2003年の設立以来、地場の独立系人材派遣会社として成長を続けるアイエーイー。西村達也社長が実践する経営戦略を高久卓也顧問税理士がサポートする体制で荒波を乗り越えてきた。特にここ数年の業績は出色で、静岡県内での存在感はより一層増しつつある。
──創業の経緯は?
西村 個人事業主として、鉄工所などからの仕事を人を雇って請け負っていたのですが、その請負先からの仕事がなくなってしまったのを契機に、前職の延長線上で「人を雇って働いてもらう」仕事をしようと人材派遣業を立ち上げました。
──とはいえ、まったくの畑違いだと思いますが……。
西村達也社長
西村 はい。手探りの状態で、当初はひどいものでした(笑)。雇った人もさまざまで、だまされたりもしましたね。それでも、当時は専門性の高い26業務の派遣しか認められていなかったので、設計や開発など技術職を中心にスタッフを募って自動車産業などからのニーズに応えることで徐々に取引先を拡大していきました。創業の翌年の2004年には製造業への派遣が解禁されたこともあり、新規の営業マンを採用して、さらに営業を強化しつつ、次第に会社として軌道に乗っていったという感じです。
──その後は順調に?
西村 いえ。2008年のリーマンショックの際には、大変な目にあいました。派遣先の製造業が壊滅状態で、技術職もどんどん切られていき、年商は4億円から1億数千万円へと激減しました。ただ、当時、医薬品メーカーへの派遣も行っていて、ここがほぼ唯一残ったことで、かろうじて会社として存続できたという状況でした。
──どのように苦境を乗り越えましたか。
西村 とにかく営業活動を強化して、取れる仕事はなんでも取ろうとがむしゃらに動きました。結果として製造業への派遣が増え、それが現在の業容へとつながっています。
──リーマンショック以降の売上高の伸び率はすごいですね。理由は?
西村 特別なことをやったわけではありませんが、強いて言えば、人を増やしながら、社内の風通しを良くしました。当時は、技術と製造の営業担当をヘッドにした縦割り組織だったので仕事に対する派遣スタッフの柔軟な割り振りができていませんでした。そこで、2人の営業担当の仕事の境目をとっぱらい、双方のスタッフが技術と製造を行き来することができるようにしたのです。結果、幅広く効率的に人の割り振りができるようになり、たとえば「辞めたい」という派遣スタッフにはほかの仕事を紹介してつなぎとめることも可能になりました。こうすることで、必然的に売り上げが大きくなっていきました。
──現在、どれくらいの派遣スタッフを抱えておられますか。
本社の入る
エクセルワードビル静岡
西村 660人くらいで、派遣先は約200社に上ります。派遣スタッフの割には派遣先の数字が大きいと思います。
──なぜでしょう。
西村 大口の派遣先へ大量のスタッフを派遣した方が効率はいいのですが、当社は少人数を多くの会社に派遣するスタイルをとっています。リーマンショックの際に、医療メーカーとの仕事があったおかげで命拾いした経験があるので、なるべく取引先を分散してリスクヘッジしたいとの思いがあるからです。まあ、これまで大手企業とはあまり縁がなかったというのもありますけどね(笑)。
──他社にない強みは?
西村 コーディネーター(採用担当者)が、派遣先の現場をあらかじめ視察するようにしています。リアルな情報を派遣スタッフに伝えるためです。加えて、人選も慎重に行っているので、ミスマッチが減り、結果的に派遣先の信頼感の獲得につながっているのだと思います。派遣スタッフへのケアとしては、法律で定められているスキルアップ支援はもちろん、会員制リゾート施設が利用できる福利厚生制度もあります。あるいは、スマホで登録してウェブ上で前借りできる「即払い」サービスも完備しています。
PXシリーズの活用で安全な労務管理を実現
──高久先生との関係は?
