スマート行政DX推進を支援する

情報誌 「新風」(かぜ)

2026年10月号Vol.144

【ユーザー事例】“手続きを楽に”から“業務改革”へ──青梅市に学ぶ「書かない窓口」の定着と今後の展望

「フロントヤード改革」先進事例 > 東京都青梅市

企画部 DX推進課 課長 大塚瑞樹 氏 / 主査 清水絋平 氏 / 市民部 市民課 住民記録係 係長 大塚智恵 氏 / 主事 三角 健 氏

「スマートローカル青梅」を掲げ、DXを進める東京都青梅市。市民課を起点に各課が連携する〈書かない窓口〉は、9課27業務・45手続きで利用され市民サービスの向上につながっている。市の取り組みから、運用定着や業務改革の実践的なヒントを探る。

住所
東京都青梅市東青梅1丁目11番地の1
電話
0428-22-1111
面積
103.31平方キロメートル
人口
128,311名(2026年8月1日現在)
東京都青梅市

──青梅市では、全国的にも早い段階から「書かない窓口」を導入し、窓口サービスの向上に努めてこられました。

大塚(D) 青梅市では、コロナ禍を機にDXへの取り組みを本格化し、2022年6月に青梅市DX推進方針『スマートローカル青梅』を策定しました。その第一歩として〈市役所へ来庁しなくても、各種申請ができるような環境づくりの実現〉を掲げ、「3つの変える(行政サービスを変える・市役所を変える・地域社会を変える)」に取り組んでいます。このうち〈行政サービスを変える〉取り組みの一つが、書かない窓口でした。
 〝市役所に来庁しない〟を実現するため、市ではオンライン申請の拡充に注力しています。しかし、現実には多くの市民が来庁されます。そこで来庁する方にもよりよいサービスを提供するため、書かない窓口を導入しました。

三角 きっかけとなったのは、23年2月に開始した「引越しワンストップサービス」です。オンラインで入力された情報を基幹業務システムへ自動連携するため、「TASKクラウド引越しワンストップ支援サービス」を採用しました。このシステムが「申請管理システム」と「かんたん窓口システム」で構成されていたことから、このタイミングで書かない窓口の導入も決断。手始めに市民課など6課で導入し、同年6月にはおくやみ支援窓口のサービスも開始しました。
 現在では、市民課をはじめ、こども育成課や子育て応援課など、9課13窓口の27業務・45種類の申請でかんたん窓口システムを利用しています。

書かない窓口は9課27業務へ

三角 市では窓口にタブレット端末を設置せず、職員が使用するノートパソコンからかんたん窓口システムを利用しています。システムの利用により、案内が不慣れな職員でも窓口で応対できるようになりました。
 運用形態としては、市民課で職員が対面で来庁者から聞き取った内容を入力し、異動届と手続き案内票を作成します。案内票には来庁者に必要な手続きと二次元コードが印字されており、各課ではそれをかんたん窓口システムがインストールされているパソコンのカメラで読み取ることで、基本4情報があらかじめ印字された申請書が容易に作成されます。
 これにより、市民課で完結する手続きは従来よりも多少時間がかかるケースもありますが、市民課に続き他課でも手続きをする場合は最大で10分程度の時間短縮につながっています。

──部署間の調整は、どのように進められたのでしょうか。

大塚(市) まずは各課の課長で構成される「青梅市市民窓口サービス検討委員会」の場を通じて幹部職員に働きかけ、そこから組織全体に波及させました。並行して市民課から各課のキーマンに声をかけ、実務者の視点で①導入範囲の決定、②連携課との調整・設問の作成、③申請書類の見直し、④窓口業務フローの作成──などに取り組みました。さらに、各課職員に具体的な運用をイメージしてもらうために、システムデモを実施するなど、役職や立場に合わせたアプローチを工夫して理解・浸透を深めました。

左から、碓井主事、大塚課長、清水主査

左から、碓井主事、大塚課長、清水主査

横展開の継続には課題も

──これまでの成果を教えてください。

三角 書かない窓口の導入は、これまでの手続きの流れや申請書のあり方を改めて考え直すきっかけとなりました。
 その一つが、記載台を4台減らし、待ち合いスペースを広く使えるようにしたことです。また、印鑑登録申請書と印鑑登録廃止申請書を一本化するなど申請書の見直しも図りました。
 さらに、おくやみ支援窓口では、亡くなった方に関する申請手続きが必要な関係課に加えて、新たに収納課との連携も準備中です。これらは業務改革につながる成果と感じています。
 「書かなくていい」ことは市民の方からも好評です。1対1で聞き取りをすることで、市民の安心感やサービスの質の向上につながっていると考えています。もう申請書を手書きする運用には戻せませんね。

──逆に運用上の課題はありますか。

大塚(市) どのように運用を継続・改善するかが課題と考えています。
 運用継続に立ちはだかる要因の一つが、担当者の異動です。市民課では業務フローの一部として書かない窓口の利用が定着していますが、各課では担当者の異動でノウハウが失われ、取り組み意欲が低下することがあります。
 また、端末等の更改やレイアウト変更など、物理的な問題で運用が困難となる場合もあります。一例がシステム標準化で、帳票様式が変更されたことで既存のプリンターが利用できなくなり利用率が低下した部署もありました。
 こうした場合、現状では市民課職員が使い方やメリットを説明して利用を働きかけていますが、長期的には組織として運用継続・改善を図る仕組みづくりが必要でしょう。

