左から坂井裕次社長、中川晋輔顧問税理士
倉庫内作業の請負事業を主力ビジネスとしている、RADI-X(ラディックス)。コンサルティング業界出身の坂井裕次社長は、前職で培ったマネジメント手法を取り入れ、詳細な財務データに基づく経営を実践している。中川晋輔顧問税理士を交え、同社を根幹で支える人材教育や『FX2』での財務管理方法、さらに業績開示の取り組みについて聞いた。
独自開発のノウハウで最適な人員配置を実現
──創業が昨年4月とお聞きしました。出来たての会社ですね
坂井 起業する前は、関西エリアを地盤とするコンサルティング会社で働いていました。人材請負業を営む知り合いから経営を手伝ってほしいという話があり、会社を新たに設立して事業を引き継ぐ形でスタートしました。アウトソーシング事業と一般労働者派遣事業、有料職業紹介事業の三つを展開しています。
──アウトソーシング事業の内容を教えてください。
坂井 現在は京都府久世郡に営業拠点を構え、京都府南部にある食品倉庫を中心に業務を行っています。請け負っている作業内容は、商品の入出庫作業やフォークリフトによる運搬作業など。当社の提供するアウトソーシングサービスは「Bvalu-X(ビーバリュー テン)」といいますが、請負と人材派遣を組み合わせ、経験豊富なスタッフを適正に現場配置できるのが強みです。人材派遣業務を入り口に顧客との信頼関係を徐々に築き、請負契約に移行するケースも少なくありません。
──コロナ以前はさまざまな業界が人手不足に陥っていましたが、現状は?
坂井 正直、人手不足を感じたことはあまりないですね。従業員が職を探している知り合いに、積極的に声をかけて当社を紹介してくれるんです。今風の言葉でいう「リファラル採用」が盛んなんですよ。
私自身、必要以上に怒らないよう心がけているせいか「働いていて楽しい」とよく言われますね。創業以来、退職した正社員はひとりだけです。同業他社から転職してきた従業員から、前職では駒のように扱われていたという話を耳にすることもあります。
──人材も強みであると。
坂井 人材教育には特に力を入れていて、フォークリフト免許取得のための費用を負担したり、私が講師となり物流業界の動向や財務数値の見方などをテーマとした研修を行っています。なおかつ採算意識を持ってもらうため、ざっくりとした日次損益データをスプレッドシートで作成し、従業員に毎日メールしています。黒字あるいは赤字になった原因を自分で考える習慣をつけてもらいたいからです。
その他、業務管理システムを開発し、日々の業務や指導内容も記録。現場ごとの状況を共有することで、迅速な課題解決に役立てています。
──前職の経験が役立っている点を挙げるとしたら?
坂井 コンサル会社では会長の部下として働き、予算の作成から計画の実行まで、ほぼ一任されていました。経営計画の策定方法や現場マネジメントの仕方のみならず、生き方やマインドの持ち方など多くの事柄を教わりました。会社を立ち上げた背景には、前職で得られた経験をより広く伝えていきたいという思いもあります。失敗も数多く経験しましたが、当時の勤務経験がなければ、おそらく今日まで事業を継続できていなかったでしょう。
現場別の損益を把握し将来予測の精度を高める
──創業時から『FX2』を利用されているとか。
坂井 創業後まもなく中川先生と顧問契約を結び、利用を勧められました。以来毎月、先生に大阪市内の本社へ監査のため足を運んでいただいています。
──コロナ禍のなか、オンラインで打ち合わせる機会はありますか。
中川 ウェブ会議システムを活用してやり取りすることもできますが、リモートだと場の雰囲気をつかみづらい面があるので、毎月訪問し相談をうかがうようにしています。
──具体的にどのような相談をされていますか。
坂井 中川先生も私が籍を置いていたコンサル会社に以前勤務されていたこともあり、経営全般について突っ込んだ話をすることが多いですね。最近よく話し合うのは、純資産バランスをいかに保つかといった資本政策。人材派遣業の認可を更新するには2000万円の純資産と、1500万円の現預金が必要である旨定められているんです。
それと『FX2』の数字を元にした将来予測をよく議論します。業績のよしあしに関する肌感覚はあるものの、システムで数字を確かめるとずれている場合がある。巡回監査時にアドバイスをいただきながら、その原因を探ったりしています。先生は私にとって、いうなれば羅針盤のような存在です。
──経営のかじ取りに欠かせない存在というわけですね。経理体制は?
