更新日 2024.05.13
TKC全国会 中堅・大企業支援研究会 幹事
TKC全国会システム委員会 電子申告システム小委員会 委員長
税理士 長谷川 暢彦
資本金1億円超の大法人における電子申告義務化により、令和4年度の法人税の電子申告割合は90%を超えました。この電子申告の普及とともに、納税者の利便性向上と税務行政の効率化を図る観点から、キャッシュレス納付の普及も進んでいくものと考えられます。
このコラムでは、国税及び地方税のキャッシュレス納付・電子納税の概要と実務対応について2回にわたり解説します。
当コラムのポイント
- キャッシュレス納付の普及に向けた取り組みが分かります
- キャッシュレス納付・電子納税の概要について分かります
- キャッシュレス納付・電子納税の実務対応について分かります
※2024年4月時点の国税庁・地方税共同機構HPで公表されている情報をもとに記載しています。
- 目次
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第1回ではキャッシュレス納付の概要を国税、地方税に分けて解説しましたが、第2回ではキャッシュレス納付の具体的な方法について国税、地方税に分けて解説します。
1.国税のキャッシュレス納付の実務
このコラムではキャッシュレス納付のうち、主に法人が利用するインターネットバンキング及びダイレクト納付の具体的方法について解説します。
なお、e-Tax(国税電子申告・納税システム)を利用して納税する・しないによって納付手段が異なりますので、その観点から解説します。
(1) e-Taxを利用した登録方式によるキャッシュレス納付・電子納税
登録方式とは、e-Taxを利用して電子申告を行った後、またはe-Taxを利用して事前に納付情報依頼をした後に、申告または登録した「納付情報データ」に対応する納付区分番号等を取得して電子納税を行う方式です。
具体的な手順として、源泉所得税を例に納税を行う方法について解説します。
- ①利用者情報を入力します。
徴収高計算書データを送信することにより納付情報依頼を行いますが、初めて送信する際に、法人名、住所等の利用者情報の登録が必要となります。具体的にはe-Taxの「利用者情報の登録・確認・変更」メニューをクリックして登録を行います。 - ②メインメニューで「申告・申請・納税」ボタンをクリックし、新規作成の「操作に進む」をクリックします。
- ③作成する徴収高計算書を選択し、納期等の区分及び納付区分を入力します。
- ④「支払年月日」・「人員」・「支給額」・「税額」等を入力し、「次へ」をクリックします。
- ⑤入力した内容を確認し、「送信」をクリックします。
なお、法人税や消費税などを電子申告した場合にはe-Tax側で自動的に納付情報が登録されますので、上記の登録作業は不要となります。 - ⑥e-Tax側では、納付情報データの基本事項(納税者名、住所等)の内容確認を行い、納付区分番号等を表示した「納付区分通知」をメッセージボックスに格納します。
- ⑦納付手続き
- 1) インターネットバンキングによる納付手続き
- a.再度e-Taxにログインし、「メッセージボックス一覧」から該当する受信通知を選択します。
- b.「受信通知(納付区分番号通知)」画面内に表示されている「インターネットバンキング」のボタンをクリックすることにより、インターネットバンキングの「税金・各種料金振込」にリンクして納付ができます。この情報リンク方式を利用すると、収納機関番号や利用者識別番号等を入力することなく納付ができます。
- 2) ダイレクト納付による納付手続き
ダイレクト納付とは、事前に税務署へ届出等をしておけば、e-Taxを利用して電子申告等または納付情報登録をした後に、 届出をした預貯金口座からの振替により、簡単なクリック操作で即時又は期日を指定して納付する方法です。また、複数の口座を届出しておくとダイレクト納付で口座を選択して利用することができます。
具体的には、上記(1)⑦b.の「納付区分番号通知」画面内に表示されているダイレクト納付の「今すぐに納付される方」もしくは「納付日を指定される方」をクリックします。 納付日を指定する場合は、法定納期限までの日付を指定できます。納付指定日の朝に振替となりますが、振替ができなかった場合は再度「今すぐに納付」が可能です。また、納付指定日の前日までは、納付の取消が可能です。
なお、令和6年4月以降、e-Taxで申告等のデータを送信する際に、必要事項にチェックするだけで、改めて納付指図等を行うことなく、法定納期限に自動で口座引落しが行えるようになります。注:法定納期限当日に電子申告を行った場合はその翌取引日に口座引落しされますが、期限内に納付したものと扱います。
- 3) インターネットによるクレジットカード納付手続き
上記(1)⑦b.の「納付区分番号通知」画面内に表示されている「クレジットカード納付」を選択し、「国税クレジットカードお支払いサイト」へリンクして納付手続きを進めることができます。
詳細はe-Taxホームページ「登録方式による納税手続」をご確認ください。
- 1) インターネットバンキングによる納付手続き
(2) 入力方式によるキャッシュレス納付・電子納税
入力方式とは、e-Taxに納付情報データの登録は行わず、納付区分番号に相当する番号として自身で納付目的コードを作成して電子納税を行う方式です。言い換えれば、インターネットバンキングやATMのみで納付が行える仕組みです。
なお、入力方式は法人税、地方法人税、消費税及地方消費税、申告所得税等に限定されています。具体的な手順として、消費税等を例に解説します。
- ①インターネットバンキングにログインし、「税金・各種料金の払込み(ペイジー)」を選択
- ②収納機関番号に国税庁を表す「00200」を入力
- ③納付内容入力画面が表示されたら、各欄に以下の番号を入力して送信
注1 上記表の納付目的コードは次の番号を組み合わせて作成します。
