後列左から2人目が石塚雷三社長、右端が播間匡広税理士
天然資源を活用した化粧品、医薬部外品等の開発を手がけるルウ研究所。同社はかつて経営危機に瀕(ひん)した際、播間匡広税理士(まほろば税理士法人)の勧めで戦略財務情報システム『FX2』を導入。実効性の高い「経営改善計画」を策定したことで、経営の立て直しに成功した。当時の取り組みを石塚雷三社長と播間税理士に聞いた。
「未利用資源」を活用し"価値のある"商品を開発
──今年で22期目を迎えられるそうですね。
石塚 創業者は父親(石塚庸三会長)で、美肌成分であるコラーゲンを「魚のウロコ」から抽出したことがきっかけで起業しました。当時父は地元の高校で化学の教員を務めていましたが、よほどの商機を見いだしたのか、抽出技術の開発を機に退職。それ以来、未利用資源を活用した医薬部外品、化粧品、シャンプー、ボディーソープ等の開発・販売を事業として展開しています。ちなみに私は2代目で、2013年に会社を引き継ぎました。
──未利用資源とは?
「未利用資源」を活用した地球に優しい商品開発が強み(上)
石塚 日常生活において廃棄されがちな資源を当社では「未利用資源」と呼び、商品の原料に用いています。例えば、先ほど説明したウロコやイカの軟甲、サメの軟骨、ブドウの種皮、ニンジンの葉、タマゴの殻……など、私たちが扱う資源は広範囲に及びます。これらは健康に良い成分が豊富に含まれているものの、生産・加工等の過程で捨てられることが多い。当社ではこういった資源に焦点を当て、消費者にとって"価値のある"製品づくりを追求してきました。商品は主にオンラインショップで販売しており、自社ホームページのほか、楽天市場やヤフーのショッピングサイトにも出店しています。
──売れ筋の商品を教えてください。
石塚 反響が大きいのはタイのウロコから抽出した「天然由来アパタイト」配合の歯磨き粉です。天然由来のアパタイトは、人工的に生成されたものに比べて歯の「再石灰化」を促しやすいので、虫歯や口臭予防が期待できる成分です。ちなみに、歯磨き粉にはチューブタイプと粉末タイプの2種類があり、いずれも販売開始から10年以上経ちますが、売れ行きはいまだに好調です。
──新型コロナの影響はいかがでしょう。
石塚 おかげさまで注文数が極端に減ったり、業績が落ち込むといった状況には至っていませんが、「コロナ禍で危機に追い込まれた人々の力になりたい」という思いから、新商品の開発を矢継ぎ早に行いました。なかでも、ニンジンの葉のエキスを使用したアルコール除菌液は好評です。ニンジンの葉には抗菌・抗酸化成分が含まれているので、当社が培ってきた独自の抽出技術を生かして商品化を実現しました。こちらも天然由来ですから、小さな子どもやペットがいる家庭で特に重宝されています。
播間 ルウ研究所さんではコロナ前からネット通販に力を入れており、アルコール除菌液も販売を開始してからあっという間に注文が殺到したようです。
石塚 当社では研究施設のほか自社工場も構えており、生産から発送までスピーディーに対応できる体制を確立しています。アルコール除菌液も企画から1カ月ほどで発売するなど、ニーズに素早く対応することができました。
──女性スタッフも多く活躍しています。
石塚 当社では主にインターンシップを通じて社員を採用していますが、化粧品やスキンケア用品を扱っているからでしょうか、毎回女性のエントリー数が多い傾向にあります。定着率も高く、女性の技術者はもちろん、管理職を任せているスタッフも在籍しています。
「ガラス張り経営」で社員との信頼関係を堅固に
──播間匡広税理士とのご関係は?
