プロフィール
さどしま・りゅうへい●1979年兵庫県生まれ。甲南大学経済学部在学中の99年にDaigakunote.comを創業。2002年同大学卒業後、ソニーネットワークコミュニケーションズに入社。その後子会社のモーションポートレートで画像処理技術の開発に携わる。14年セーフィーを創業。
佐渡島隆平 氏

佐渡島隆平 氏

 街なかや店舗、あるいはオフィスなど、さまざまな場所で防犯カメラを目にする機会が増えてきました。なかでも録画映像をネットワーク上に保管する、クラウド型防犯カメラの市場規模は年々拡大しています。そのような状況のなか、2017年に国内シェアナンバーワンとなったのが、われわれの提供している「Safie(セーフィー)」です。

 当社はカメラ向けOSとクラウドサービスをカメラメーカー各社に提供し、通信会社や警備会社などを通じて販売するビジネスモデルを採用しています。従来のクラウド型防犯カメラでは、ネットワークやアカウント等をユーザー自身で設定する必要がありました。セーフィーなら、そうしたわずらわしい作業は不要です。ユーザー情報をカメラ本体に登録し出荷しているため、電源に接続し専用アプリを起動すれば簡単に利用できます。

 ライブ映像と音声はスマートフォンやタブレット端末、パソコンからいつでもどこからでも確かめられます。音や動きを検知し、リアルタイムでメールを送信したり、プッシュ通知したりすることも可能です。ある飲食店では、POSレジが作動すると映像にフラグが立つよう設定していて、売り上げデータとの照合や従業員による内部不正の抑止に役立てています。

 さらにPOSレジ連携ではレジ操作の前後30秒間の映像にフラグを立てて管理でき、店員の接客方法を検証したり、売り上げアップの要因を探ったりと、ビジネスに活用することもできます。そのほかにもトークバック(呼びかけ)機能や、映像シェア機能など多彩な機能を備えながら、カメラ1台あたりの月額利用料金は1200円から。大手飲食チェーンや建設現場など幅広い業種で活用されており、登録台数は2万台をこえました。

人手不足への打ち手

 読者のなかには、セキュリティー面を心配される向きがあるかもしれません。国内に設置されている一部の防犯カメラがハッキングされ、インターネット上に流出しているとの報道もありました。

 一般的なネットワークカメラの場合、IPアドレスが判明してしまうとカメラがハッキングされ、悪意を持つ第三者に閲覧されるおそれがあります。そのため、セーフィーでは映像データを暗号化し、クラウドに送信。利用者が閲覧するときも暗号化されたデータにアクセスします。従来はカメラごとにセキュリティー設定を行う必要がありましたが、当社のサービスは堅牢(けんろう)なセキュリティー体制を担保しています。

 防犯用途はもちろん、職場の業務改善を念頭においた企業からのニーズも最近は高まってきています。

 例えばファミリーレストランでは、店内が混雑していると入り口で名前を記入して待つように言われますが、空席があるにもかかわらずテーブル清掃が終わらないため案内されず、もどかしい思いをしたことがある人もいるでしょう。店舗にとって、テーブルを速やかにきれいにし、来店客をいかに待たせず案内できるかは死活問題といえます。受付にセーフィーが設置されていれば、混雑時に調理スタッフはテーブル清掃を優先するなど、臨機応変にヘルプに入ることもできます。

 また、ECサイトを営む商社の物流倉庫でもセーフィーは活用されています。この企業ではメールマガジンを日々発信していて、内容を見た顧客が特価製品を発注するケースがあるそうです。顧客の元に翌日届けるためには、17時までに発送しなければなりません。そこで出庫ゲート付近にセーフィーを設置。ECサイトのメンテナンス担当者はモニターを確認し、配送作業を随時手伝える体制にしました。

 いずれも人手不足を解消する経営改善例といえますが、ようするに業務の見える化がポイント。セーフィーで撮影した映像は、いわば社会課題の集合体といえ、その解決に役立つ映像情報を提供することがわれわれのミッションなのです。

 そもそもセーフィーを開発した理由は、自宅用の防犯カメラを探しても、適した製品が見つからなかったためです。当時流通していた防犯カメラはおしなべて価格が高く、異常を通知してくれる機能もありませんでした。それならば自分たちで開発した方が早いのではないかと考え、勤務していた企業で培った画像処理技術を生かすべく、2名のエンジニアと共に立ち上げたのがセーフィーです。

 最も大変だったのは画像品質を向上させることでした。開発に着手した当時、大量のデータをインターネットでアップロードするのは非常識とされていたため画質が安定せず、カメラやルーターなどハードウエアの問題なのか、ソフトウエアの問題なのか、原因を切り分けるのに苦労しました。

 当面の目標として2022年に売上高100億円を目指しています。そのためにも顧客の抱える課題の解決に徹底してフォーカスしていきたいと考えています。

(インタビュー・構成/本誌・小林淳一)

掲載:『戦略経営者』2019年1月号