自社ホームページなどに独自の採用情報を展開する「採用広報」の導入を検討しています。基本となる考え方やコンテンツづくりのヒントを教えてください。(一般電気工事業)
採用広報とは、採用の質と数を成果指標として、求職者目線で企業の情報発信を行うことを指します。辞書にある言葉ではないため、明確な定義はありません。会社の状態によって、採用ブランディングや企業広報と重なることもあります。
採用広報が求められる背景には、労働力人口の減少に加え、以前に比べキャリアアップを見据えた短期間での転職が多くなり、入社前後の期待と入社後のギャップが離職率に大きな影響をおよぼす状況があります。また、求職者が会社選びの際に重視する軸が変化しているという事情もあります。
例えば、以前は給与や福利厚生など「条件」での転職が多かったのですが、ミレニアル世代やZ世代は、社会に貢献できるか、自分のやりたいことか、など「ミッションや熱量、カルチャー」で会社選びをする傾向が強くなっています。そのため、会社のユニークネスを出すべく、形式の決まりきった求人媒体経由だけではなく、自社としていかに発信していくかが求められています。
キャリアにどう役立てるか
採用広報についての意思決定は、もちろん経営者が行わなければなりません。指標は採用数であるため、実際の推進は人事や採用担当が行いますが、人事の通常業務では最新の広報やマーケティングノウハウがたまりづらいこともあり、会社の伝え方・見え方へ特化する広報がサポートとして入るのが良いでしょう。実際に推進に成功している会社は経営者から担当者までのコンセンサスをとった上で、外部から専門家を引き入れ実行することが多くなっています。
ではホームページなどに掲載する採用広報のコンテンツづくりはどうすればよいでしょうか。まず求職者が会社を判断する時に必要とする「4P」に従い、会社が多角的に見られているかを整理します。4PとはPhilosophy(理念・目的)、Profession(仕事・事業)、People(仕事・風土)、Privillege(特権・待遇)のことで、この分類にそって、認知→応募→選考→内定承諾というそれぞれのステップで必要となるコンテンツテーマを設定し、求職者へ届くようにします。コンテンツテーマは以下の順で決めていきます。
①態度変容
誰にどう感じてもらい、どう行動してもらいたいのかを決定します。
②響くネタ
求職者を引きつける自社の魅力を整理します。求職者の価値基準と不安要素にヒットするようなネタにしましょう。また、社会的に話題性のあるテーマに会社の取り組みを重ね合わせるとより響きます。
③コンテンツ化
ただの情報の羅列ではなく、手法(記事・動画・イベント)× スタンス(切り口・コンセプト)で態度変容を起こすコンテンツを作ります。
④タッチポイント
コンテンツを求職者がいつどこで見るかを設定し、配置します。また配置後に実際にその行動が行われているかを確認し改善します。
コンテンツ作成の一番のポイントは、「それは伝えたいことであっても、求職者が知りたい点ではないのではないか」という問いを持つことです。会社のアピールできるポイントや会社からの要望がどうしても多くなってしまいがちですが、重要なことは「会社はその求職者のキャリアにとってどんな役に立てるのか」です。この視点を大切に採用広報活動に取り組み、継続していきましょう。