2016年、地域に根付く文化や価値を生かし「かすみがうら市の未来を育てる」ことを目的に設立されたかすみがうら未来づくりカンパニー。サイクリングプログラムをベースとしながら、順調に事業規模を広げる同社は、レジシステムの刷新などを通じた計数管理体制の合理化にも熱心だ。今野浩紹社長と経理担当の小沼悠さんに話を聞いた。

──設立の経緯は?

今野浩紹社長

今野浩紹社長

今野 2015年、「地方創生」の掛け声のもと、各自治体でさまざまな取り組みが実施されましたが、かすみがうら市においては、旅行代理店と広告代理店、そして私の在籍していた株式会社ステッチが共同で、デイリー型サイクリングプログラムを提案・受託しました。その後、この事業を引き継ぐ形で、市とつくば銀行とステッチが出資した第3セクターとして発足したのが当社です。

──なぜサイクリングを?

今野 このあたりは国土交通省によって「ナショナルサイクルロード」(つくば霞ヶ浦りんりんロード)に認定されるほどサイクリングに適した道が整備されていて、その資源を十全に生かす観光ツーリズムの企画を立案・実践するのが目的でした。

──その後、飲食や物販にも進出されています。

かすみがうら交流センター

かすみがうら交流センター

今野 設立とほぼ同時に、ここ「かすみがうら交流センター」が市によって建設され、当社が「指定管理者」としてこの施設の管理をまかされました。その流れで、2階のレストランと1階のマルシェ(物販)を運営することになったのです。加えて、今年の7月からは、江戸後期に建てられた造り酒屋を宿泊機能のあるゲストハウスにリフォームした「江口屋」の管理も行っています。

──売り上げが大きいのは?

今野 レストラン事業です。「かすみキッチン」という名称で営業しており、〝地産地消×ヘルシー〟をコンセプトに地元の新鮮な素材を健康でおいしく食べられる料理として提供しています。廃校になった小学校の備品を活用したノスタルジックな内装デザインも特徴です。次が物販の「かすみマルシェ」です。ここでは、酒、焼酎、酢などのプライベートブランド商品をはじめ、さまざまな地元産品を販売しています。

──サイクリング事業の現状はいかがでしょう。

サイクリング事業で観光客を呼び込む

サイクリング事業で観光客を呼び込む

今野 当社はかすみがうらの観光資源の開発という役目を担っているので、その意味ではサイクリング事業は当社の変わらぬ「看板」だと考えています。現在は、果樹狩りや農作物の収穫体験、バーベキュー、古墳めぐりなどとセットにした「かすみがうらライドクエスト」という体験型のサイクリングプログラムを年に数回開催しているのをはじめ、数千人の方にレンタサイクルを利用していただいています。今後は、より工夫しつつ観光客を呼び込む新たな企画も実施していく予定です。

──たとえば?

今野 サイクリングはアウトドアなので天候に左右されるし、日照不足が果樹の発育を阻害することもあります。なので、今後はより多様性のある形でプログラムを提供することを考えています。これまでのようなガイド付きのツアーだけではなく、サイクルナビを付けてお客さま自ら景勝地を回ってもらったり、あるいは、「江口屋」での宿泊とセットにしたりといったプランが考えられるでしょう。霞ケ浦の素晴らしい自然を、多彩な形で満喫していただく企画を提供していきます。

左から「古民家 江口屋」「かすみキッチン」「かすみマルシェ」

左から「古民家 江口屋」「かすみキッチン」「かすみマルシェ」

タブレットレジの導入で経理の作業量が10分の1に

──経理の体制はどのように?

小沼悠さん

小沼悠さん

小沼 スタート当初は税務顧問のひたち野総合税理士法人(川井義久所長)に丸投げの形でしたが、設立の年の11月に私が経理担当として入社して以降は、『FX2』を活用した自計化(企業自身が経理ソフトで財務管理を行うこと)を行うようになりました。

──部門別管理はされていますか。

小沼 はい。レストラン、マルシェ、サイクリング事業、それと、かすみがうら交流センターと江口屋の「指定管理者」としての業務の4部門で管理しており、毎月、ひたち野総合税理士法人の泉昇寿さんに巡回監査に来ていただいて、月次決算を実践しています。

