ミシュラン観光ガイドで三ツ星評価を獲得した観光スポット、高尾山のひかえる八王子市。同市で観光のPR、学会等の誘致活動を担っているのが八王子観光コンベンション協会だ。観光案内所には外国語を話す職員を常駐させるなど、近年は増加するインバウンド対応を充実させている。及川純一総務課課長をはじめ総務課職員に『FX4クラウド』のもたらした業務変革の中身を聞いた。
2本柱の事業を推進し地元産業の振興に貢献
及川純一総務課課長
──活動内容を教えてください。
及川 観光およびコンベンション事業の振興を図るため、八王子市および周辺地域と連携し、さまざまな取り組みを展開しています。そもそも前身である八王子観光協会が設立されたのは1957年。2013年に公益認定を受け、17年4月、商工会議所のコンベンション事業部門と合併し、現在の組織体制になりました。
──観光分野ではどんな事業を手がけていますか。
及川 JR八王子駅北口コンコース下にある「八王子インフォメーションセンター」やJR八王子駅ビル、セレオ八王子北館9階の入り口「観光案内所」、京王高尾山口駅舎内「高尾山口観光案内所」において観光ガイド、パンフレットを用意し、案内を行っています。なかでも高尾山口観光案内所を利用する外国人は増加の一途で、2018年度は1万人を上回りました。同案内所には英会話のできる職員が常駐しており、JNTO(日本政府観光局)から「認定外国人案内所」カテゴリー2に認可されています。
──各種イベントも主催されているそうですね。
11月末まで開催される高尾山もみじまつり
及川 八王子花火大会や高尾山もみじまつり等のイベントを例年開催しています。高尾山もみじまつりの開催期間は11月末まで。ケーブルカー清滝駅前広場をメイン会場として、土日祝日に和太鼓の実演やジャズ演奏など、各種の催しを実施しています。
あわせて商工会議所と共催していた四季観光写真コンクールを「♯だいすき八王子 秋のインスタフォトコンテスト」に衣替えし、「高尾山」と「食」の二つのテーマで撮影された写真を11月いっぱい受け付けています。それぞれの部門の入賞者には旅行券等の賞品を進呈する予定です。とりわけソーシャルメディアを日ごろ使いこなしている、若い方々からの応募を期待しています。
JR八王子駅北口の「八王子インフォメーションセンター」
──コンベンション事業における活動は?
及川 MICE(マイス(※))と呼ばれるビジネスイベント誘致のための取り組みとして、18年度は八王子の魅力を紹介するプロモーション動画を制作し、ユーチューブ「八王子市公式チャンネル」で公開したほか、PR冊子「八王子MICEガイド」を発行しました。
八王子市内には21大学のキャンパスがあり、学園都市としての顔も持つことから、MICE推進課の職員が各大学を担当し、学会等の誘致活動を展開しています。
※meeting,incentive tour,convention/conference,exhibion/eventの略称
──相次いだ台風による事業への影響はありますか。
及川 倒木等により、高尾山登山道の6号路の一部区間が一時閉鎖されるなど、大きな影響がありました。高尾山口観光案内所や当協会のウェブサイトで最新情報を随時発信しているので、訪れる際はぜひご確認ください。
3拠点を結ぶシステムで財務状況を即時に把握
──水島栄司税理士と顧問契約を結んだ時期を教えてください。
水島栄司税理士
及川 水島先生に決算申告業務を依頼したのは、09年3月期からです。当時は手書きによる記帳を行っていて、決算時に1年分の伝票等の資料をお渡しし、申告書を作成してもらいました。翌期、先生から『公益法人会計データベース』の利用を勧められ、システムによる運用に切り替えました。
水島 最初の期はお預かりした資料を元に、5月の1週間ほどをかけ、申告書を作成したのを覚えています。そのとき浮き彫りになった課題は消費税の処理。提出いただいた1年分の伝票の中から、消費税が課税されそうな取引を手作業で抽出し、集計しました。当初は公益法人特有の課税区分の扱いがあまり明確でないまま入力してもらいましたが、期末には〈正味財産増減計算書〉などの財務諸表が正確に出力され、すごいなと感じましたね。
