これからはアルバイト・パートにも賞与を支払う必要があるのでしょうか。同一労働同一賃金のガイドラインについてのポイントを解説してください。(飲食店)
同一労働同一賃金とは、仕事や責任の内容が同一または同等であれば、同じ賃金を支払うという、欧米ではごく当たり前の考え方です。
日本では、年齢や経験を重視する年功賃金や職能給の仕組みが長く定着してきました。正社員とパート・契約社員・派遣など非正規社員との身分・待遇の違いも根強く、同一労働同一賃金の原則はほとんど定着していません。
ただし2007年の改正パート労働法では、正社員と同視すべき有期労働契約のパートについて、賃金等の差別的取り扱いを禁止する「均等待遇」の規定がすでにスタートしています。
2015年4月の改正ではその範囲が拡大され、①職務内容(業務の内容および業務に伴う責任の程度)および②人材活用の仕組み(人事異動等の有無や範囲)が正社員と同じパートは、たとえ有期労働契約であっても差別的取り扱いが禁止されています。
また「均衡待遇の原則」も新たに規定され、正社員とパートとの間の待遇差は、「当該職務の内容および配置の変更の範囲その他の事情」を考慮して不合理なものであってはならないと規定されています。労働契約法にも同様に、全ての有期契約労働者を対象にした均衡待遇の規定が盛り込まれています。
昨年12月に政府が公表した「同一労働同一賃金ガイドライン」案は、簡単にいえばこれまでの均等待遇・均衡待遇の規定を一層強化して、わが国の雇用慣行に配慮しつつ日本流の同一労働同一賃金を実現し、正規・非正規の格差を解消しようというものです。
ガイドライン案は、無期雇用フルタイム勤務のいわゆる正社員と、有期・パートなどの非正規社員との間で待遇差がある場合に、どんな場合は不合理で、どんな場合は問題とならないのかを具体的な例で示しました。
そのポイントを紹介すると、基本給については、支給基準を職業経験や能力、業績・成果、勤続年数の三つに分類し、それぞれ(A)正社員と同一に評価される有期・パートには正社員と同一の支給をし、(B)一定の違いがある場合にはその相違に応じた支給をしなければならないとしています。言い回しが少しわかりにくいですが、それぞれの支給基準について、(A)は正社員と同一の賃金(均等待遇)を、(B)は正社員とバランスのとれた賃金(均衡待遇)を支給せよといっているわけです。
お尋ねの賞与についても、(A)正社員と同一の貢献である有期・パートには同一の支給をし、(B)一定の違いがある場合にはその相違に応じた支給をしなければならない、と同様の趣旨を述べています。ただしまだ案の段階で、ガイドラインに法的拘束力はありません。
もしこの内容が法制化されれば、有期・パートの賃金を決める場合、同じような仕事をしている正社員との賃金格差が広がらないように気をつけるだけでなく、有期・パートにも習熟に応じた一定の昇給を実施し、正社員と同じように貢献度を評価して賞与を支給するなどの配慮が必要になると思われます。
これからは、正社員もパートも、仕事の役割や能力、貢献度をより客観的に評価して、合理的に賃金・賞与を決める仕組みが必要になるのではないでしょうか。