更新日 2011.04.01
TKCシステム・コンサルタント
公認会計士 中田 清穂
災害による決算発表や報告書の期限延長に関する解説や、決算短信や有価証券報告書での記載事例を解説します。
今回は、平成16年9月30日を中間決算期末とする半期報告書について解説したいと思います。当時はまだ四半期報告書制度になる前だったので、半期報告書を対象にします。
新潟県中越地震は平成16年10月23日に発生したので、平成16年9月30日を中間決算期末とする場合には、後発事象に該当したのです。
以下の17社が、中間連結財務諸表や中間財務諸表の注記事項に「重要な後発事象」として開示しています。
なお、三洋電機株式会社については、前回取り上げたので含めていません。
これらの開示はすべて6年以上前なので、現在のEDINETでは閲覧できないようです。
また、各企業のホームページでも5年を超えて報告書を閲覧できるようにしている企業は非常に少ないようです。
上記17社の開示事例から、以下の特徴的な事例を紹介します。
【ケース1】最も短い文章のケース(㈱ニチロサンフーズ)
【ケース2】被害が軽微と見込まれるケース(北越紀州製紙㈱)
【ケース3】倒壊はないが建て替えることとしたケース(㈱ツガミ)
【ケース4】取引先への影響を見積もることが困難としたケース(㈱北越銀行)
【ケース5】直接的な損害はないが、キャンセル等により、下期以降の業績に影響があるとしたケース
(長岡都市ホテル資産保有㈱)
【ケース6】最も長い文章のケース(原信ナルスホールディングス㈱)
それでは、実際の開示内容を示します。
【ケース1】最も短い文章のケース(㈱ニチロサンフーズ)
平成16年10月23日の新潟県中越地震により、地震発生時の製造中止による生産工程在庫廃棄損など約30百万円の特別損失が発生する見込みです。
【ケース2】被害が軽微と見込まれるケース(北越紀州製紙㈱)
当社の長岡工場および持分法適用会社である㈱ニッカンは、平成16年10月23日に発生した新潟県中越地震に被災いたしましたが、幸い軽微な損傷でありました。現在、生産活動は既に復旧しております。
なお、当連結会計年度業績に与える影響は現在算定中でありますが、損害金額は軽微なものと見込まれます。
【ケース3】倒壊はないが建て替えることとしたケース(㈱ツガミ)
新潟県中越地震による業績に与える影響
平成16年10月23日に発生した新潟県中越地震により、当社長岡工場の建物等について倒壊はありませんでしたが、今後強い地震が発生した場合の危険回避のため老朽建物(3棟)を全面的に建て替えることとしました。
これに伴う損失額は概ね次のとおり見込んでおります。
建物等除却損 180百万円
取壊し撤去費用・設備移設費用他 220百万円
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合計 400百万円
【ケース4】取引先への影響を見積もることが困難としたケース(㈱北越銀行)
平成16年10月23日に発生しました「新潟県中越地震」により、中越地区の数店舗が被災いたしましたが、これによる店舗被害等は軽微であります。
また、現段階で地震が及ぼす取引先への影響を見積もることは困難であります。
【ケース5】直接的な損害はないが、キャンセル等により、下期以降の業績に影響があるとしたケース
(長岡都市ホテル資産保有㈱)
平成16年10月23日に新潟県中越地震が発生しました。
地震後、宴会等のキャンセルが相次ぎ、下期以降の業績に多大な影響を及ぼす見込みであります。
【ケース6】最も長い文章のケース(原信ナルスホールディングス㈱)
新潟県中越地震の発生により、当社の出店地域が甚大な被害を受けました。
これに伴い、当社の店舗において、建物の損壊や設備の損傷、商品の破損等重大な損害が発生いたしました。
(1) 重要な災害の発生年月 平成16年10月23日
(2) 重要な災害が発生した場所 主として新潟県中越地区
(3) 被害を受けた資産の種類及び帳簿価額
①事業所名 今朝白店、他10店舗
所在地 新潟県長岡市
設備の内容 店舗
帳簿価額
商品 45,943千円
建物他固定資産 31,510千円
計 77,454千円
②事業所名 西小千谷店、他1店舗
所在地 新潟県小千谷市
設備の内容 店舗
帳簿価額
商品 32,600千円
建物他固定資産 107,284千円
計 139,884千円
③事業所名 見附店
所在地 新潟県見附市
設備の内容 店舗
帳簿価額
商品 6,862千円
建物他固定資産 40,151千円
計 47,014千円
④ 事業所名 十日町店、他1店舗
所在地 新潟県十日町市
設備の内容 店舗
帳簿価額
商品 32,600千円
建物他固定資産 107,284千円
計 121,297千円
⑤ その他
設備の内容 店舗他
帳簿価額
商品 13,368千円
建物他固定資産 49,250千円
計 62,618千円
(注)
1 上記金額に消費税等は含まれておりません。
2 建物他固定資産の帳簿価額については、損害を受けた資産の修繕に要する費用及び再取得に要する費用について見積書に基づき合理的に算定した金額を記載しております。
3 上記金額は、現時点で判明している被害の状況に基づいて算定した金額でありますが、今後、加的な修繕等が必要になった場合や見積り内容が変更になった場合には、金額が変動する可能性があります。
(4) 支払われた保険金額保険金の支払については、現在、損害保険会社において査定中でありますが、当該店舗等の商品及び固定資産等に対して総額400,000千円を付保しております。
(5) 当該重要な災害による被害が事業に及ぼす影響
営業の復旧につきましては、壊滅的な被害を受け現状復旧および営業継続が困難な3店舗の閉鎖を除き、平成16年11月中に全店舗で通常営業を再開しております。
なお、閉鎖を行った3店舗は、以下のとおりであります。
①事業所名 中沢店 所在地 新潟県長岡市
閉鎖日 平成16年10月31日
年間売上高(平成16年3月期) 354,662千円
②事業所名 見附店 所在地 新潟県見附市
閉鎖日 平成16年10月31日
年間売上高(平成16年3月期) 787,681千円
③事業所名 駅前店 所在地 新潟県小千谷市
閉鎖日 平成16年10月31日
年間売上高(平成16年3月期) 594,136千円
また、当該地震による被害により商品の廃棄損失、設備の修繕費用および固定資産の除却損失の発生により、総額400,000千円程度の特別損失の計上を見込んでおります。
以上が特徴的な事例ですが、17社すべての事例を参照されたい方は、こちらの資料をご参照ください。
本文は有限会社ナレッジネットワーク社ホームページの『カレントトピックス(災害時の開示)』に掲載された記事の転載となります。
筆者紹介
公認会計士 中田清穂 (なかた せいほ)
TKC全国会中堅・大企業支援研究会 顧問
TKC連結会計システム研究会・専門委員
著書
『内部統制のための連結決算業務プロセスの文書化』(中央経済社)
『連結経営管理の実務』(中央経済社)
『SE・営業担当者のための わかった気になるIFRS』(中央経済社)
ホームページURL
有限会社ナレッジネットワーク http://www.knowledge-nw.co.jp/
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