青森県八戸市に根を下ろしながら、全国にクライアントを持つ広和計装。製造プラントの制御装置を得意分野としつつ、多様なニーズにワンストップで対応する機動性もあわせ持つ優良企業だ。そんな同社がこのほど、商工組合中央金庫とTKC全国会の提携商品「対話型当座貸越(無保証)」の青森県第1号案件となった。同社の三浦幸廣社長、小田秀彦顧問税理士、そして商工組合中央金庫八戸支店の和久大輔支店長に話を聞いた。
高い技術力と機動性で生産現場をサポートする
──業態を教えてください。
三浦幸廣社長
三浦 1988年の創業以来、電気計装の分野で事業を展開してきました。「計装」とは、生産工場などで工程を計測し制御する装置を設置・運用することです。当社は、クリーンルームをお持ちの半導体メーカーや、製造プラントを手掛ける設備業者などからのオーダーを受けて、いわゆる〝一品もの〟の装置やシステムを開発・販売しています。
──具体的には?
三浦 例えば、半導体のクリーンルーム内には、燃焼性や毒性のあるガスが製造装置から発生する危険性があるのですが、それを漏えい手前で検知・制御するシステムを手掛けています。あるいは、製造プラントにおいて温度や圧力、流量などを制御し、製造物を最適化するシステムにも多くの実績があります。さらに、車載制御装置に使用される回路基板の検査装置や、SCADA(監視制御システム)を搭載したコンピュータ制御システムなど、多岐にわたる設備や装置を製造しています。
──強みは?
三浦 ハードウェアの設計製造から、ソフトウエア(プログラマブルコントローラー)の開発・構築、現場での立ち上げ調整までワンストップで請け負えるところが強みだと思います。取引先はほぼ大手メーカーで、北海道から奄美大島まで日本全国の現場を飛び回り、月にすると約50件の仕事をこなしています。その機動性も当社の持ち味かもしれません。
──ここ数年、業績は好調のようですね。
三浦 リプレース需要が増えている一方、後継者難などで廃業や縮小に追い込まれる同業者も出てきている中、当社では設計や製造の効率アップや適正コストの維持に努め、お客さまの要求にお応えしてきました。また、われわれのような小さな企業では、技術をつないでいく人材の継続雇用が第一であると考え、それを実践してきました。そのため、いきなりの仕事でも、こなす余力があったということでしょう。
──社員の方々の高いスキルが必要なのでは?
三浦 創業以来、経験とノウハウを蓄積してきましたから、技術的な幅には自信があります。
──「幅」とは?
三浦 クリーンルームやプラント以外でも、例えばロボットアームなどの最適な動作を「計測」するような装置のニーズなら対応することが可能です。計測はわれわれの専門分野ですからね。場合によってはクライアントの困りごとを、当社の長年培ってきた技術を使って解決へと導くことができるということです。
──何名の技術者で回しておられますか。
三浦 社員は現在42名ですが、8割以上が技術系です。われわれが必要としているのは、制御機器などに使う特殊なプログラム技術なので、入社するとすぐに外部の教育機関などを活用しながら鍛え、OJTも徹底して行います。いまの時代、技術だけではなく、メンタルやマナーなども時間を費やして教え込む必要があるし、やはり、一人前になるまでには1~3年はかかりますね。
決算書のオンライン伝送で意思の疎通がスムーズに
──小田(秀彦)先生(税理士法人つばさ会計)に税務顧問を依頼されたきっかけは?
広和計装本社
三浦 1995年に株式会社化し、私が社長に就任した頃です。良い税理士を探していて、ある人から小田先生をご紹介いただきました。
──なぜ税理士を探していたのでしょうか。
三浦 それまでの税理士とは、あまりコミュニケーションの機会がなく、リアルタイムの業績もよく分かりませんでした。それと、当社は、人件費の発生と売掛金回収の時期的なズレが大きく、夏から秋にかけて赤字が出て、年が明けてから回収して取り戻すスタイルが基本です。それを税理士になかなか伝えきれなくて、フラストレーションがたまっていました。
──小田先生はどのような対応を?
