関東地方を中心に、マンションなどの集合住宅の排水管清掃を行っているマルシンビルサービス。定期メンテナンスを実施する戸数は年間10万戸を超え、他の追随を許さない。成長の原動力となっているのが、『FX4クラウド』による財務データを元にした会計参与(※)からの的確なアドバイスだと佐藤昭仁社長は語る。
「全員経営」をモットーに顔の見えるサービスを提供
──業績を順調に伸ばしていると聞きました。
左から佐藤昭仁社長、小形文夫顧問税理士、
高野純弥監査担当
佐藤 集合住宅の排水管清掃が売り上げの9割を占めていますが、社員の仕事ぶりが評価され、おかげさまでお客さま同士のつながりから仕事のご依頼を数多くいただいています。業績拡大にともない、2014年に本社を東名高速の厚木インターチェンジ近くに移転し、昨年5月に沼津営業所を、ことし4月には福岡営業所を開設しました。社長に就任して以来微々たるものですが売上高は右肩上がりで、それが自慢といえば自慢です。
──排水管清掃を行う年間戸数は?
佐藤 東京、神奈川、千葉、埼玉のマンションを中心に約12~13万戸です。おそらくこの数字は国内では業界トップクラスではないでしょうか。ビルメンテナンスの仕事の一環として排水管清掃を行っている企業が大半のなか、当社のように専門で請け負っているところは少ないんです。定期的な排水管メンテナンス業務以外にも詰まりの除去等、緊急時の対応も行っています。
それと協力会社に業務の一部を委託する場合も、当社社員が必ず作業に加わるのがうちの方針で、お客さまからの問い合わせに直接対応できるようにしています。私もたたき上げで現場を経験してきたため、今でも現場に赴いて作業をする機会もあります。そのときに社員によく指示するのは「現場にのみ込まれるな」という点です。
──具体的には?
佐藤 1棟1000~2000戸の大型マンションを前にすると、社員の中には気おされてしまい時間内に作業を終えられるのか不安をおぼえる社員もいます。そうしたときに、これまでの経験を生かせば何も心配ないとハッパをかけるわけです。
──最近はタワーマンションが人気です。
佐藤 当社でも年間20棟ほどで排水管清掃を行っています。タワーマンションでは生ゴミを粉砕するディスポーザーが普及していますが、排水管が詰まってしまうことが少なくありません。日本の下水道管は直径600~800ミリほどと細いのも一因でしょう。
そもそも排水管は人間の血管とおなじ。血管の詰まりは脳梗塞などの原因となるように、排水管も目詰まりを起こすと重大な障害につながるおそれがあります。ですから、年1回のメンテナンスがとても大事なんです。
──社員数は足りていますか。
佐藤 正直足りません。仕事はあるけど人手が足りないのが一番のネックです。業務単価が近年低下していますから、現場の件数を数多くこなさないと採算ベースになかなか乗りません。そうした状況で打ち手を検討するために行っているのが月末の全体会議です。
──内容を教えてください。
佐藤 全体会議では小形会計事務所の高野さんから前月の業績をわかりやすく説明してもらっています。会社の状態を第三者から客観的に提示されると説得力が違いますね。社員みんなで経営していこうというのが私のモットーなので、会社の業績を包み隠さず伝えています。ガラス張りなのは業績だけでなく、部課長クラスの社員は私や取締役の報酬額を知っているほどです。
また、全国管洗浄協会の専務理事に就いているため、業界や同業他社の動向をはじめとしたさまざまな情報が入ってくる。社内勉強会では事故の事例も含めてそれらの情報を社員にフィードバックし、共有を図っています。
四半期業績検討会で目標進捗をガラス張りに
──顧問税理士の小形先生はマルシンビルサービスさんの会計参与でもあるそうですね。
23台の高圧洗浄車を保有(中)
社員が24時間365日常駐し緊急対応に備える(下)
佐藤 2006年5月に施行された会社法で会計参与制度が創設されるのを報道で知り、程なく就任をお願いしました。
──佐藤社長から会計参与への就任を打診されたとき、どう感じましたか。
小形 ご相談のあった当時、先代の社長から経営をバトンタッチされて間もないころだったため、新たな体制でのぞむにはちょうどいいタイミングだと思いました。財務管理と業績把握をしっかり行いたいという佐藤社長の思いに応えられるという点も大きかったです。
──会計参与設置の効果は?
