スマート行政DX推進を支援する

情報誌 「新風」(かぜ)

2025年4月号Vol.138

【スマート行政最前線】新地方創生交付金で一段と加速するデジタル化

株式会社TKC 自治体DX推進本部 大森明日香

 政府は、地方創生2・0推進に向けた総合的な支援策として、「新しい地方経済・生活環境創生交付金(新地方創生交付金)」を創設しました。中でも、「デジタル実装型」は、デジタル技術を活用した地域の課題解決や魅力向上に資する取り組みを支援する制度です。
 以下に、制度内容や採択状況などをご紹介します。

選べる四つの支援タイプ

 新地方創生交付金デジタル実装型は、以下の4種から選択、申請できます。

タイプ1:優良モデル導入支援型

 窓口入力支援システムやオンライン申請システムなど、他の地域で確立された優良モデル・サービスを迅速に横展開する取り組みが対象。対象経費はサービス実装に伴うシステム構築費のほか、普及・定着のための広報や改善に向けた調査等も対象。

タイプV:先進的デジタル公共財活用型

 複数団体で共同利用する取り組みが対象。例えば、ブロックチェーン・AI等の活用や、新しい用途でのマイナンバーカードの活用など。また、まだ広く普及するには至っていないものの、将来的には複数団体が共同で活用できる可能性を持つサービス群も対象。

タイプS:デジタル行財政改革特化型

 交通や子育て・児童福祉など主な改革分野のうち、将来的に国・地方の標準的なデジタル基盤整備につながるものが対象。デジタル活用を阻害する規制・制度の見直しといった、先導的な取り組みの推進などに活用できる。

タイプ0:デジタル実装伴走支援事業

 地域課題の設定や、どの地域課題にデジタル実装ができるのか分からない場合は、国(委託事業者)による通年の伴走支援を受けることができる。
 伴走支援を通して、タイプ1の申請に向けた事業計画策定の準備を行う。

 採択では、それぞれ加点要件となる優遇措置があります。例えば、マイナンバーカードの利活用を含む事業は加点要件の一つです。加点を受けた場合は、それに即したシステムを調達する必要があります。採択後の変更はできないため、事業目的に適した加点要件を選択することが重要です。
 また、採択事業は交付金申請時に設定したKPIを用いて複数年にわたって効果を検証し、その結果は地方公共団体のホームページ等で公表します。
 全国の実装事例やKPIは、内閣官房と内閣府が運用するデジタル田園都市国家構想データ分析評価プラットフォーム「RAIDA(レイダ)」のデジタル実装事例から確認できます。

サービス改善が3割

 これまでに採択実績が最も多いのがタイプ1です。図表は、2023年度補正・2024年度当初「デジタル田園都市国家構想交付金」から、タイプ1の採択状況を示したものです。事業件数は1,532事業(1,265団体)で、分野別では「行政サービス」が全体の約3割を占めています。内訳を見ると、主に窓口入力支援やオンライン申請、証明書コンビニ交付などのシステムが採択されています。
 こうした取り組みは住民の利便性向上だけでなく、申請書様式の見直しやバックヤード側の業務フローの変更など業務改善の機会ともなります。一例として、以下にTKCシステムの活用例を紹介します。

デジタル田園都市国家構想交付金(2023年度補正・2024年度当初)事業 タイプ1 分野別採択結果

かんたん窓口システム

 「かんたん窓口システム」は、来庁した住民の手続き案内や申請書作成を支援するシステムです。書かない窓口の運用方法は、自治体によって〈申請書に何度も同じ情報を書かせない〉や、〈ワンストップ窓口で手続きを集約する〉など異なります。かんたん窓口システムは、いずれの運用方法にも対応しています。これにより、最初はスモールスタートでサービスを開始し、将来的に対象窓口・手続きの拡大や総合窓口に移行するなど、柔軟な窓口サービス改善が行えます。

スマート申請システム

 「スマート申請システム」は、申請・認証から決済、交付まで、一連の行政手続きをオンライン上で完結できる汎用電子申請システムです。住民・事業者向けの各種行政手続きの申請のほか、来庁予約やアンケートなど幅広く活用でき、自治体によっては2,000を超える手続きに運用されています。さまざまな給付金の申請受付など突発的な事業にも迅速な対応が可能で、職員の負担軽減が図れます。
 これらシステムの活用には、庁内での活用事例の共有や継続的な運用見直しが効果的です。また、システムへの入力補助に基幹業務システムのデータを活用することで、業務効率化が図れます。現状ではRPAツールの利用などが必要ですが、システム標準化後はデータ連携仕様が共通化され、システム間の自動連携も期待できます。

◇   ◇   ◇

 『第1回新しい地方経済・生活環境創生会議 これまでの地方創生の成果と課題』では、「全国どこでも誰もが便利で快適に暮らせる社会」の実現に向け、引き続きデジタル実装の取り組みを深化させていくことが重要とあります。市区町村には、さまざまな分野で一層のデジタル化を進めることが期待され、これを支援すべくTKCも新たな調査・研究を始めています。

参考資料
◯「新しい地方経済・生活環境創生交付金(デジタル実装型TYPE1,V,S)制度概要」(内閣府/内閣官房/デジタル庁)
◯「新しい地方経済・生活環境創生交付金(デジタル実装型)Q&A集」(内閣府/内閣官房/デジタル庁)

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