開始・加入前の欠損金で、当該子法人の所得を限度として繰越控除可能とされるもの
- 非特定連結欠損金…連結加入後の欠損金及び連結親法人の開始・加入前の欠損金で、連結全体での繰越控除可能とされるもの(新設株式移転等の子会社の欠損金も親法人同等として含まれることとなる)
- 切捨て欠損金…連結納税に持ち込みができない欠損金
a bをあわせて、連結欠損金額と言う。
④欠損金の利用範囲
注意点としては、親法人の欠損金と違い利用に制限があり、あくまで単体申告と同様に当該子法人の個別所得が限度となる。
⑤連結欠損金の繰越控除の順序
欠損金の繰越控除の順序は以下のとおりとなる。
- 古い事業年度分から控除
- 同一事業年度中に特定連結欠損金と非特定連結欠損金がある場合には、まず特定連結欠損金を控除し、その後に非特定連結欠損金を控除
(3)その他の主な改正
主に利便性の向上を目的とした改正が行われる。
- 承認申請期限が連結納税開始3月前(現行6カ月前)に短縮された。
- 連結納税グループの加入時期が、完全支配関係を有することとなった日に加え、完全支配関係を有することとなった日以後最初の月次決算日の翌日も選択可能とされた。
- 分割型分割の場合のみなし事業年度が不要とされた。
- 自己株式として取得されることを予定して取得された株式について受取配当金の益金不算入制度の適用を除外する
- 清算所得課税を廃止し、通常の所得課税へ移行する(期限切れ欠損金について損金算入制度を整備)。
など
本文は『旬刊経理情報(6月1日号No.1249)』に掲載された記事の転載となります。
筆者紹介(畑中孝介)
税理士 畑中孝介(はたなか たかゆき)
TKC連結納税システム推進プロジェクト会員
TKC企業グループ税務システム小委員会委員
著書
『税務に強い会社は成長する!!』(大蔵財務協会)
『平成22年度 すぐわかるよくわかる 税制改正のポイント』(TKC出版)
『企業グループの税務戦略-グループ法人税制・連結納税制度の戦略的活用-』(TKC出版)
システム・コンサルティング事例
株式会社大和証券グループ本社様
ホームページURL
税理士法人 無十(武藤会計事務所)
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TKC連結納税システム推進プロジェクト会員
TKC企業グループ税務システム小委員会委員
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TKC全国会は、全国1万名を超える税理士・公認会計士による我が国最大の職業会計人集団です。株式会社TKCでは連結納税制度に対応した連結納税システム(eConsoliTax)を平成15年6月に提供開始し、平成22年6月現在で420グループ4,590社の利用実績があります。
TKC全国会では、平成15年に、システムの円滑な立上げと、その運用を支援する「連結納税システム推進プロジェクト」を発足させ、連結納税制度を適用した企業に対するコンサルティングを全国展開しています。
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