西村 創業時から税務顧問をお願いしています。経理が分からず困っていたところに、共通の知人から紹介いただいたという経緯です。当初からお世話になっているので、ほかの税理士との比較はできませんが、税務や会計以外の部分でも相談に乗っていただいてる経営のパートナーという感じですね。
高久卓也顧問税理士
高久 そう言っていただけるとうれしい限りですが、西村社長には当初から非常に素直に私の提案を受け入れてもらいました。たとえば、創業と同時に『戦略財務情報システム(FX2)』『戦略給与情報システム(PX2)』『戦略販売・購買情報システム(SX2)』といったTKCシステムをフルセットで導入したのもそう。これによって、緻密な業績管理や派遣業特有の複雑な給与計算も可能になりました。『PX2』は現在『PX4クラウド』にバージョンアップして、複数人による分散入力を実現。それこそ使い倒している状況です(笑)。
──どのように?
高久 いわゆる販管システムである『SX2』で派遣先別(部課別)の売り上げや利益の状況を把握し、それと連動する形の『PX4クラウド』では、やはり派遣先別(部課別)さらには給与支払いの「締め日」別のデータの把握を基礎情報としながら、各人の給与計算を行っています。当然のことですが、派遣先の会社それぞれで給与や残業の計算方法などが違うので、手作業でやるとなると大変な作業量になりますからね。『PX4クラウド』を活用して人事管理をシステム化することで、スムーズに毎月の給与支払いができています。
──他社の賃金体系を一括して管理するわけですから、大変でしょうね。
西村 何しろ派遣スタッフ660名、派遣先200社ですからね。そうした複雑な状況にもかかわらず。当社は社会保険労務士と契約していません。その分を『PX4クラウド』と高久先生、そして当社の経理スタッフがカバーできているからです。給与、社会保険届出関係、労働保険料なども全部PXで計算・作成することができ、法律に即した安全な労務管理が可能ですからね。
──一方、『FX2』はどのように使われていますか。
高久『PX4クラウド』の使い方があまりにも複雑なので、『FX2』とはあえて連動させていません。『FX2』では、人材派遣事業のほかにもLEDビジョン広告事業や不動産事業、駐車場賃貸事業なども手掛けておられるので、それぞれを部門として損益管理を行っています。ちなみに『FX2』と『SX2』は部門別で連動させています。
──ところで、芸人のハリウッドザコシショウさんを放送中のテレビCMに起用されていますよね。
西村 故郷が地元の静岡市清水区ということで、ある伝手(つて)をたどってアプローチしたら快く引き受けてくださいました。2018年からザコシさんを主役にしたストーリー性のあるテレビCMを制作して流しています。大変反響が大きく、知名度アップという意味では効果抜群でした。とても感じのよい方ですよ。
──今後はいかがでしょう。
西村 来年度、創業20周年を迎えますので、ぜひ年商20億円を達成したいですね。業務内容としては「人材紹介」に力を入れたいと考えています。現在、当社では8つの求人媒体を使っていて、1カ月の応募は600名以上あるのですが、実際に採用できているのは50名程度。未対応の人たちを人材紹介という形でお世話できれば、大きく効率性がアップします。また、来期からは営業代行業者を使うなどして、さらに営業力をアップさせると同時に、一人ひとりの利益率を緻密に把握しながら利益重視経営による体質強化を目指します。現在、『PX4クラウド』からデータをCSVファイルに切り出し、各社員がどれだけ利益を生み出しているかが分かる一覧表を作成しているのですが、これも利益重視経営の一環です。
──将来的な目標は?
西村 年商50億円はひとつの目標です。というのも、静岡県の独立系の人材派遣会社で最も規模が大きいのが年商50億円くらいだからです。とりあえず目指すのは、静岡県のなかでのナンバーワンです。
(本誌・高根文隆)
名称 | 株式会社アイエーイー |
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設立 | 2003年3月 |
所在地 | 静岡県静岡市葵区御幸町11-30 |
売上高 | 18億5,000万円 |
社員数 | 692名(うち派遣社員660名 22年11月現在) |
URL | https://iae.co.jp/ |
顧問税理士 |
あおば税理士法人安東事務所
所長 高久卓也 静岡県静岡市葵区安東3-17-10 URL: https://maeno.tkcnf.com/ |