2025年4月号Vol.138
【ユーザー事例】取引事業者と職員の手間・コスト削減へ
財務会計(電子請求書サービス連携) > 群馬県伊勢崎市
情報政策課 課長 細野 繁 氏 / 事務管理課デジタル化推進係 係長 金井 亮 氏 /会計課 課長補佐 松本美恵子 氏 / 審査係 係長 齋藤実幸 氏
- 住所
- 群馬県伊勢崎市今泉町二丁目410番地
- 電話
- 0270-24-5111
- 面積
- 139.44平方キロメートル
- 人口
- 211,834人(2025年3月1日現在)

──1月から財務会計システムと電子請求書サービスの連携が始まりました。
金井 伊勢崎市では、必要に応じてシステム更改の際に「伊勢崎市デジタル化推進本部」の下に主管課を集めたワーキングチームを設置し、課題抽出や仕様の決定などを行っています。2023年度に「次期財務会計システム導入事業電子決裁ワーキング」を発足し、電子決裁機能を持つ財務会計システムの導入後の運用を検討する中で、電子請求書サービス連携に着目したのがきっかけでした。
松本 予算執行伝票を電子決裁で回送するには紙の請求書をスキャナーで読み込む手間がかかり、ワーキングチームからも「これではDXの恩恵を実感できない」という声がありました。
そんな折、TKCから「財務会計システムと電子請求書サービスを連携することで、支出命令書などの効率化が図れる」との提案がありました。これならばスキャナーの読み込みがなくなり、入力作業の簡素化も期待できると判断し、TASKクラウド公会計システムとともに電子請求書サービスの採用を決めました。
反響の大きさに驚き
──サービスの実用化に向け、どのような準備をされたのでしょうか。
細野 電子請求書サービス連携の仕組みは、事業者がインターネット経由で電子請求書サービスに請求データを登録すると、翌日朝に市の財務会計システムへデータが自動連携される──というものです。
新たな試みを導入するにあたっては、十分に庁内コンセンサスをとる必要があります。
そこでデジタル化推進本部で合意形成を図るとともに、全庁的な事務を統括する4課(会計課、契約検査課、事務管理課、財政課)と情報政策課でワーキングチームを立ち上げ、相互に連携して導入準備を進めました。
齋藤 利押印慣行を見直す際に財務規則を改正していたので、電子請求書サービス連携もこれに沿って運用体制や請求書の記載項目を決めました。また、事前に電子請求書取引に関する操作マニュアルを作成するなど、職員や取引事業者が混乱せずに円滑にサービスを活用できる環境整備も行いました。
まず、電子化の趣旨に賛同していただけた事業者4社に先行登録をお願いし、主に物品購入と役務の提供に関する請求書を対象として今年1月からスモールスタートしました。
いま登録事業者の拡大にも取り組んでいます。一例として、23年度と24年9月末までに工事以外の科目で支払い実績があり、債権者登録のある事業者・約1,000社に案内DMを送付しました。また、ホームページに操作マニュアルなどを掲載したほか、2月にはWeb説明会も開催しました。
──反応はいかがでしょうか。
松本 取引事業者の方から「郵送費などのコスト負担が増す中で、ありがたい取り組み。ぜひ他団体にも広めてほしい」という声が届くなど、反響の大きさに驚いています。
小規模な事業者ほど柔軟に取り組みやすいようですが、その分、電子請求書システムの初期設定などデジタル化に関する質問も多いですね。請求書の電子化率の増加に比例して、職員の作業負担の軽減につながる──と考えると、事業者の皆さんへの導入支援はその〝第一歩〟です。そのため、操作マニュアルや操作方法の動画を提供するだけでなく、問い合わせにはコールセンターのオペレーターのように一つ一つ懇切丁寧に対応しています。
一方、職員からは対象の請求データを選択するだけで財務会計システムに一定項目が自動転記されるため「楽になった」と評価の声が寄せられています。これまでの紙の請求書では〈郵送物を開封して内容を確認し、スキャンして、データをシステムに入力する〉作業に10~20分程度かかっていましたが、いまでは5分程度になりました。
齋藤 庁内で取り扱う伝票枚数は年間7万件ほどあり、請求書の電子化を進めることで、職員が予算執行伝票の作成にかける時間の〈30%~50%削減〉を目指したいと考えています。
デジタル化のメリットを庁外にも
金井 定型事務にかかる時間を減らすことで、職員がクリエイティブな仕事にシフトできるようになると期待しています。また、請求書を発行する側の手間・コストの削減やペーパレス化の支援ともなり、取引事業者のDX促進の一助になるとともに行政デジタル化のメリットを地域社会も共有できる取り組みだと思います。
今後の計画としては、伊勢崎市では、これからの市役所のあるべき姿の一つとして、〈行かない・迷わない・待たない・書かない〉窓口を目指した改革に取り組んでおり、今年1月から総合窓口サービスも開始しました。今後、このサービス拡充を図る考えです。
細野 これまで10年ほどかけて進めてきた大規模なシステム更新もひと通り完了し、次はフロントからバックオフィスまでの一貫した業務最適化を進めていく計画です。
今回の取り組みは会計課が主体的に取り組みました。これは他には類を見ないケースだと思いますが、現場の高い課題認識があったからこそ的確な解決策の立案、実行につながりました。現場の課題をどう捉えていくかは、DX推進のポイントだと思います。これからも業務の現場と情報担当部門が相互に連携しながら、デジタル化による新たな価値創造を目指したいと考えています。

左から、細野課長、松本課長補佐、齋藤係長、金井係長
掲載:『新風』2025年4月号