災害時の開示

第4回 三洋電機(適時開示-地震発生から約2ヶ月)

更新日 2011.04.01

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公認会計士 中田 清穂TKCシステム・コンサルタント
公認会計士 中田 清穂

災害による決算発表や報告書の期限延長に関する解説や、決算短信や有価証券報告書での記載事例を解説します。

 今回は、平成16年10月23日に発生した新潟県中越地震の際に、平成16年12月21日に発表された、三洋電機(株)適時開示報告を、解説したいと思います。

 以下の開示例の内容を整理すると以下のような項目が記載されています。

  1. 当該連結子会社の名称、住所及び代表者の氏名:新潟三洋電子株式会社など
  2. 災害の発生日時:平成16年10月23日
  3. 当該重要な災害が発生した場所:新潟三洋電子株式会社敷地内
  4. 当該重要な災害により被害を受けた資産の種類及び被害額並びにそれに対して支払われた保険金額
    • 資産の種類及び被害額:総額503億円
    • 上記に対して支払われる保険金額:なし
  5. 当該重要な災害による被害が連結会社の事業に及ぼす影響:
    • 11月30日に、電気、水、空調、ガスなどのユーティリティが復旧
    • 12月6日より一部ラインで試作・評価ロットの投入開始。
      12月22日より一部ラインで生産再開予定。
    • 同社が通常操業に至っていないため、一部品種に関して、11月8日より、グループ内での代替生産を開始。
    • クリーンルーム内での一部のガス漏洩などに関して地域環境への影響はない
  6. 損益及び連結損益に与える影響額の見込額:約870億円

 以下が、実際の開示内容になります。

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新潟県中越地震による影響について

 平成16年10月23日に発生した新潟県中越地震によって操業を停止いたしておりました新潟三洋電子株式会社の現況及び当該地震が当社の損益及び連結損益に与える影響につきまして、下記のとおりお知らせいたします。

1. 当該連結子会社の名称、住所及び代表者の氏名

  • 名称 新潟三洋電子株式会社
  • 住所 新潟県小千谷市大字千谷甲3000番地
  • 代表者の氏名 窪田 徹哉

2.当該重要な災害の発生年月日
 平成16年10月23日

3.当該重要な災害が発生した場所
 新潟県小千谷市 新潟三洋電子株式会社敷地内において

4.当該重要な災害により被害を受けた資産の種類及び被害額並びにそれに対して支払われた保険金額

  • 資産の種類及び被害額
    機械及びその他(注1)  184億円 (内、除却簿価 117億円)
    棚卸資産         46億円 (内、除却簿価 46億円)
    復旧費用等(注2)    270億円
    設備投資           3億円
    -----------------------------
    計503億円
    (注1)機械及びその他には、リース設備を含んでおります。
    (注2)復旧費用等は、固定資産の解体・撤去費及び修繕費並びに立ち上げ費用等であります。
    (注3)上記金額は、平成16年12月21日現在の見込額であります。
  • 上記に対して支払われる保険金額:ありません。

5.当該重要な災害による被害が連結会社の事業に及ぼす影響

  • 11月30日に、電気、水、空調、ガスなどのユーティリティが復旧し、現在、一部生産再開に向けてのクリーンルーム内設備の復旧作業としてユーティリティへの繋ぎ込み及び装置の立ち上げを行っております。
  • 12月6日より一部ラインで生産に先立つ試作・評価ロットの投入を開始し、12月末に生産再開できるよう全力で取り組んでおりましたが、12月22日より一部ラインで生産再開の予定であります。
  • 同社が通常操業に至っていない事を受け、一部の品種(AV用MOS-LSI)に関しては、11月8日より、群馬(当社東京製作所)と岐阜(当社連結子会社である岐阜三洋電子株式会社)での代替生産を開始しております。
  • なお、クリーンルーム内での一部のガス漏洩や排水タンクからの一部排水漏洩がありましたが、いずれも地域環境への影響はないと考えております。
     これらの状況につきまして、関係行政当局及び地域住民に対して報告・説明を行いました。今後も引き続きモニタリング・調査を継続いたします。

6.当該重要な災害による被害が当社の損益及び連結損益に与える影響額
 当社の損益及び連結損益に与える影響の見込額は以下のとおりであります。

                単独損益   連結損益
  機械及びその他の被害額    -億円    184億円
  棚卸資産の被害額       -億円    46億円
  復旧費用等          -億円    270億円
  売上減少に伴う影響     160億円   370億円
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  計             160億円   870億円

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 なお、本コラムの第3回から第8回で取り上げた、三洋電機株式会社の開示資料は、以下のURLで閲覧できます。
http://sanyo.com/ir/jp/library/financialreports.html

本文は有限会社ナレッジネットワーク社ホームページの『カレントトピックス(災害時の開示)』に掲載された記事の転載となります。

筆者紹介

公認会計士 中田清穂 (なかた せいほ)
TKC全国会中堅・大企業支援研究会 顧問
TKC連結会計システム研究会・専門委員

著書
『内部統制のための連結決算業務プロセスの文書化』(中央経済社)
『連結経営管理の実務』(中央経済社)
『SE・営業担当者のための わかった気になるIFRS』(中央経済社)

ホームページURL
有限会社ナレッジネットワーク http://www.knowledge-nw.co.jp/

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