今野 『FX2』での部門別管理は、毎月の各部門のデータが明確かつリアルタイムに分かるので、有力な経営資料として活用しています。ありがたいですね。

──今年4月にはレジシステムを変更されました。

小沼 商品点数と売り上げが増加するにつれて、次第に業務量が増えてきて、さらに昨年10月の消費税の税率アップによって限界に近くなってしまったという背景がありました。レストランは税率10%、マルシェの飲食料品は8%、イートインは10%、お酒は10%など、商品を整理するだけでも大変です。またレシートから手書きで売上帳に書き写し、『FX2』に入力しなければなりません。で、なんとかなりませんかと今野社長に相談したのです。

今野 さっそく、ひたち野総合税理士法人の川井先生に相談し、タブレット型レジシステム『ユビレジ』をご紹介いただきました。

──『ユビレジ』を導入されていかがですか。

小沼 とてもいいですね。部門別や消費税別の管理が行いやすく、『FX2』とデータ連携しているので、業務量が10分の1くらいになった印象があります。毎月の巡回監査でひたち野税理士法人の泉さんに、データチェックをしてもらうのですが、以前のように打ち間違いを指摘されることはほぼなくなりました。

──劇的な変化ですね。

小沼 私は経理以外の業務も担当しているので、本当に助けられています。実は導入前に、他のタブレットレジの検討も行ったのですが、『ユビレジ』がもっとも『FX2』との連携がスムーズでした。それと、インターフェースがシンプルでいいと思います。当社では幅広い年代のスタッフがレジを打つのですが、問題なく業務を行えていますから。

──そのほかには?

小沼 キャッシュレス決済への対応ができたことも大きいと思います。これまでは現金決済が中心でしたが、『ユビレジ』が提供するキャッシュレス機能によって、クレジットカードや電子マネー、QRコード決済にも対応できるようになり、お客さまの利便性が増したと思います。

今野 サイクリストには現金(財布)を持たない方も多いので、キャッシュレス決済への対応によって、われわれのサービスへのユーザーが増えることを期待しています。現在でも、半分くらいの方がキャッシュレス決済を利用されています。

──以前はビジネスチャンスをかなり逃していた可能性もあります。

今野 はい。それと、各商品の売れ行きや時間帯による売上高の変化、あるいは決済方法などがリアルタイムで分かるのも大きいと思います。たとえばPBとそれ以外の商品はどっちの売れ行きがいいのか、レストランで今日のお昼はどのメニューが一番出たのか、キャッシュレス決済の割合はどのくらいか、など経営者の視点から知りたい情報をいち早くつかむことができます。クラウドサービスの利点といえると思います。

──今後はいかがでしょう。

今野 地元の商材を活用して、中長期的に安定的な収入を得ていくことに注力していきたいですね。つまり、これまで通り、かすみがうら地域のブランディングや観光業としての役割を担いながらも、利益にもこだわってきたいということです。かすみがうら市は都内から数時間と近いし、優れた観光資源を持っています。ただ、これまではニーズの受け皿がなかった。当社がその受け皿となるべく、市や地元の業者と連携しながら、新たな事業を創出していきたいと考えています。

(本誌・高根文隆)

会社概要
名称 株式会社かすみがうら未来づくりカンパニー
設立 2016年4月
所在地 茨城県かすみがうら市坂4784
社員数 10名
URL http://kasumigaura.miraidukuri.jp/

コンサルタントの眼
ひたち野総合税理士法人
茨城県かすみがうら市稲吉2-20-25
コンサルタント 泉 昇寿
URL:https://www.hitachino.jp/

 かすみがうら未来づくりカンパニーさんは、サイクリング事業はもちろん「かすみマルシェ」で販売する商品を地元の事業者と共同開発するなど、かすみがうら地域の活性化のための事業を積極的に展開されています。今野社長がセールスプロモーション会社出身ということもあるのでしょうが、広報活動は非常にうまく、マスメディアに取り上げられることもしばしばです。今野社長は、決してえらぶらず謙虚な方で、アイデアも豊富。矢継ぎ早に新機軸を打ち出される行動力に感心させられます。

 財務管理面もきっちりとされている印象です。毎月、月末にお邪魔して巡回監査を行っているのですが、仕訳やデータ入力など、ミスが少なく、経理レベルはとても高いと思います。その理由は、担当の小沼さんの高いスキルにあります。とはいえ、近年の事業拡大によって、経理の業務量は急増しつつありました。それを解消したのが『ユビレジ』の導入です。ユビレジが『FX2』と連動することによって、消費税や部門管理などの複雑な入力が簡便化され、小沼さん、当事務所ともに業務負担が劇的に減少しました。

掲載:『戦略経営者』2020年11月号