米トレーサビリティ法が完全施行されたと聞きました。消費者に産地情報をどのように伝えればよいのでしょうか。(製菓業)

 通称・米トレーサビリティ法(以下米トレサビ法)は、昨年10月1日から始まった「取引等の記録の作成・保存」と、今年7月1日から始まった「産地情報の伝達」の義務化をもって完全施行されました。同法が制定されたきっかけは、2008年に起きた事故米(汚染米)不正転売事件です。「法律が未整備のために事件の全容を解明できなかった」という反省に立ち、農林水産省は翌年に急きょ米トレサビ法を制定しました。対象は、生産者から販売、製造、輸入、加工、提供(外食産業等)など、対象品目(米・米加工品)を扱う事業者すべてです。米は、うるち米だけでなく、もち米も対象になります。

1.取引等の記録の作成・保存
 まず米・米加工品を(1)取引(2)事業所間の移動(3)廃棄などを行った場合に、その記録の作成と保存が義務付けられました。その形式は帳簿のような紙、もしくはPCデータなどの電子媒体でも構いません。事業所や店舗ごとか、本社で一括管理して行います。一般消費者への販売および消費者向け商品の廃棄の場合は対象外です。記録事項は、品名、産地(米は産地、米加工品は原料米の産地)、数量、年月日、取引先名、搬出入の場所等です。

2.産地情報の伝達
 そして米トレサビ法で最も重要な点が、消費者への産地情報の伝達です。米加工品の原料米の産地表示と、事業者間での伝票や容器・包装への記載が義務付けられました。米飯類、もち、だんご、米菓子などは義務表示ですが、「米粉パン」「甘酒」「みりん風調味料」「米発酵調味料」や、事故米のときに問題となった「米から作られたでんぷん」などは対象外です。

 JAS法では、店内加工品やバラ売り商品、店頭販売商品には表示義務はありませんが、米トレサビ法ではすべて表示対象です。米飯類、もち、だんご、せんべいなどを裸売りしていても表示しなければなりません。配達やインターネット販売商品も表示対象です。

 表示する代わりに、ホームページでの公開や、お客様相談室、店員による対応なども認められてはいますが、例えばホームページの場合、商品の製造年月日やロット番号から産地情報を把握できる仕組みを設ける必要があるなど、厳しい条件が定められています。

 もう一つ表示行政で画期的なことは、外食・中食産業にもご飯類の原料米の産地表示が義務付けられたことです。ご飯類といっても、白飯だけでなく、おかゆ、チャーハン、カレーライス、オムライス、ドリア、パエリアなども対象です。飲食店では、お客様に分かるようにメニューや張り紙などで表示しなければなりません。なお業態ごとの具体的な伝達方法は、農水省のホームページで公開されているパンフレットをご確認いただくことをおすすめします。

3.罰則
 罰則は非常に厳しく、記録の作成・保存違反、産地情報伝達違反および立ち入り検査拒否は、直罰で罰金50万円です。消費者への表示違反は、勧告→命令→罰金という流れです。せんべいなどの加工品は、外国産米の表示があっても、値段が安ければ消費者の抵抗は少ないかもしれませんが、いくら安い飲食店でも、ご飯類に外国産米が使われることに対し、消費者の抵抗感は強いでしょう。表示違反が即罰金ではないといっても、日本人の主食である米の産地偽装など許されるはずがありません。法令順守を心がけましょう。

掲載:『戦略経営者』2011年8月号