更新日 2010.05.31
TKCシステム・コンサルタント
公認会計士 中田 清穂
日本の会計制度を大きく変えるIFRS(国際財務報告基準)への関心が高まり、検討や対応が始まろうとしています。IFRS導入の背景から、実務に必要なポイントなどを、全10回にわたって連載いたします。
2010年5月31日掲載
日本基準で作成される財務諸表は、
A 貸借対照表
B 損益計算書
C キャッシュ・フロー計算書
D 株主資本等変動計算書
です。
IFRSで作成する財務諸表は、
a 財政状態計算書
b 包括利益計算書
c キャッシュ・フロー計算書
d 株主持分変動計算書
です。
日本基準とIFRSでは、作成する財務諸表の名称自体が違うのです。
Aの貸借対照表は、aの財政状態計算書に相当し、
Bの損益計算書は、bの包括利益計算書に相当し、
Cのキャッシュ・フロー計算書は、cのキャッシュ・フロー計算書に相当し、
Dの株主資本等変動計算書は、dの株主持分変動計算書に相当します。
現時点では、名称くらいしか大きな違いはありません。
しかし現在IFRSの基準が改訂されようとしています。まだ確定した内容ではありませんが、大きな方向性としては、以下のような方向性にあります。
- 財政状態計算書(貸借対照表に相当)は、「流動・固定(非流動)」の区分を廃止して、「事業・財務」の区分とし、「事業」の区分はさらに「営業・投資」の区分に細分する。
- 包括利益計算書(損益計算書に相当)は、「営業損益・営業外損益・特別損益」の区分を廃止して、「事業・財務」の区分とし、「事業」の区分はさらに「営業・投資」の区分に細分する。
- キャッシュ・フロー計算書は、「営業・投資・財務」の区分でしたが、まず「事業・財務」の区分とし、「事業」の区分をさらに「営業・投資」の区分に細分する。
結局、財政状態計算書、包括利益計算書およびキャッシュ・フロー計算書は、まず「事業・財務」に区分し、「事業」の区分をさらに「営業・投資」の区分に細かく分けることで、同じ区分形式になります。
これによって、投資家などの財務諸表の利用者は、財務諸表を作成した企業について、
- "営業活動のために"持っている資産がいくらで、"営業活動上の"負債がいくらか。
- その"営業活動上の"資産・負債をもとに、"営業"損益をどれだけ得たか。
- 2)の"営業"損益の実際のキャッシュの収支("営業活動による"キャッシュ・フロー)はどうだったのか。
ということで、「営業活動」という切り口で関連性を持って、財務諸表から情報を得られることになるのです。「投資活動」も「財務活動」も同様です。革命的ですね。
また、資産・負債や損益などの各勘定が、「営業活動」のものか、「投資活動」のものか、「財務活動」のものかといった判断、つまり、各勘定科目をどの区分に含めるかは、「マネジメント・アプローチ」で決めようということになりそうです。すなわち各勘定科目をどこに表示させるかは、常日ごろ役員会資料などでの取扱いを念頭に置いて決めるようなイメージです。
「土地の表示区分が企業によって違う!!」なんてことになりそうです。
また、キャッシュ・フロー計算書の表示方法として、間接法が廃止されるようです。
プロフィール
公認会計士 中田清穂 (なかた せいほ)
TKC連結会計システム研究会・専門委員
著書
『内部統制のための連結決算業務プロセスの文書化』(中央経済社)
『連結経営管理の実務』(中央経済社)
『SE・営業担当者のための わかった気になるIFRS』(中央経済社)
ホームページURL
有限会社ナレッジネットワーク http://www.knowledge-nw.co.jp/
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