コスモエンジニアリング

新潟市に本社を置くコスモエンジニアリングは「ソフトウエア事業」「建設コンサル事業」などを手がける会社。2004年に会社を設立後、やがてリーマン・ショックによる経営環境の悪化に見舞われるものの、何とかピンチを乗り越えてきた。そんな同社の業績管理をテーマに、菊地徹社長(56)と税務顧問の笹川賢一税理士に話を聞いた。

──新潟市内に会社を設立したのは2004年だったとか。

菊地徹社長

菊地徹社長

菊地 「ソフトウエア事業」と「建設コンサル事業」を手がける会社としてスタートしました。会社を立ち上げる前は、あるソフトウエア開発会社で営業として働いていました。また、そのもう一つ前の仕事は、建設コンサル会社の社員。つまり、過去の経験を生かせるビジネスを自らの会社ではじめることにしたんです。

──ソフトウエア事業ではどんな仕事を請け負っているのですか。

菊地 主に「組み込みソフト」と「一般的な業務用アプリ」の開発を得意としています。自治体、卸・小売業、製造業、運送業など、各種業界における豊富な開発実績があります。
 ちなみにソフト開発の実際の作業は、お客さまのもとに常駐して行うケースがほとんどです。機密性が要求されることもあって、取引先企業さまもそれを望んでいます。

──建設コンサル事業についてはどうでしょうか。

菊地 建設コンサル事業の業務内容は、国や地方公共団体の発注工事における施工管理業務(安全管理、工程管理、品質管理、出来高管理、写真管理)がメインです。これも、施工管理の得意な社員を工事現場などに派遣する形でおこなっています。道路改良工事、橋台・橋脚工事、災害復旧工事などにおける実績があります。

会社存続の危機を業績管理で乗り越える

──TKC会員の笹川(賢一)税理士と顧問契約を結んだきっかけは?

笹川賢一税理士

笹川賢一税理士

菊地 会社設立にあたって、その注意点などを税務のプロにいろいろ聞きたいと思い、近くにあった笹川先生の事務所に電話をしたのがお付き合いのはじまりです。

笹川 菊地社長が持参した事業計画書が実に綿密だったことを覚えています。

──その後、TKCシステムを導入されました。

菊地 会社を立ち上げたばかりの頃は正直、財務・経理の分野は非常に無知でした。しかし、自分なりに独学で勉強し、財務の基本を習得したうえで、笹川先生に相談したところ、TKCの『FX2』を提案されました。

──自計化の効果を挙げるとすれば何でしょう。

菊地 とにかくタイムリーに自社の業績がつかめるようになったことですね。さまざまな経営判断に数字を役立てられるようになりました。

──会社を設立してから成長軌道に乗るまでは、大変でしたか。

菊地 最初の頃は、前職でお世話になっていたお客さまの仕事を主に手がけていました。しかしソフトウエア開発の世界も建設業と同じように、ピラミッド構造で成り立っており、前の会社では2次下請けくらいのポジションで仕事を得ていた取引先でも、下手したら4次、5次下請けで仕事を請け負うというケースもありました。自分自身が取引先に評価されていると思っていたのですが、前にいた会社のバックボーンがあってこその評価だったと初めて気づきました。それでもお客さまの信頼獲得に努めていったところ、次第に良い仕事を回してもらえるようになっていきました。
 しかし、そうやって順調に成長しようとしていた矢先に、経営環境が一変して悪くなってしまったのです。

──何があったのですか。

菊地 2008年秋のリーマン・ショックです。東京とは少しタイムラグがあって、半年くらい後になってから新潟周辺の経営環境が悪化していったのですが、ご多分に漏れず当社も仕事が激減してしまいました。社員のおよそ半数が仕事にあぶれた状態になってしまったのです。

──たいへんな事態ですね。

休日は社員とフットサルを
楽しむことも

菊地 むろん社員をただ遊ばせておくわけにもいかない。何かしら仕事を与えなければならないと考え、これから伸びるであろう介護分野に目を向けました。まず私自身が介護の世界を知らなければならないと思い、ヘルパーの資格を取ってきました。続いて、仕事がないメンバーにも同じように会社負担でヘルパーや福祉用具を取り扱うための資格を取得してもらい、地元の介護施設に派遣するようになりました。これが「福祉事業」をはじめるきっかけです。
 会社存続のピンチともいえるこの時期、『FX2』の存在は非常に大きかった。会社の経営状態がどうなっているかを数字でタイムリーに知ることができたからです。『FX2』を使った業績管理を通じてうまく経営のかじ取りができたおかげもあって、赤字を計上したのはリーマン・ショックに見舞われたわずか1年で済みました。