業務改革へ、基幹連携も検討

──今後の計画を教えてください。

三角 次のテーマとして、基幹業務システムとの連携を考えています。
 現在は、かんたん窓口システムから基幹業務システムへの連携は行わず、異動届の内容を住基システムに入力して異動処理を行っています。その理由は、〈受付と確認の分離〉と〈段階的な承認〉により、ミスなどを防止する運用ルールとしているためです。この仕組みを変えるつもりはありませんが、将来に向けて業務プロセスの抜本的な改革は必要だと考えます。
 また、システム標準化により、転出証明書に二次元コードが記載されるようになりました。これを読み取ることで転入手続きに必要な情報が自動的に反映され、入力ミスの軽減や作業の効率化、市民の待ち時間の短縮などが期待できます。近い将来、フロントヤード/バックヤード連携も現実のものとなるでしょう。こうした変化も踏まえながら、かんたん窓口システムを最大限に活用して、さらなる業務改善に取り組みたいと考えています。

大塚(市) 今年中をめどに、証明書類の郵送申請から手数料等の決済までの〝オンライン完結〟に取り組みます。「一緒にやりたい」という課もあり、現在調整を進めているところです。また、単にサービスを開始するだけでなく、実際に多くの方に使っていただけるよう周知にも努める考えです。

大塚(D) DXやBPRの推進を図る上では、職員一人ひとりが将来を見通す視点を持って行動できるよう、意識醸成を図ることが重要です。そのため、23年度から職層別のマインドセット研修に取り組んできました。その結果、さまざまな部署で業務改革の機運が高まりつつあると感じています。
 これまでの取り組みによりオンライン化した手続きの比率は高まりましたが、これはあくまで内向きの成果です。今後は〈どれだけ利用されているか〉に軸足を移して、質の拡充を図る計画です。その一環として、オンライン申請ができる手続きを一カ所に集約する準備も進めています。
 〈市役所へ来庁しなくても、各種申請ができるような環境づくり〉は、まだまだ道半ば。『スマートローカル青梅』実現へ、これからも〝3つの変える〟に挑み続けます。

左から、三角主事、大塚係長

左から、三角主事、大塚係長

推進担当者に聞く自治体DXの本質は「職員の意識改革」だ

青梅市企画部DX推進課長 大塚瑞樹 氏

 青梅市では、2022年6月にDX推進方針『スマートローカル青梅』を策定し、組織変革に挑み続けている。「スマートローカル」とは、地域全体のデジタル化と山里や川などを有する地域における豊かな自然と共生したまちづくりを目指す──という意志を示すものだ。
 この第一歩に位置付けたものが、〈市役所へ来庁しなくても、各種申請ができるような環境づくりの実現〉である。具体的には、①行政サービスを変える、②市役所を変える、③地域社会を変える──の三つの〝変える〟を軸にアクションプランを策定し、これまでさまざまな活動を展開してきた。
 その一つが、〈行かない・来させない窓口〉を実現するオンライン申請の拡充だ。23年度から、全課を対象にオンライン申請が可能な手続きを定期的に調査・把握し、手続きのオンライン化を進めてきた。その結果、25年11月時点で、実現可能な手続きのうち、オンライン化された手続きは8割を超えている。
 また、いまBPRの推進にも注力している。22年度末に、全庁を対象として「業務可視化調査」を実施したところ、年間総作業時間が143万8444時間であることが判明した。単純計算で、職員1人当たり年間13カ月働かなければ処理できない規模である。この結果は、庁内に大きな衝撃を与えた。

失敗を恐れず動き出そう

 少子高齢化・人口減少が進み、職員数は確実に減少していく。このまま何も手を打たなければ、やがて行政業務は立ち行かなくなることも予想される。持続可能な行政経営へ、BPRへの取り組みは急務であろう。
 われわれも、最初は何から手をつければいいか分からず苦慮した。しかし、まずは行動しようと、23年度に「1課1業務改善運動」に取り組んだ。これは各課が最低一つの業務について業務フローを見直し、作業時間短縮に努めたものだ。その結果、合計3524時間の削減を達成することができた。
 翌年度からは「全庁BPR推進キャンペーン」と銘打ち、8月と12月の年2回、それぞれ2カ月間の集中的な改善活動に取り組んでいる。こうした活動を通じて、これまでに約2万5000時間の作業時間短縮を図ってきた。
 総作業時間に見る削減率としては微々たるものだが、最初の一歩として、職員に「やればできる」と気付きを与えられたのは大きな成果といえるだろう。
 目標とするのは、「毎年1万時間の削減」だ。これにより、2040年には1人の職員が12カ月で処理できる年間総作業時間を目指したい。
 「DXやBPRの推進」と言葉でいうのは簡単だが、実現には多くの困難を伴う。青梅市の場合も、これからの業務改革は、まさに〝乾いた雑巾を絞る〟に等しいと考える。実現には、職員一人ひとりの意識のあり方にかかっているといえるだろう。
 「DXをどう進めるか」と悩む自治体職員は多いと思うが、失敗を恐れずまずはやってみる姿勢が大切だろう。
 青梅市では、今年、新たに『デジタル推シン・オウメ~スマートローカル青梅アクションプラン2026-2028』を策定した。これまでの取り組みを継承、さらに発展させ、『スマートローカル青梅』の実現に取り組んでいきたいと考えている。

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