ChatGPTを業務に生かしたいのですが、思うような結果が得られません。上手に使いこなすためのコツを教えてください。(造園業)

 期待通りの出力を得るには、的確な指示が必要です。心得ておくべきは、一発で完璧な答えを求めようとしないことです。複数回のやり取りを経て、徐々に望ましい解に近づけていきます。

 指示文は「プロンプト」と呼ばれ、4つの要素で構成されます。すなわち「命令」「文脈」「入力データ」「出力形式」で、全般的に大事なのは「具体的に伝える」ことです。

「命令」とは「……を書いて」「分類して」「要約して」といった作業依頼です。

「文脈」は、その指示を出す背景や前提、理由に関する言及です。例えば、「リンゴとは何か」と聞けば、「リンゴは木に実る果物で、丸く……」と返ってきますが、前提として「人間にとって、リンゴとは」と加えれば、栄養価など人間に関係しそうな説明をします。「動物にとって」「農家にとって」と違う言葉に変えると説明も変わるように、文脈の設定は重要です。

「入力データ」は、AIに処理してほしいデータや情報を指します。要約してほしい長文などがそれに当たります。

 最後に「出力形式」に関し、箇条書きか表形式かといったフォーマットを伝えることでより適した結果が望めます。最近は多様なコンテンツに対応する「マルチモーダル化」が進み、エクセルや画像で出力できる生成AIも増えてきました。

 指示文を洗練していく作業を「プロンプトエンジニアリング」と呼びます。具体的なテクニックを見ていきましょう。各構成要素を明確にするために、プロンプトの最初に「命令」の内容を書き、続く「文脈」や「入力データ」を複数の"(ダブルクオーテーション)で区切るやり方が推奨されます。例えば、冒頭に「以下の文章を要約して」と記入後、すぐに文章を入力せずに、"""で区切ってから打ち込み、文末にも"""を入れます。するとより高精度の出力が期待できます。

 やや高度なテクニックとして、「ゼロ/フューショット」があります。例えば、童話「桃太郎」の作中のキーワードをChatGPTに選んでもらうとします。「キーワードを抽出して」だけだと、「桃太郎」「征伐」「宝物」といった具合に、頻出単語などが脈絡なく羅列されてしまいます。そうした、何も例示せずに単に指示だけする「ゼロショット」に対し、「キーワードを抽出して。①登場人物……桃太郎など ②道具……きび団子など」と数例を示すやり方を「フューショット」と呼びます。後者の場合、「①桃太郎 鬼 犬②きび団子 打ち出の小づち……」のように例示の規則性などにならって抽出されます。

 このほか、「魔法の呪文」とも呼ばれるキーフレーズ、「ステップバイステップで教えて」も有用です。これを指示文に組み込むと、ChatGPTも「ステップバイステップで考えますね」と応じ、順序だてて説明してくれます。特に複雑な構造の問題には有効です。ChatGPTを提供するオープンAIのサイトに掲載されたプロンプトの「ベストプラクティス」も参考になるかもしれません。

掲載:『戦略経営者』2024年3月号