国内で製造される加工食品に原料原産地が義務づけられると聞きました。表示内容はどのように変わりますか。(食品加工業)
生鮮食品は、原産地表示がすべてに義務づけられていますが、加工食品の原材料の原産地(原料原産地)表示は、わずか22食品群・4品目しか義務づけられていません。これは全体の1~2割程度です。
環太平洋経済連携協定(TPP)が実現すると、より多くの安価な輸入食品が市場に出回ることが予想されています。そこで、国産原材料の消費拡大を狙って、容器包装されたすべての加工食品に、原料原産地表示を義務づけようとしています。
現在、原料原産地表示が義務づけられているのは、原材料に占める割合が50%以上のものだけですが、新しいルールでは、重量の一番多い原材料にだけ、表示が義務づけられます。50%未満でも表示しなければならないので、加工食品には、必ず原料原産地が表示されることになります。
例えば、小麦粉「原材料:小麦(豪州産)」、鳥の唐揚げ「原材料:鳥肉(ブラジル産)」という表示になります。総菜の鳥の唐揚げの場合は、鳥肉が重量1位なので表示されますが、鳥の唐揚げ弁当になると、ご飯が重量1位になるので、唐揚げの原料原産地表示の義務はありません。
例外表示も認められています。
一つは可能性表示です。複数の産地を、しょうゆ「大豆(米国又はカナダ又はブラジル)」のように、「又は」で表示する方法です。
二つ目は、大くくり表示です。33カ国以上の外国産地を、ロースハム「豚ロースハム(輸入)」のように、まとめて「輸入」と表示する方法です。
三つ目は、大くくり表示+可能性表示です。3カ国以上の外国産地を輸入とし、国産も使う可能性があれば、小麦粉「小麦(輸入又は国産)」と表示する方法です。
四つ目は、製造地表示です。うどんの場合、本来「原材料:小麦粉(小麦(豪州産))」ですが、小麦粉が加工原材料なので、うどん「原材料:小麦粉(国内製造)」と表示する方法です。
例外表示には、それぞれに「認められる条件」と「誤認防止」の規定があるので、簡単に使えるわけではありません。原材料の産地管理を徹底していないと、偽装表示になることもあるので注意が必要です。
早めの対応が肝要
例外表示は、非常に分かりにくく、消費者からの問い合わせが増える可能性があります。間違いなく製造コストは増えますが、商品価格に上乗せすることは難しい状況です。外国産原材料より国産原材料を使ったほうが売り上げは上がりますが、国産原料に切り替えるのは容易なことではありません。 また、原料原産地表示が義務づけられると、季節や価格変動の影響により原材料の産地が変われば、その都度表示を変更する必要もあります。
法律が施行されるのは、早ければ2017年の4月ごろになります。もちろん猶予期間が設定されるので、すぐに実施する必要はありません。新たな食品表示基準を定めた食品表示法は、2020年3月末で猶予期間が終わり、同年4月から完全実施されます。原料原産地表示が、食品表示法より早く完全実施されることはないでしょう。しかし、完全実施が3年先になるとしても、その間に軽減税率と食品表示法への対応という大きな課題が待ち受けています。早め早めの対策を心がけましょう。