──その後の経営は……。

菊地 2010年10月に「医療訪問マッサージ事業」を開始しました。福島県に本部を置く「ふれあい心のサービス」のFCに加盟し、「新潟駅南店」を出店しました。寝たきり、歩行困難などで在宅療養されている患者さんに対し、医師の同意にもとづき、医療保険を適用した訪問マッサージを提供しています。
 一方、既存事業については、事業の領域を広げることで売り上げを伸ばしていきました。それまで開発オンリーでしたが、オペレーション、運用・保守、テスター作業などの細かい仕事も積極的に取りにいくようにしたのです。

利益確保のために「労働分配率」に着目

──いま現在、業績管理はどのような形で行っていますか。

菊地 ふだんは社員の稼働状況をもとに、売上高や経費、利益などの数字を手書きで書き込んだ紙ベースの資料を見ています。ただ、笹川先生が月次巡回監査に来られる前日までに、『FX2』から出力した前月の試算表なども見られるようにして、紙ベースの書類にある数字と大きな違いがないかを確認してから、巡回監査にのぞみます。そのうえで笹川先生にいろいろ指導してもらうといった流れですね。

笹川 コスモさんは言ってみれば、従業員さんが貴重な資産のような会社です。だから私が一番気にしているのは、労働分配率(人件費÷限界利益)の推移ですね。製造業と違って多額の機械装置がいるわけではありませんが、そのかわり優秀な人材を集めてくることや、人件費をうまくコントロールしていくことが利益を創出するうえでのカギを握ります。

──『FX2』の画面や帳表では、主にどんなものを見ていますか。

菊地 《変動損益計算書》は必ず見ています。それをもとに売上高の推移のほか、人件費や限界利益(つまり労働分配率)の動きなどを見ていきます。

──今年4月から、また新しい事業をスタートさせるそうですね。

菊地 「+e(プラスイー)ビジネスソリューション事業」と称して、①シニア支援サービスと②M&Aサービスの2つを新たに始めます。
 ①は、企業とシニアの架け橋となるためのマッチングビジネスです。労働力不足などに悩みを持つ企業に、60歳の定年以降もエキスパートとして活躍したいシニアの力を提供していきたいと思っています。
 そして②は、後継者が見つからなかったり、地元ではM&A(合併・買収)の相手先を見つけられずに、このまま廃業するしかないと考えている企業を応援するためのサービスです。新潟に販路を築きたいと考えている東京の企業などを紹介する仕組みを、小規模事業のM&Aを得意とするサクセッションビジネス(本社・東京都)と共同して作ることを予定しています。ちなみに、このサービスにおけるM&Aの成功事例は、地元の経済誌『財界にいがた』に掲載させてもらう話も進めています。関心のある企業さんはぜひお声がけください。

(本誌・吉田茂司)

会社概要
名称 株式会社コスモエンジニアリング
設立 2004年7月
所在地 新潟県新潟市中央区天神2-1-28
売上高 約2億円
社員数 40名(契約社員含む)
URL http://vc-cosmo.co.jp

CONSULTANT´S EYE
時代の流れに乗る経営で夢をどんどん実現
笹川賢一税理士事務所 顧問税理士 笹川賢一
新潟県新潟市中央区堀之内南1丁目15-6 日南ビル3階2
TEL:025-247-2411

 コスモエンジニアリングの菊地社長とは10数年のお付き合いになります。起業する際のお問い合わせの電話をいただいたのがきっかけでした。綿密な計画と強い実行力が持ち味の菊地社長は、途中、リーマンショックでダメージを受けるものの、着実に成長を遂げています。

 少子高齢化などによる経済の停滞は大きな時代の流れです。そのことに悲観したり、逆らったりしてもあまり意味はないでしょう。それだけに、斬新な発想で未来を切り開く菊地社長のエネルギーには驚くばかりです。

 そして、それは綿密な経営数値に裏付けされています。経理業務も担っている菊地社長は、ご自身で財務の基本を勉強し、正確な経理処理をされています。起業してから2度の税務調査がありましたが、軽微な指摘にとどまっています。そして、その正確な経理から得られる『FX2』の《変動損益計算書》は、菊地社長の思い描いている経営がきちんと予定通りになっているかどうかの“コンパス”の役割を果たしているといえるでしょう。時流に乗った大胆な発想、実行力、そしてそれを裏方から支える『FX2』の財務データが菊地社長の夢をどんどんかなえていると思います。

 先が見通しにくい時代になると、「税金が高い、銀行は貸してくれない、景気が悪い」と愚痴をこぼしたくもなります。しかし、菊地社長からはそのような言葉を聞いたことがありません。目標を設定し、「どうしたらその目標を達成できるのだろうか」といつも考えておられます。決算で好成績を出しても、それにおごることなく、頭の中は次の年度の計画、夢でいっぱいのようです。

 その夢を現実化するためには、しっかり自分の立ち位置を確認することも大切なことです。そして、日々の業績管理をしっかりとサポートする『FX2』がその役割をしっかり果たしています。私も微力ながら精いっぱい、お手伝いいたします。

掲載:『戦略経営者』2017年4月号