元請けと下請けに関する規制やルールがいくつか変わったと聞きました。概要について教えてください。(金属加工部品)
日本経済を持続的な成長軌道に乗せていくためには、下請けなどの中小企業の取引条件を改善していくことが重要です。このため、政府は、平成27年12月に「下請等中小企業の取引条件改善に関する関係府省等連絡会議」(議長:内閣官房副長官)を設置し、大企業、下請け等の中小企業の双方に対する大規模な実態調査を行いました。
調査結果を踏まえ、「未来への投資を実現する経済対策」(平成28年8月2日閣議決定)において、関連法規の運用を強化することとされ、同年12月14日、公正取引委員会および中小企業庁において次のものが改正されました。
①「下請代金支払遅延等防止法に関する運用基準」(以下「運用基準」)
②「下請中小企業振興法第3条第1項の規定に基づく振興基準」(以下「振興基準」)
③「下請代金の支払手段について」(以下「支払通達」)
まず①の運用基準は、下請代金支払遅延等防止法に関する通達として、公正取引委員会が定めたものです。今般の改正では、不適正な原価低減要請や金型保管コストの押しつけなど、同基準における違反行為事例を追加し、66事例から141事例に増やしました。
②の振興基準は、下請中小企業の振興を図るため、下請け事業者および親事業者のよるべき一般的な基準として下請中小企業振興法第3条の規定に基づき定めているものです。下請法が個別取引に対する規制法規であるのに対し、振興法は支援法であり、望ましい取引慣行を示し、これを産業界に対して指導するための法律といえます。今般の改正では、前文を大きく改正し問題意識を明確にするとともに、原価低減要請、労務費上昇分に対する考慮、型の保管・管理などについて望ましい取引慣行を追記するなど、所要の改正を行いました。
支払通達を50年ぶりに見直し
③の支払通達については、昭和41年の通達「下請代金の支払手形のサイト短縮について」の発出から50年ぶりに見直しを行いました。原材料等の調達などを現金払いで行う一方、製品化・納入後に親事業者からは支払いサイトの長い手形を振り出されると、下請け等中小企業者は資金繰りに苦慮することとなります。
今回の支払通達は、こうした点を踏まえ、下請け代金はできる限り現金で支払うとともに、手形を用いる場合でも支払サイトを将来的に60日以内に短縮するよう努めること等を要請したものです。また、とりわけ、親事業者のうち大企業から率先して、こうした取り組みを進めることを要請しています。
なお、基準・通達の改正に先立って、経済産業省では、対策パッケージとして、平成28年9月15日、「未来志向型の取引慣行に向けて」(世耕プラン)をとりまとめました。世耕プランでは、本来は親事業者が負担すべき費用等を下請け事業者に押しつけることがないよう徹底していくこととしました。
今回の対策を契機として、産業界において公正な取引慣行について改めて考えていただき、これがさらに広く浸透していくことを期待します。