坂井 日々の仕訳入力は経理担当者に任せています。「銀行信販データ受信機能」を活用することで、金融機関口座の入出金にまつわる仕訳入力が省力化できました。
──重点的にチェックされている指標を教えてください。
坂井 倉庫内作業を請け負っている現場は4カ所あり、〈変動損益計算書〉で現場別の粗利や人件費などを把握し、人員配置戦略を立てるのに活用しています。あわせて策定した予算を『FX2』に登録。予実対比を毎月行い、かい離が生まれていれば、行動計画に修正を加えます。資本政策を検討するうえで、〈貸借対照表〉も詳細に確認するようにしています。
──従業員だけでなく、金融機関にも定期的に業績を報告されていると聞きました。
坂井 「TKCモニタリング情報サービス」(MIS)を活用し、メイン行である池田泉州銀行と関西みらい銀行には月次決算データを、日本政策金融公庫には年次決算データを送信しています。また会計数値をどう捉えているか、コメントも追記して提出するようにしています。
──コメントの内容は?
坂井 月次業績が黒字あるいは赤字にいたった背景について記しています。例えば、コロナの影響による受注量の落ち込みをカバーするための取り組みや、新入社員を採用して人件費が増加しているといった実情等です。以前は経営計画に対する進捗(しんちょく)状況、行動実績を2カ月に1回報告していました。MISの送信データにコメントを追加することで、報告頻度が高まり、安心感を持ってもらえるのではないでしょうか。
──率先して業績開示を行われているわけですね。
坂井 先行きが不透明な情勢にあって、財務データはできるだけ早く、細分化して把握したい。作業を請け負う現場数が増えれば、エリア別に業績を管理したり、より詳細な分析が必要になります。その点を中川先生に相談したところ紹介されたのが『FX4クラウド』でした。システムのデモも拝見し、近々『FX2』から移行する予定になっています。
中川 現在は「TISCバックアップサービス」を活用し財務データを共有していますが、システム移行後は私の事務所のパソコンからリアルタイムで業績を確認できるようになるので、業務効率がいっそう高まるものと期待しています。
──今後の目標を教えてください。
坂井 大きな方向性としては「Bvalu-X」を一層拡充しつつ、当社の強みである人材教育や経営支援に関連するサービスを提供していきたいと考えています。その一環として、ホワイト企業認定を行う「ホワイト財団」という団体にコンサルティング担当企業として加盟しました。社内マネジメントの知見を生かし、認定取得を目指す企業に対してアドバイスを行っていければと思います。
倉庫内作業は肉体労働で、業務品質向上の余地は少ないと思われるかもしれません。しかし各人が作業効率や成果を意識して働けば、取引先さまに一層の価値を提供することができます。人材請負、物流業界は厳しい状況にありますが、知恵をしぼり、ウィズコロナ時代を乗り越えていきたいですね。
(本誌・小林淳一)
名称 | 株式会社RADI-X |
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設立 | 2019年4月 |
所在地 | 大阪府大阪市中央区内本町2-4-16 オフィスポート内本町6F |
売上高 | 1億1,000万円(2期目予定) |
社員数 | 33名(パート含む) |
URL | https://radi-x.co.jp/ |
顧問税理士 | プラスパートナーズ総合会計事務所 税理士 中川晋輔 大阪府大阪市中央区本町4-2-12 東芝大阪ビル9F |