従業員の採用を考えています。トライアル雇用という制度があると聞きましたが、詳細を教えてください。(飲食店経営)

 「トライアル雇用」とは、事業主が原則3カ月の間に対象となる労働者の適性や、業務遂行の可能性などを実際に見極めたうえで、本採用するか判断できる制度です。

 労働者にとっては実際に働くことを通じて、企業が求める適性や能力を把握することができます。厚生労働省はトライアル雇用を推進するために、試行雇用(トライアル雇用)奨励金制度を設けました。詳細は以下のとおりです。

【対象となる労働者および要件】
 公共職業安定所に求職申し込みをしている者のうち1~7のいずれかに当てはまり、かつA~Hにあげた全ての要件を満たす者です。

  1. トライアル雇用開始時に45歳以上である中高年齢者
  2. トライアル雇用開始時に45歳未満の若年者等(下記個別要件あり)
  3. 母子家庭の母や生活保護を受けている者
  4. 季節労働の特例受給資格者であって、トライアル雇用開始時に65歳未満である者
  5. 中国残留邦人等永住帰国者
  6. 障害者
  7. 日雇い労働者・住居喪失不安定就労者・ホームレス
  1. 公共職業安定所長が認めた者をハローワークの紹介によりトライアル雇用として雇い入れたこと
  2. ハローワークから職業紹介を受ける以前に、当該職業紹介に関わる対象労働者を雇用することを約していないこと
  3. 雇用保険適用事業主であること
  4. トライアル雇用を開始した日の前日から起算して6カ月前の日からトライアル雇用を終了した日までの間に、事業主の都合により解雇等をしたことがないこと
  5. トライアル雇用を開始した日の前日から起算して過去3年間に、当該トライアル雇用に関わる対象労働者を雇用したことがないこと
  6. 奨励金の支給を行う際に、前々年度より前のすべての保険年度において、労働保険料を納入していること
  7. トライアル雇用を開始した日の前日から起算して3年前の日から奨励金の支給決定を行う日までの間において、不正行為により奨励金および各種給付金の不支給措置を受けたことがないこと
  8. トライアル雇用を実施する事業所において、トライアル雇用された労働者の出勤簿、賃金台帳等を整備・保管し、試行雇用労働者に支払うべき賃金を支払期日までに支払っていること

 この他にもいくつかの要件があります。詳細は最寄りのハローワークにお問い合わせください。

 なお、45歳未満の求職者向けは「若年者等トライアル雇用」とよばれており、以下のいずれかの要件を満たす必要があります。(1)学校卒業後未就職など職業経験がない人(2)職業経験が浅く、経験のない職種または業務で長期的に安定した就業を希望する人(3)過去の相当期間失業している人

【受給までの手続き】
 雇い入れから2週間以内に、「トライアル雇用実施計画書」を対象労働者の同意を得たうえでハローワークに提出します。3カ月間のトライアル雇用が終了後、またはトライアル雇用期間中に常用雇用に移行したことにより、トライアル雇用が終了した日の翌日から起算して1カ月以内に「トライアル雇用結果報告書兼試行雇用奨励金支給申請書」とさきの計画書の写し、および当該労働者の出勤簿・賃金台帳等の写しを添えてハローワークに提出します。

【奨励金の金額】
 対象労働者1人につき、月額4万円×最大3か月間=12万円まで支給されます。トライアル雇用制度は、事業主・労働者双方にとって多くのメリットがあり、一定の条件を満たせば3カ月間奨励金が支給される便利な制度です。活用のご検討をおすすめします。

掲載:『戦略経営者』2012年8月号