──その後『FX4クラウド(公益法人会計用)』に移行されたわけですね。
守屋京子総務課主査
守屋 移行により複数拠点での伺書、仕訳入力が可能になり、現在は協会事務所、上恩方町にある「夕やけ小やけふれあいの里」、高尾山駐車場の計3カ所で利用しています。システムには公益事業として観光およびコンベンション事業を、収益事業として駐車場管理事業を、その他事業として観光施設清掃受託事業を登録しています。
──クラウドに移行し、どんな点が変わりましたか。
守屋 最も変わったと感じるのは、事務所と離れた場所にある各拠点の財務状況をリアルタイムに把握できるところです。以前は駐車場の売り上げデータが集計され、メールやファクスで事務所へ送付されるのに、数日かかっていましたから。月次監査に備え、各拠点のデータをUSBメモリにバックアップし、事務所に送付してもらう必要もありました。 それとシステム操作に関して、水島先生の事務所に問い合わせるとき、事務所のパソコンでシステムを起動して画面を確認してもらえるため、スムーズに意思疎通でき、とても助かっています。
総務課井上勉氏
井上 おもに高尾山駐車場の入力データをチェックしたり、消耗品の入力を行っていますが、改元や消費税率の変更等、法改正への対応がタイムリーに行われる点が安心です。自動的にレベルアップされるので、設定変更を行う必要もありません。
水島 月次巡回監査に要する時間も圧倒的に短縮できました。協会事務所と夕やけ小やけふれあいの里に訪問していますが、従来は毎月合計4回訪問していたのが現在は2回で済んでいます。
──巡回監査で水島先生と面会する際、話される内容は?
守屋 1カ月間システムを操作してみて、緊急性の高くない事柄を尋ねることが多いですね。例えば消費税の処理方法や、『戦略給与情報システム(PX2)』での年末調整処理などです。
観光、イベント関連のパンフレットが充実
水島 『PXまいポータル』で職員の方のマイナンバーを管理しているほか、『e-TAX法定調書』を導入いただき、法定調書の電子申告も自ら実践されています。『FX4クラウド』での仕訳入力に関しては、守屋さんと井上さんがほぼ完璧にこなされているので問題ありません。
──伺書作成のプロセスは変化しましたか。
守屋 TKCシステムを利用する前は備品の購入や修繕費の支出等がある場合、伺書を手書きで作成し、上長の承認を得てから伝票を起こしていました。『FX4クラウド』導入後はシステムに入力し承認された伺書は、仕訳に変換されるので手間がかかりません。将来的にインターネットバンキング連動機能を活用すれば、いっそう便利になると思います。
八王子駅直結のアクセス至便な場所にある協会事務所
及川 09年当時20名弱だった職員が50名以上になるなど、組織の合併により人員、予算規模とも拡大しました。同時に経理、給与計算を担当する総務課にかかる負担が増加傾向にあるので、業務効率を高められる機能は今後も積極的に取り入れていきたいと考えています。
──今後の展開をお聞かせください。
及川 22年2月、八王子市明神町地区に新たな産業交流拠点(仮称)が完成します。地上7階建ての施設には複数の会議室のほか、多摩地区最大規模となる、のべ床面積2500平方メートル規模の展示ホールが完成する予定です。この施設を活用した各種展示会や学会の誘致に注力していきます。
八王子市には周辺の町を編入してきた歴史があり、それぞれの地域を包括してきた伝統があります。観光、コンベンション事業の振興を通し、そうした特色を伝える温故知新の活動を支えていけたらと思っています。
(首都圏統括センター・奥村良輔/本誌・小林淳一)
名称 | 公益社団法人八王子観光コンベンション協会 |
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設立 | 1989年4月 |
会長 | 大野 彰 |
所在地 | 東京都八王子市旭町1番1号 セレオ八王子北館9F |
職員数 | 56名(臨時職員含む) |
URL | https://www.hkc.or.jp/ |
顧問税理士 | 税理士 水島栄司 税理士法人オンリー・ワン 東京都八王子市中野上町4-23-4 URL:http://www.tax-14.com/ |