佐藤 一番の効果は、保険と同じで安心して経営に専念できること。社長は基本的に孤独ですから、身近な相談相手がいるのは心強いです。四半期ごとに開催している業績検討会では小形先生から社員に的確なアドバイスをいただいています。私はしょっちゅう怒ったり、なだめすかしたりしているので、〝また社長が何か言っているよ〟となってしまう。その点、先生のアドバイスは効き目が違うんです。
──金融機関の反応は?
佐藤 会計参与を設置していることを話すと驚かれます。本社の新設に際してもまとまった資金が必要でしたが、スムーズに融資を受けられました。最近はむしろお金をもっと借りてほしいと頼まれるぐらいです。本当にきれいな決算書だと金融機関や税務署からお褒めいただいたこともあります。
──業績検討会で話し合う内容は?
佐藤 日々伝票入力している『FX4クラウド』のデータを元に、期首に立てた目標売上高に対する進捗(しんちょく)や貸借対照表の勘定科目残高をひとつずつチェックしています。それから、『SX2』(戦略販売・購買情報システム)に入力した売り上げデータを参照して独自のシートを作成しているので、その中身と実際の業績推移に差はないか確認する場にもなっています。
高野 10月決算のため、先日第2四半期の業績検討会を開催したばかりです。プロジェクターを使って会議室の壁に《変動損益計算書》の画面を映しながら、前年同月と比較して異常値はないか、限界利益は確保できているかといった点を中心に説明しています。
佐藤 高野さんには20年ぐらい監査を担当してもらっているので、当社の特徴を熟知して毎回やる気を引き出してくれる。それが目標達成に向けての糧になっています。
高野 業績検討会では単に数字を読み上げても社員の方に興味を持ってもらえないので、各自が1日どのくらいの現場をこなして売り上げれば目標を達成できるのかといった言葉に置き換えて伝えるようにしています。
──目標はどのように決めているのでしょうか。
佐藤 事業年度の初めに社員がそれぞれの年間売り上げ目標を立て、それらをボトムアップで積み上げて全社目標にしています。経費に関しては、前年度の実績を元に高野さんと話し合いながら決めることが多いです。
──協会の専務理事をされていると出張する機会も多いのでは。
佐藤 そうですね。全国5カ所の拠点で講習を実施するときはたいていノートパソコンを持参しています。『FX4クラウド』なら外出先からインターネット経由で最新業績を確認でき、重宝しています。
──今後の事業構想をお聞かせください。
佐藤 当面の課題は人材の確保。人員体制を充実させ、お客さまのニーズにさらに応えられる小回りのきく会社にしていきたいです。大きな目標としては売上高10億円を目指しています。沼津営業所を開設し、静岡県内での業務も増えてきました。圏央道の開通によりアクセスが格段に向上したため、将来的に東京都西部にも営業拠点を開設したいと考えています。
すべての株式会社は定款で会計参与を設置する旨を定めることができます。会計参与は主に中小の株式会社の計算関係書類の記載の正確さに対する信頼を高めるための制度です。
会計参与は、取締役や監査役と同様に株式会社の役員ですが、他の役員とは独立した立場を維持しつつ、取締役と共同して計算関係書類を作成します。また、会社とは別にその計算関係書類を5年間備え置いて、会社の株主や債権者の請求に応じて、閲覧や謄本等の交付に対応することが義務づけられています。
- 計算関係書類の作成
- 会計参与報告の作成
- 株主総会などにおける説明
- 計算関係書類の備置き
- 株主・債権者への開示(株主・債権者の求めがあった場合)
- その他
(本誌・小林淳一)
名称 | 株式会社マルシンビルサービス |
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創業 | 1989年4月 |
所在地 | 神奈川県厚木市酒井573-1 |
売上高 | 5億1,000万円 |
社員数 | 64名 |
URL | http://www.marusin-bs.co.jp/ |
顧問税理士 | 代表社員 小形文夫 税理士法人小形会計事務所 神奈川県相模原市中央区横山台2-9-17 TEL:042-755-8466 URL:http://www.tkcnf.com/ogatakaikei/ |