石塚 高校の同級生です。ただ、当時は顔見知り程度の関係で、しっかりと会話をするようになったのは当社の税務顧問をお願いしてからです。
播間 お互いの同級生にあたる経営コンサルタントから「ルウ研究所の経営状態が良くないので相談に乗ってほしい」と紹介されたことが顧問に就いたきっかけです。実際に財務諸表を見ると業績が厳しく、キャッシュフローがひっ迫するなどとても苦しい状況にありました。何より、社長が「決算書ができるまで最新の業績が分からない」と話していたのが気になり、まずは月次レベルでの業績管理を行うために『FX2』を導入。さらに、売り上げの拡大や資金繰りの安定化を図るべく、『継続MASシステム』で経営改善計画を策定しました。
石塚 最初の打ち合わせでは、播間先生が終始深刻そうな表情をしていたので「相当まずいんだな……」と危機感を抱きました。この頃から、自分でも企業経営や会計について勉強するようになりましたね。京セラの稲盛和夫名誉会長が主宰する「盛和塾」に入塾したのもちょうどこの時期です。
──経営改善計画のポイントを教えてください。
オンラインショップも好評(下)
播間 事前に石塚社長が作成したアクションプランをベースに計画を練り上げました。ポイントは①『FX2』による月次決算を通して、経営の合理化・スリム化を実践②金融機関からの借り入れや借り換えを中心に資金繰りを安定化③ネット販売に注力し売り上げを拡大する、の3点です。メインバンクも計画に理解を示していただき、借入金の借り換えや一本化に加えて、新たに1,000万円の融資を引き出すなど充実した支援を受けることができました。
石塚 アクションプランの作成にあたり社内でディスカッションしたところ、多く挙がったのが「販路を広げるべき」という意見。そこで、当時拡大しつつあったネット通販に力を入れるために、大手ECサイトへの出店や自社のホームページから注文が受けられる仕組みを整えました。これらの戦略が奏功し、直近2年は当初の計画を上回るほどの業績を達成しています。
──『FX2』はどのように活用していますか。
石塚 当社では最新の業績を参考にしながら事業運営の判断を下しているので、《月次貸借対照表》や《変動損益計算書》の数値や比率はくまなくチェックするようにしています。日々の会計データや過去の推移をリアルタイムで確認できるところが良いですね。
これに加えて、《変動損益計算書》を要約したものをオフィスの掲示板に張り出すとともに、社内の共有フォルダに毎月格納しています。ねらいは「風通しの良い職場」をつくること。獲得した利益をどのように配分しているか、先月の売り上げは目標に対してどの程度上がったのか……など、会社の状況を包み隠さずオープンにすることで、社員との信頼関係や一体感の醸成に役立っています。この取り組みは3~4年欠かさずに続けているでしょうか。今では経理だけでなく、研究職のスタッフも《変動損益計算書》の内容を理解できているので、とても頼もしく感じています。
──「TKCモニタリング情報サービス」(MIS)を利用して決算書と月次試算表をデータで提供していると聞きました。
石塚 取引のある金融機関や信用保証協会さんが、常に当社の最新業績を把握していることの安心感・緊張感を感じながら、日々の経営に取り組めています。営業担当者からも、より実務に沿った提案を受ける機会が多くなり、紙で提供していた頃に比べて信頼関係が堅固になったと感じています。
播間 ルウ研究所さんは当事務所で最初にMISの利用を開始した企業です。石塚社長も話されましたが、借り入れの提案はもちろん、仕入先や販売先の紹介など、紙で提供していたときと比べてスピーディーかつ的確なサポートが受けられるようになりましたね。
──今後の展望についてお聞かせください。
石塚 当社の商品ラインアップを一層充実させるためにも、技術力、製品開発力をさらに底上げしていきたいと考えています。地球上には多くの未利用資源が眠っており、これらを活用することが地球環境の保全につながると確信しています。当社では引き続き資源の有効活用を意識した商品開発を行い、「循環型社会」の形成に貢献していきたいですね。
(本誌・中井修平)
名称 | 有限会社ルウ研究所 |
---|---|
設立 | 2000年4月 |
所在地 | 鳥取県米子市夜見町1657 |
社員数 | 10名 |
URL | https://ruken.org/ |
顧問税理士 |
まほろば税理士法人
代表社員 播間和雄 鳥取県米子市河崎1373-4 URL: https://www.tkcnf.com/mahoroba |