BS11のテレビ番組「ドキュメント戦略経営者」の主題歌『わたしの舟』を歌うサトウヒロコさん。1999年以来、シンガーソングライターとして活躍してきたが、現在は故郷の栃木県壬生町に住む。自身も会社を経営するサトウさんに、シンガーとしてのこれまでの道のりと、『わたしの舟』に託した思いを聞いた。

プロフィール
サトウ・ヒロコ●1981年栃木県生まれ。高校2年生だった1998年、路上ライブを目にしたことをきっかけにギターを手にし、歌手の道へ。99年デビュー。2004年『愛が私を救ってくれるの』がテレビドラマの主題歌に採用。08年故郷の壬生町に移住してからは、地域に密着した活動にも力を入れている。現在のレーベルはよしもとミュージック。株式会社cume代表取締役。

 音楽に興味を持ったのは、埼玉県川越市の繁華街で路上ライブを見た時でした。当時、池袋の高校に通っていて、川越市内にあった寮を抜け出し、夜ごとストリートミュージシャンの演奏を聴きに出かけました。それまで、精神的に不安定だった私ですが、歌声を聴いているうちに、「ここにいてもいいんだよ」と言われている気持ちになったのです。

 いつしか「私も同じことをしたい」と強く思うようになり、実家にあったギターを引っぱりだし、見よう見まねで曲をつくりはじめました。若さって無敵ですね。1カ月で2曲をつくり、さっそく路上でギターを抱えて歌いだすと、酔ったおじさんがなぜか1,111円をギターケースに放り込んでくれました。夢を託されたような気がしました。

東京から故郷・壬生町へ

 その年の冬に、池袋駅北口の地下道で演奏していると、大手レコード会社の方にスカウトされました。17歳でした。そして、翌1999年にデビューしました。

 しかし、ミュージシャンとしての基礎ができていないままのデビューはつらく、3年間の在籍後、再び路上に戻りました。音楽づくりに励んでいるうちに、著名な音楽プロデューサーの知遇を得て、作曲の手法や歌唱法などの深い知識を勉強させていただきました。

 2004年、『愛が私を救ってくれるの』がテレビドラマ『DeepLove』(テレビ東京系)の主題歌に採用され、高い評価をいただきました。そうしたなか、自身が体を壊したこともあり、08年、10年間過ごした東京から故郷である栃木県壬生町へ移り住みました。

 故郷はあまり好きではありませんでしたが、少しは大人になった私があらためて地元を概観した時、自分の知らない魅力が見えてきました。ライブ活動で全国を回りながら、地元に密着した活動を行ううちに、11年には壬生町から「かんぴょう大使」に任命され、13年に栃木県知事から「とちぎ未来大使」の委嘱を受け、さらに13年には「壬生・ふるさと夢大使」に就任しました。19年東京都のウェブサイト「東京動画」に出演したのをきっかけにテレビなどの仕事も増え始め、22年には、とちぎ国体ではテーマ曲や清涼飲料水CM曲の歌唱も担当。仕事の幅も広がりはじめています。

心中の大切なものを紡ぐ

 22年、BS11のテレビ番組「ドキュメント戦略経営者」の主題歌に『わたしの舟』を提供しました。経営者の方々の厳しさや孤独を、私なりに表現したつもりです。ほとんどがAメロで、サビは「ラブラブラブラブ」の繰り返しという楽曲の構成も、経営者の心中にある大切なものを「愛」に置き換え、それを「紡ぐ」気持ちで制作した結果です。

 かくいう私も、22年に株式会社cumeという会社を立ち上げました。顧客に対し、きちんとしたアウトプットを提供するには、会社という組織体制にすることが大事だと考えたからです。本業の音楽プロデュースに加えて映像制作や広告デザイン、HP制作なども請け負える体制を整え、今年3期目を迎えました。アーティスト、経営者の2面性こそがcumeの強みなので、それをどう生かしていくかが課題です。

 経営者としての自覚が出てくるにつれて、「ドキュメント戦略経営者」に出演される経営者の気持ちがわかりはじめ、また、伴走支援してくれる顧問の荻美紀税理士を大切な存在として実感するようになってきました。

 荻税理士には『ヒロコは会社を作った時点で社会貢献をしている。もっと胸を張って思いっきりやりなさい』と言っていただけたことが心に刺さっています。6月からはクラウドソフト(FXシリーズ)を導入し、証憑保存機能を活用した仕訳の効率化にトライする予定です。荻税理士の支援のもと、『継続MASシステム(※)』で事業計画を策定し、cumeがより進化していけるよう頑張っていきます。

TKC『継続MASシステム』…経営者のビジョンに基づいた「中期経営計画」と、次年度の業績管理のための「単年度予算」、「短期経営計画」の策定を支援するシステム

(取材協力・荻税務会計事務所/本誌・高根文隆)

掲載:『戦略経営者』2024年6月号