小田秀彦顧問税理士
小田 建設業用会計情報データベース『DAIC2』を導入し、自計化(企業自らが会計ソフトを使って経理処理を行うこと)を徹底。毎月の巡回監査ならびに月次決算体制を築きました。きっちり現場(工事)ごとの原価を管理した上で、社長から逐一、今後かかると予想される経費を聞き、リアルタイムの収益が分かるような体制にしました。三浦社長の経営判断に生かしてもらいたいという思いでした。
三浦 コミュニケーションは格段に良くなりましたね。それと、既述の通り、当社の売り上げには季節変動があるので、頻繁に運転資金の借り入れが必要になります。その際に金融機関に提出する会計資料も、即座に、しかも信頼性の高いものを小田先生に準備してもらえるので、ありがたいですね。〝明日出張から帰るからこれこれの資料を用意してくれますか〟などという無理なお願いに対応していただいたこともあります。
──商工組合中央金庫(商工中金)とTKC全国会との提携商品「対話型当座貸越(無保証)」の枠(3000万円)を獲得されたとか。
三浦 これまで運転資金は「長期」が主流だったため利息負担も大きかった。その意味でも短期でお金の出し入れができるこの商品はありがたいですね。無担保無保証というのも魅力です。今後はもっと極度額を増やしてもらいたいです(笑)。
和久大輔商工中金八戸支店支店長
和久(商工中金八戸支店長)昨年11月にこの商品がリリースされて以降、TKCマークのついている決算書をピックアップするなどして、候補企業を探しました。そうして真っ先にあがってきたのが広和計装さんで、ヒアリングしてみると、長期借入金が積み上がっている上に、年に1度、キャッシュフロー不足になる構造的な問題を抱えていた。この商品をご提供するのにぴったりの候補だと感じました。
──金融機関としてリスクもあったのでは?
和久 この商品の立て付けは、まず「TKCモニタリング情報サービス(MIS)」を活用した所定の帳表の提出、それから企業と税理士、当金庫による事業概要・必要金額の見通しについて対話(各事業年度につき1度)を行うことが条件となっています。また、巡回監査・月次決算の履行、一定レベル以上の「記帳適時性証明書」の内容など、TKC方式の会計が順守されていることも条件なので、十分に融資先の財務状況を可視化できます。さらに、書面添付制度(税理士法第33条の2)にもとづく添付書面には在庫や売掛債権の状況にまで税理士先生のコメントがついている。これらをひっくるめて、TKC会員先生方の関与先は概してリスクが低いというのが実感で、われわれ金融機関にとって安心感があります。
──MISについてはどういう感想をお持ちですか。
三浦 これまでは分厚い紙の決算書を取引金融機関に渡していましたが、コピーや郵送などの面倒な作業が必要でした。それがMISによってなくなったのはありがたいですね。
小田 年次決算書はもちろんですが、商工中金さんには四半期に1度、メインバンクの青森銀行さんには毎月の試算表がオンラインで伝送されています。これによって、われわれ税理士と企業、金融機関との意思の疎通が非常にスムーズになったと思います。
三浦 ちなみに、青森銀行さんにも、かなりの額の当座貸し越しの枠をいただいています。
──今後はいかがでしょう。
三浦 短期でいえば、まずは毎期コンスタントに拡大し収益をあげていくこと。中長期にはやはり人材の獲得が最大の課題でしょう。近隣から若者を集めるには、社宅・寮の確保、教育体制の充実、あるいは奨学金負担制度の導入なども考えなければならない。海外人材の獲得に乗り出す必要もあるかもしれません。
業務面では技術の幅を広げたいと思っています。当社は極めてニッチな分野に特化しているので、それをもう少しみなさんに何をやっているのか伝わるロボットや介護などの分野にまで広げたいです。そうすることで、人材獲得の面でもプラスになるのではないでしょうか。
(本誌・高根文隆)
名称 | 広和計装株式会社 |
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設立 | 1988年12月 |
所在地 | 青森県八戸市大字長苗代字上碇田6-1 |
売上高 | 5億9,000万円 |
社員数 | 42名 |
URL | http://www.kowa-keiso.co.jp/ |
顧問税理士 | 代表社員・税理士 佐々木泰司 小田秀彦 税理士法人つばさ会計 青森県八戸市沼館1-3-36 URL:https://www.tkcnf.com/tsubasa |