更新日 2011.04.01
TKCシステム・コンサルタント
公認会計士 中田 清穂
災害による決算発表や報告書の期限延長に関する解説や、決算短信や有価証券報告書での記載事例を解説します。
今回は、平成16年10月23日に発生した新潟県中越地震の際に、平成16年12月31日に終了する第3四半期について、三洋電機(株)が作成した決算短信を解説したいと思います。
以下の開示例では、災害の影響が4か所に記載されています。
- 【当第3四半期の概況】の最終段落に、大幅な損失計上の要因の一つとして開示しています
- 【連結業績概要】の部門別売上高の段落(第4段落)-コンポーネント部門の売上減少要因の一つとして開示しています。
- 【連結業績概要】の第5段落-営業損益の減少要因の一つとして開示しています。
- 【連結業績概要】の第5段落-税前利益の減少要因の一つとして、「地震災害損失138億円」を明示しています。
以下が、実際の開示内容になります。
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三洋電機株式会社
第3四半期決算短信(自 平成16年4月1日 至 平成16年12月31日)
経 営 成 績 及 び 財 政 状 態
(1) 経営成績(連結)の進捗状況に関する定性的情報等
【当第3四半期の概況】
当第3四半期における世界経済は、米国や中国をはじめとするアジア諸国などを中心に引き続き景気が拡大し、原油価格の動向や原材料の高騰など不透明要因があるものの、着実に回復している状況にあります。
一方、わが国経済は、企業収益の改善など民間需要を中心に景気は緩やかに回復しているものの、IT関連の生産調整、米国向け輸出の減速や円高・ドル安の進行など懸念材料も増大しております。
このような状況の下、デジタル景気が調整局面を迎える中で、当社はデジタルカメラやデバイス事業の競争激化や、昨年10月23日に発生した新潟県中越地震で、当社の半導体子会社「新潟三洋電子(株)」が被災したことによる影響などにより、第3四半期は大幅な損失を余儀なくされました。
【連結業績概要】
当第3四半期の連結売上高は、前年同期比 5.0%減少し 6,206億円となりました。このうち国内売上高は、前年同期比 3.0%減少の3,090億円となり、海外売上高は、前年同期比 7.0%減少の 3,115億円となりました。
部門別では、コンシューマ部門は、携帯電話機やテレビなどが増加したものの、デジタルカメラの競争激化や価格下落により、前年同期比4.0%減の3,160億円となりました。
コマーシャル部門は、大型エアコンなどの売上増加により、前年同期比 4.2%増の550億円となりました。
コンポーネント部門は、太陽電池などの増加はあるものの、新潟県中越地震で半導体子会社が被災したことによる半導体の売上減少や、セイコーエプソン(株)との液晶事業の統合の影響などにより、前年同期比9.1%減の2,304億円となりました。
利益面では、デジタルカメラなどのコンシューマ部門の売上減少や、新潟県中越地震で半導体子会社が被災したことによる機会損失などにより、営業利益は、前年同期比64.4%減の103億円となり、加えて地震災害損失138億円を計上したことにより、税引前利益は、118億円の損失、当期純利益は、176億円の損失を計上するに至りました。
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以上です。
なお、本コラムの第3回から第8回で取り上げた、三洋電機株式会社の開示資料は、以下のURLで閲覧できます。
http://sanyo.com/ir/jp/library/financialreports.html
本文は有限会社ナレッジネットワーク社ホームページの『カレントトピックス(災害時の開示)』に掲載された記事の転載となります。
筆者紹介
公認会計士 中田清穂 (なかた せいほ)
TKC全国会中堅・大企業支援研究会 顧問
TKC連結会計システム研究会・専門委員
著書
『内部統制のための連結決算業務プロセスの文書化』(中央経済社)
『連結経営管理の実務』(中央経済社)
『SE・営業担当者のための わかった気になるIFRS』(中央経済社)
ホームページURL
有限会社ナレッジネットワーク http://www.knowledge-nw.co.jp/
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