税目番号+申告区分コード+元号コード+課税期間(和暦)
- 税目番号は、法人税(030)、地方法人税(040)、消費税等(300)となります。
- 申告区分コードは、中間申告(3)、確定申告(4)、修正申告(5)、予納(8)となります。
- 元号コードは、令和(5)となります。
- 課税期間(和暦)は、消費税の場合には課税期間の始期6桁を和暦で入力します。
例えば消費税の課税期間令和5年4月1日から令和6年3月31日の確定申告の納付目的コードは次の通りとなります。
「30045050401」
詳細はe-Taxホームページ「入力方式による納税手続」をご確認ください。
2.地方税のキャッシュレス納付の実務
このコラムでは、キャッシュレス納付のうち、主に法人が利用する地方税共通納税制度による電子納税(インターネットバンキング等及びダイレクト納付)の具体的方法について解説します。
なお、納税を行うためには、対象の地方公共団体全てに提出先の登録手続きが必要です。
具体的には、PCdesk(ダウンロード版)の利用者情報メニューの「提出先・手続き変更」より、提出先及び税目等手続きの追加をします。
(1) PCdeskを利用した電子納税
- ①電子申告連動による納税
電子申告を行った申告データの納付情報の発行を依頼します。- 1)納税メニューを開く。
電子申告連動を選択します。 - 2)納付対象申告一覧を開く。
電子申告済みの申告データの一覧から、納付情報発行依頼を行う申告データを選択します。 - 3)納付・納入金額を確認する
納付情報の発行が行われた納付情報を確認します。 - 4)納税メニューに戻って、納付情報の確認・納付を選択します。
- 5)納付方法を選択します。
「インターネットバンキング」、「クレジットカード」、「ダイレクト方式」のいずれかの納付方法を選択して納付します。
「クレジットカード」を選択すると「F-REGI公金支払い」サイトへリンクして納付手続を進めることができます。
「ダイレクト方式」を選択するとインターネットバンキングを利用することなくeLTAXで納付手続きが完了します。- a.支払口座を選択します。
事前に登録しておけば最大3口座から選択できます。 - b.納付方法を選択します。
「今すぐに納付」または「納付日を指定して納付」をクリックします。
なお、納付指定日の朝に振替となりますが、振替が出来なかった場合は再度「今すぐに納付」が可能です。また、納付指定日の前日までは納付の取消処理も可能です。
- a.支払口座を選択します。
- 1)納税メニューを開く。
- ②手入力による納税
「個人住民税(特別徴収)」や「みなし・見込納付」については、金額等を手入力して納付情報登録依頼します。
納付方法については電子申告連動による納付と同様に「インターネットバンキング」、「クレジットカード」、「ダイレクト方式」のいずれかの納付方法を選択して納付します。
詳細はeLTAXホームページ「納税手続きの手順」をご確認ください。 - ③オンライン方式による納税
オンライン方式とは、eLTAXにて発行した納付情報をインターネットバンキングやATMに直接入力して納付する方式です。
国税の入力方式とは異なり、自身で納付情報を作成することは出来ませんので、eLTAXでの納付情報の発行が必要となります。
具体的な手順としては電子申告連動と同様ですが、4)納付情報確認画面に表示される「収納機関番号」「納付番号」「確認番号」を控えた上で、これらの納付情報をATM等に直接入力して納付します。
(2) 地方税お支払サイトによる納税
「地方税お支払サイト」では、固定資産税・都市計画税や自動車税(種別割)などのeLマークの記載がある納付書での納税が可能です。
また、複数の納付書をまとめて1回で納付することが可能です。
- ①eL-QRによる納税
カメラまたはQRコードリーダーで、納付書のeL-QRを読み取って納税します。 - ②eL番号による納税
納付書に記載されているeL番号(納付書番号)を入力して納税します。 - ③納付方法
クレジットカード、インターネットバンキング、ダイレクト方式、ペイジー番号発行など様々な納付方法から選択できます。
3.TKC電子納税システムのご紹介
株式会社TKCが提供している電子納税システム「e-TAX電子納税」には以下の特長があります。
- (1)国税、地方税の電子納税が1つのシステムで連続して行える。
- (2)電子納税データ作成、データ送信、納付区分番号通知の確認、インターネットバンキング・ダイレクト納付、納付完了メッセージなどの一連の処理をプロセス化している。
- (3)地方税の見込納付、みなし納付については法人税申告書作成システムからCSVファイルで連携し、複数の団体に一括納付できる。
- (4)確定申告による納付は地方税ポータルシステムから申告税額を連携して納税できる。
なお「e-TAX電子納税」は、TKCグループ通算申告システム(e-TAXグループ通算)及び法人電子申告システム(ASP1000R)のオプションシステムとして提供されており、ユーザは無料で利用できます。
4.まとめ
2回にわたり電子納税の概要及び実務について、国税及び地方税に分けて解説しましたが、具体的な納税の方法については国税及び地方税ともほぼ同様の措置が講じられています。
前回も解説した通り、納付日の指定や取消、複数の銀行口座からの選択ができることやインターネットバンキングを経由する必要がないこと、手数料が不要であることを考えると、ダイレクト納付が最も利便性が高いと考えられます。
第1回でも解説したとおり、キャッシュレス納付はまだ利用率が低い状況ですが、様々な納付手段が拡充されてきています。
納税者に限らず行政側においても、大幅な事務負担の軽減と行政サービスの拡充が期待されています。納税者側においてもキャッシュレス納付を積極的に取り組むことが、さらなる利便性向上に繋がると思われます。
了
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