グループ経営のための連結決算

連結管理会計の導入①~連結予算管理~

更新日 2012.09.24

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あがたグローバル税理士法人

TKC全国会 中堅・大企業支援研究会会員
公認会計士・税理士 大野 崇、野村 昌弘
公認会計士     稲垣 泰典

上場会社では当たり前になった連結決算。情報開示という面が強く認識されていますが、グループ経営の意思決定のための会計として、時として非上場会社にも連結決算・連結管理会計の導入が必要なのではないでしょうか?

このコラムでは、連結決算を組むメリット、単純合算では見えてこない点、グループ経営のためのキャッシュ・フロー計算書、決算早期化、予測連結、海外子会社の連結等、上場/非上場に関わらず、グループ経営の観点から連結決算を分かりやすく解説します。

1.連結管理会計の導入

 前回はグループ経営のための連結決算の必要性についてご説明しました。しかし、連結決算は株主や債権者等の企業の外部関係者に対する経営成績の報告が主たる目的であるため、企業経営者がグループ経営戦略の立案やグループ管理をするには、外部用の連結決算そのままでは不十分です。管理会計を連結ベースにして事業別損益等を正確に把握し、グループ経営に役立てていく必要があります。そこで、今回より3回にわたって、連結管理会計の導入として、連結予算管理、変動損益計算書、セグメント情報についてご説明します。

2.連結予算管理とは

 予算管理とは、予算を活用して経営管理を行う仕組みをいいます。企業は、外部の経営環境や会社内部の事業の成長性等を分析して、経営理念、経営ビジョン、経営戦略を立案し、最終的に経営計画(中長期経営計画や単年度利益計画予算)を策定します。
 予算はその策定と活用を考える必要があります。その一連の過程が予算管理であり、予算の策定を予算編成、予算の活用を予算統制に分けることができます。この予算管理の全体を示したのが図表1になります。

 以上が個社ごとの予算管理ですが、連結グループに置き換えた場合にも基本的には同じです。連結予算の策定(予算編成)(図表2参照)、連結予算実績差異分析(予算統制)を実施し、把握した差異について改善活動を実施していきます。これにより、グループ全体を効率化し、競争力の向上を図っていくことが連結ベースでの予算管理導入の目的となります。PDCAサイクル(Plan(計画)-Do(実行)-Check(評価)-Action(改善))により活動を行っていくことが極めて重要です。

3.連結予算管理の効果

 ある会社が期首に予算を作成し、期末に予算実績差異分析を実施したとします。図表3は、個別決算書を単純合算した予算実績差異分析資料です。これに対して、連結仕訳を考慮した連結決算書ベースの予算実績差異分析資料が図表4です。

図表3 単純合算による予算実績差異分析

(単位:百万円)

  予算 実績 差異
売上高 11,170 11,113 △57
売上原価 8,660 8,636  △24
 売上総利益 2,510 2,477  △33
販売費及び一般管理費 2,150  2,122  △28
 営業利益 360 355 △5

図表4 連結決算書による予算実績差異分析

(単位:百万円)

  予算 実績 差異
売上高 9,810 9,613 △197
売上原価 7,515 7,396  △119
 売上総利益 2,295 2,217  △78
販売費及び一般管理費 2,022  1,990  △32
 営業利益 273 227 △46

 これを見るとグループ会社間の取引や未実現利益を考慮しない単純合算によった場合は、営業利益の予算と実績の差異は△5百万円とそれほど大きくありません。一方、連結仕訳を考慮した図表4では、予算と実績の差異が△46百万円と大きくなっています。これは連結グループ内の取引や、連結グループ内の取引で付加されまだ連結グループ外に販売されておらず実現していない利益(未実現利益)が、連結決算上消去の対象とされるためです。連結仕訳を考慮しない個別決算書ベースで判断してしまうと誤った見方をする可能性があります。
 このように、グループ会社間の取引や未実現利益が多くなると、連結予算管理が特に重要になってきます。連結ベースで予算管理を行うことにより、グループ全体の視点から見た戦略を立てることができるようになります。

4.連結会計システム導入の検討

 連結決算については市販の連結会計システムを導入している会社が多いですが、省力化の手段として連結予算の作成にあたっても、連結会計システムを利用することが考えられます。各社から入手した予算データを連結会計システムに取り込み、自動で連結仕訳を行えるため、より効率的に連結決算書を作成することができます。上場企業のなかには連結決算と連結予算を扱う部署が異なるというケースも少なからずありますが、作業の省力化・効率化の観点から、予算・決算ともに同じ連結会計システムを利用することは十分検討に値すると考えます。

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公認会計士・税理士 大野 崇、野村 昌弘
公認会計士     稲垣 泰典

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