4月1日以降、自転車利用者のヘルメット着用が努力義務化されるそうですが、自転車通勤している従業員がいる場合、どのように対応すべきでしょうか。(測量業)
改正道路交通法の施行により、2023年4月1日から自転車利用者にヘルメット着用が努力義務化されました。3月末までは、13歳未満の子に対して保護者がヘルメットをかぶらせるように努めること、とされていましたが、4月以降は「自転車を運転するすべての人」が対象となります。運転する人だけでなく、同乗する人も含みます。
この改正により、自転車通勤を認めている企業は、特に留意する必要があります。通勤時の自転車利用については、従業員本人の責任ですが、従業員を通勤させて事業活動を行っていることから、事業者にも一定の社会的責任があります。自転車通勤を認めている企業では、「自転車通勤規程」等を設けているはずですが、自転車の安全利用のための情報提供や研修等を改めて実施する必要があります。
オフィスまで自転車で通勤していなくても、自宅から最寄り駅まで自転車を利用しているケースも考えられます。よって、全従業員に対して、自転車運転時のヘルメット着用の努力義務化について周知してください。
自転車事故で死亡した人の約7割(2017年から21年までの東京都内における自転車乗用中死者の損傷部位の割合)が、頭部に致命傷を負っています。また、ヘルメットの着用状況による致死率をみると、着用していない場合の致死率は、着用している場合と比較して約2.3倍も高くなっています。こうしたデータを踏まえると、頭部を守るヘルメット着用の大切さがわかります。
購入補助制度も有効
もっとも、自転車ヘルメットというと、競技用のスポーティーなタイプをイメージする人が多いかもしれません。しかし近年は、ツバのついたタイプや帽子型など、さまざまなデザインやカラーがラインアップされており、サイズ等も豊富に用意されています。
ヘルメット着用について、従業員の任意としている企業が多いかもしれませんが、法改正に基づき積極的な着用を促していくことが望ましいといえます。その際には「ヘルメット購入補助制度」を導入するのも有効です。例えば、春の社内交通安全キャンペーンと称して、自転車ヘルメット1つにつき上限を設け、実費もしくは3,000〜5,000円程度の現金給付を行う方法もあります。
従業員だけでなく家族分の購入も、福利厚生の一環として補助対象としてもよいでしょう。また、期間を限定することで、購買意欲をより高められるかもしれません。さらに、従業員が購入したヘルメットの写真を、企業の公式SNSや社内掲示板等に掲載すれば、交通ルールへの規範意識が高い企業として、ブランディング効果も期待できます。
ガソリンや電気エネルギーを消費しない自転車の利用は、環境負荷の軽減や、SDGs(持続可能な開発目標)への貢献にもつながります。自転車利用時のヘルメット着用により、従業員の安全を守るとともにSDGsに貢献できると考えれば、企業にとって悪い話ではありません。キャンペーンやヘルメット購入補助制度等をうまく活用し、従業員自身にメリットを感じてもらいつつ推進するのが得策です。