TKC全国会 中堅・大企業支援研究会(中大研)

掲載日:2010.09.13

グループ法人税制への対応のポイント

第2章 グループ法人税制と連結納税制度のメリット比較(1/2)グループ法人税制と連結納税制度の比較のポイント

税理士 畑中孝介
税理士 岡田淳

平成22年度税制改正において、グループ法人税制は連結納税制度を包括する概念になった。また、グループ法人税制の創設にあたり、連結納税の規定が大幅に導入されていること、連結納税制度の改正が行われたことを通じて両制度はかなりの面で統一化された。これらの改正を踏まえ、このままグループ法人税制を適用したほうが有利なのか、連結納税制度を採用したほうが有利なのかの判断ポイントを整理する。

メリット・デメリット比較の3つの視点

まず、比較のポイントとしては3つの視点から判断が必要となる。

  1. タックスメリット・・・税金面でのメリット。税額がどれだけ減少するかつまりキャッシュフローとしてグループ内に留保されるか
  2. ブックメリット(税効果メリット)・・・帳簿上のメリット。タックスメリットのほかに、税効果においてどれだけのメリットがあるか。
  3. マネジメントメリット・・・グループ全体の情報を集め、スケジュール等を確認することを通じ、子会社の情報が親会社に集約化される。集約化された情報を使って、グループ全体の税務面での最適化を図ることができるようになる。

通常はタックスメリットのみで判断してしまうケースが多いと思うが、ブックメリット・マネジメントメリットも意外に大きな影響がある。

グループ法人税制と連結納税制度の比較のポイント

(1) 今回の改正による制度の統一化

今回のグループ法人税制の創設と連結納税制度の改正によって、次の点も含め大半の点についてはグループ法人税制と連結納税制度が統一化された。

  1. 譲渡損益調整資産(グループ内の資産譲渡損益の繰延べ)
  2. 連結法人間の寄附金(全額益金不算入・全額損金不算入・帳簿価額修正)
  3. 受取配当等の全額益金不算入 

など

過去の連結納税セミナーでのアンケート結果を分析すると、連結納税導入の阻害要因として、

  • 70%を超える人が挙げていた「子法人の欠損金の切捨て」
  • 20%近い人が挙げていた「グループ内寄附金の損金不算入」

という、阻害要因の主要なファクターであるこの2点が改正された。

これに加え、グループ法人税制の導入で、グループに対する課税はおおむね統一化が図られたといえる。

また、景況感の悪化により欠損法人が増加している。連結納税の場合には所得通算ができるため、所得通算メリットもクローズアップされつつある。

前記の状況を踏まえて考えると、これから連結納税制度導入は一気に加速すると思われる。

(2) おもな相違点

両制度でことなる部分についてですが大きく分けると次の点になる。

まず1点目は、グループ法人税制については、あくまでも単体ベースの申告でそこにグループの要素を加えて申告するが、連結納税制度の場合にはグループ全体を1つの納税主体とするので、全体で1つの申告(連結申告)をすることが大きな違いである。

2点目は、グループ法人税制については強制適用であるが、連結納税制度の場合には任意適用(事前申請が必要)という点だ。

3点目は、連結納税制度における子会社の繰越欠損金および資産の時価評価である。

  • 5年以上長期100%保有法人
  • 当初から完全子法人として設立した法人等
  • 適格株式交換による完全子法人 など

以上の法人については、子法人の欠損金については、子法人の所得の範囲内で欠損金が使用可能となる(グループ法人税制・単体課税の場合と同じ)。また、資産の時価評価も不要となる。しかし、5年以内に買収した法人などは対象外となるので連結納税採用の場合には、欠損金の利用に制限が出たり、税負担が増加する可能性がある。

(3) 所得通算の有無とそれに伴う税額控除等への影響

ここが大きなポイントになるが、グループ法人税制の場合には所得通算ができないが、連結納税制度の場合には所得通算ができる。

また、それに伴い

  • 税額控除(試験研究費・外国税額控除)
  • グループ外寄附金

についても連結全体での計算となる。よって、各法人ごとに税額控除限度額を計算し、超過分については繰越しもしくは切捨てとなっていたが、グループ全体での計算の場合には、救済される部分が発生する可能性がある。特に、試験研究や寄附金が特定の法人に集中している場合などは、切捨て額が減少し多額のメリットが出る可能性があるので注意が必要となる。

(4) その他の相違点

また、細かい点として、中小特例の適用について、連結納税の場合、親法人の資本金が1億円超の場合には子法人も中小特例が不適用となる。一方、グループ法人税制の場合、親法人の資本金が5億円以上の場合には、子法人の中小特例が不適用となる。結果として、親法人の資本金が1億円超5億円未満の場合、連結納税を適用した場合には不利になる可能性がある。(図表1参照)

(図表1)単体法人税・グループ法人税制・連結納税制度の比較
  単体法人税 グループ法人税制 連結納税制度
グループの範囲 100% の資本関係にある企業グループ ( 個人や外国法人を頂点とする場合も対象 ) 100% の資本関係にある企業グループ ( 内国法人に限る )
申告 単体申告 単体申告 連結申告
制度の適用 強制適用 選択適用
親・子の所得通算 不可 可 (欠損金の持ち込みも可能)
中小特例の適用 自らの資本金で判定 自らの資本金等が 1 億円超もしくは親会社の資本金が 5 億円以上の場合は適用外 親会社の資本金が 1 億円超の場合適用外
受取配当等 支払側:損金不算入
受取側:益金不算入
(負債利子控除の適用あり)
支払側:損金不算入
受取側:益金不算入
(負債利子控除の適用なし)
支払側:損金不算入
受取側:益金不算入
(負債利子控除の適用なし)
譲渡損益調整資産 譲渡時に譲渡損益に課税 対象資産を再譲渡するまで課税を繰延べ 対象資産を再譲渡するまで課税を繰延べ
グループ内寄附金 支払側:一部損金不算入
受取側:全額益金算入
支払側:全額損金不算入
受取側:全額益金不算入
支払側:全額損金不算入
受取側:全額益金不算入
(5) メリット・デメリットのまとめ

以上がポイントの整理になる。ここからは筆者の私見になるが

  1. グループ全社が黒字または赤字の場合・・・所得通算メリットなし
  2. 5年以内に買収した会社がある。
  3. 親法人の資本金が1億円超5億円未満

これらを除くと大概のグループで連結納税制度が有利になるのではないかと推測される。

本文は『旬刊経理情報(6月1日号No.1249)』に掲載された記事の転載となります。

筆者紹介(畑中孝介)

税理士 畑中孝介(はたなか たかゆき)
TKC連結納税システム推進プロジェクト会員
TKC企業グループ税務システム小委員会委員

著書
『税務に強い会社は成長する!!』(大蔵財務協会)
『平成22年度 すぐわかるよくわかる 税制改正のポイント』(TKC出版)
『企業グループの税務戦略-グループ法人税制・連結納税制度の戦略的活用-』(TKC出版)

システム・コンサルティング事例
株式会社大和証券グループ本社様

ホームページURL
税理士法人 無十(武藤会計事務所)

筆者紹介(岡田淳)

税理士 岡田淳(おかだ じゅん)
TKC連結納税システム推進プロジェクト会員
TKC企業グループ税務システム小委員会委員

ホームページURL
久徳会計事務所

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